第476並行世界 聖女の半分は優しさで出来ています

「なにって、この国の責任者を皆殺しにするのですよ。敵は全て殺すキル・オール・エネミー。それが私のモットーですから」


 聖女はニコリと笑いながら手刀を構える。


「大丈夫、ご安心ください。痛みを感じないようスパッとその首をいただきますから」


 誰であろうと決して苦痛を与えずに殺す。そのあまりの優しさに、後に彼女は〈慈悲の聖女〉と呼ばれる。


「聖女の半分は優しさで出来ています~キル・オール・エネミー~」より

https://kakuyomu.jp/works/16816927859396088892


●慈悲の聖女

 第476並行世界は限定的な並行世界の移動技術を有している。これは聖女召喚と呼ばれる魔法儀式であり、近隣の並行世界から強力な超自然技能を有する女性を強制的に転移させる。

 しかし、ある時期を境にこの聖女召喚は禁忌とされており、また召喚方法も抹消されている。


 原因は慈悲の聖女と呼ばれる女性である。なお、聖女とは呼ばれてはいるが、それは召喚した側が勝手にそう呼んでいるだけであって、彼女自身は特定の宗教を信仰している訳ではない。

 彼女は基本、他人に対してはまさに聖女と呼ばれるほどの優しさを持っている、しかし一度でも自分の敵と判断した相手に対しては容赦なく抹殺する特殊な精神性を持っている。

 

 このため、彼女に不誠実な態度をとったために、彼女を召喚した王族が全員殺害されてしまっている。

 慈悲の聖女は第470並行世界の日本の出身で、この世界には多数の超自然技能保有者が存在していた。

 彼女は〈切断の魔法〉と呼ばれる超自然技能をもちいて、世界の様々な脅威を排除していたが、その精神性故に危険視もされていた。


 ある日、アメリカがうっかり慈悲の聖女へ核ミサイルを発射してしまった事件があった。

 幸いにも慈悲の聖女は〈切断の魔法〉でミサイルの弾頭のみを切断して無力化したので被害は出なかった。

 アメリカも即座に慈悲の聖女に謝罪をしたので、大統領の首が(物理的に)とんだだけで円満に解決した。

 

 その後、国連にて「慈悲の聖女との不可侵条約」が締結される。この条約に批准しない国家は慈悲の聖女に対する消極的敵対国家であり、国際社会から人類存続に対する潜在的な脅威と見なされた。


 そのような事もあって、慈悲の聖女が第476並行世界に召喚された時、もう彼女におびえずに済むと世界中が1週間ほどお祭り騒ぎになった。

 もっとも、数年を経て慈悲の聖女が帰還した際は、世界中が3週間ほど葬式のような空気に包まれてしまうが。

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