第017話 ネクタイ・太陽

 太陽系脱出速度の計算ができないと、帰宅した途端、娘が助けを求めてきた。普段ろくに話もしないのに、こういうときだけ物理教師の俺を頼る。

 まあいいか。年頃の娘と話せるきっかけになるなら。

 俺はネクタイを緩め、娘の隣に座る。妻の淹れたコーヒーの香りが子供部屋に広がった。

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