第79話 ハーレムパーティ爆誕
貴賓室の空気が二つに分かれていた。
セレアンス公爵の要求を呑んで武器なしで戦う派
ジーク、マリア、サーシャ
セレアンス公爵の要求は断固拒否して必ず勝ちを拾う派
私、グレイ、エルナ、フレスバルド
武器を持ったところで勝てるか分からない強敵。
剣聖のマルスがいくら強くても、剣が無ければただの人だ。
しかしジークが右拳を突き上げるとマルスがセレアンス公爵の安い挑発に乗ってしまったのだ……
ジークと初めて会ったのは3年前のアイクの新入生闘技大会の時だった。
それまでは文でやり取りをしておりジークはなかなか頭も切れて冷静な判断が出来る者だと評価していたのだが……
しかし結果は圧倒的だった。
武器なしで戦う派のジーク、マリア、サーシャですら驚いていた。
彼らはもしかしたら違う結果で勝つと思っていたのだろうか? 剣聖であり武聖でもある。まさかここまでだったとは……私に娘がいないのが悔やまれる。私には1人息子しかいない……貴族で1人しか子供がいない者なんてそうはいない。側室や妾はいても私の方に問題があるのか子供は1人しか生まれなかったのだ。
最初は男爵だった男が今はもう私と同格の伯爵。
そして辺境伯も近いと噂されている……アイクとマルスの活躍を見れば当然だ。
それにジークと妻のマリアのカリスマ性も凄いのが分かる。
マリアなんて30歳を過ぎており、すでに3人の子供と4人目の子供を身籠っているにも関わらず20歳のような容姿をしている。
計画の変更の必要性があるのかもしれない……そう思っていると、フレスバルド公爵がジークに
「是非カレンを側室でもいいからマルス君の妻にしてほしい。もちろんカレンの気持ちを考えてだが……」
そしてサーシャも
「実は娘のミーシャもマルス君に助けられてから4年間ずっとマルス君に思いを寄せておりました。もしもよろしければ是非ミーシャもマルス君の側に置いてもらえませんか?」
ただこうなるとマルスは1人の正妻……これはクラリスそして3人の側室というと伯爵位以上が必要となる。
これはこれで私の計画には都合のよい事なのだが……
☆☆☆
「えええぇぇぇーーー!!!」
俺とクラリスとエリーの驚きの声だ。
まさか俺が4人もの妻を迎えるなんて……
「今回俺は何もしてないよ? ってかいつも俺は何もしてないよ?」
俺はクラリスとエリーに弁解すると、クラリスとエリーは納得がいかないようだが頷いている。
ずっとクラリスとエリーと一緒だから俺が何かを出来るわけが無いのである。
ただエリーがリーガン公爵にこう言った。
「……マルス1人部屋にするとまた増える!……もう増やさないために絶対に寮は一緒じゃなきゃダメ!……」
すると珍しくクラリスまで
「私からもお願いです。リーガン公爵。私たちも余計な争いはしたくありませんので……」
えっ俺を信用してないってこと? ってか別に1人の時に何もしていないんだが……クラリスさーん、エリーさーん。無理やりこじつけてませんか?
「うーん……でも絶対に寮では男女の同棲は認めないって校則に書いてあるのよ」
リーガン公爵が悩んでいるとセレアンス公爵が
「おい、お前たちセレアンス王立学校であればお前たちだけは認めてやろう。今からでもセレアンス王立学校に来なさい!」
本気でセレアンス公爵が勧誘を始めているとエリーが
「……リスター帝国学校がダメなら、マルスとクラリスとそっちに行く……」
珍しくエリーがクラリスも付け加えた。するとクラリスも
「私もリスター帝国学校が駄目なのであれば、そのようにしたいと思いますが……私はクロさん? クロ子さん? に大変なことをしてしまって……」
クラリスとエリーがそう言って俺を見る。まさか裏切らないよねという目だ。
「ぼ、僕もクラリスとエリーがそちらに行くというのであれば……」
この脅しはリーガン公爵にとても効果的だった。
「ぜ、絶対に何とかするから転校だけはダメよ! 分かった?」
「「「はい」」」
俺たちは声を揃えて返事をした。
セレアンス公爵が俺に向かって、
「借りはこれで返したぞ」
セレアンス公爵の言葉にクラリスとエリーが
「「はい」」
とにっこり笑って返事をした。
「それにしてもこれでリスター帝国学校がバルクス王国の物になるのも時間の問題かもしれないぞ? 優秀な者は全てバルクス王国だからな。学校とは国の縮図のようなものだ。リーガン卿よ。そこまでの事を考えていないであろう?」
するとリーガン公爵が俺の方を見て
「そんな事ないですよ。私も考えております。だって私も……」
そういうとクラリスとエリーが俺の股間を手で隠しながらこう言った。
「もう5人目は早すぎます! もう少し待ってください!」
「……マルスは4人までしか愛せない。5人目はダメ!……」
「えと、クラリスさん? 触ってますが……」
俺がクラリスにそう言うと
「ごめん!わざとじゃないの!」
赤面しながら俺に謝ってくるとエリーがすかさず
「……さすが……股間クラッシャー……手が早い……」
更にクラリスは赤面して顔を伏せる。いや可愛いな……
リーガン公爵は諦めたような顔で
「今日はまぁここら辺にしましょうか? セレアンス卿もよろしいでしょうか?」
「まぁそうだな……また後日な……」
そう言って俺たちの新入生闘技大会は幕を閉じた。
そして俺たちはリーガンに戻ると優勝記念パーティを開いた。
明日になれば学校で正式にやるのだが、今日は前夜祭みたいなものだ。
参加者はSクラスメンバーでヨーゼフとヨハン、ドミニクを除く7人とジーク、マリア、リーナ、グレイ、エルナ、サーシャにビートル伯爵、フレスバルド公爵だ。
アイクとリーガン公爵は明日早いらしく顔だけ出して帰っていった。
「リスター帝国学校の優勝を祝して」
「「「「「かんぱーい」」」」」
フレスバルド公爵の掛け声で即席の優勝記念パーティが開催された。
大人たちはマリア以外がお酒を飲んでいる……なんでマリアだけお酒をのまないのであろう……
「お義母様? どこか具合が悪いのですか? お酒は飲まないのですか?」
クラリスがマリアを気遣って聞くと、なんとマリアの4人目妊娠が発表された。
他の大人たちはすでに知っていたらしい。
「ブライアント家は安泰だな」
俺がそう言うとフレスバルド公爵が俺の隣にやってきて
「そうだな。これからもよろしくなマルス君」
そう言いながら俺にお酒を勧めてきた。
この世界では飲酒は何歳からいいのであろうか? ただ相手はリスター連合国の筆頭公爵だ。断るわけにはいかない。
俺は生まれて初めてお酒を飲んだ。当然日本でも1滴もお酒を飲んだことはない。
「あのー、親同士の一方的な婚約は……カレンがかわいそうですので……」
「何を言っているのだマルス君。なんでカレンがバロン君と婚約解消したのか知らないのかね?」
え? バロンがクラリス大好きすぎるからだろ?
「バロン君がクラリス嬢を好きなように、カレンもマルス君が大好きだったのだよ。気づいていなかったのかね?」
「正直気づいていませんでした……」
俺がそう言うとクラリスが
「なんでよ? 見え見えだったじゃない?」
え? そうなの? これでも気を使ってはいるんだけれども前世であまりにも不遇でそう言う事に疎いのよ。
するとカレンが俺の所にやってきて
「そう言う事だから、これからもよろしくね。マルス」
俺のほっぺにチューをしてきた。
フレスバルド公爵が一気に囃し立てると、ミーシャもやってきて反対側にチューしてくれた。
するとジークが
「親の前でハーレムなんて……なんて奴だ……」
と揶揄ってくる。
マリアも、うちの子がごめんなさいと言っておきながら少し誇らしげなのは気のせいだろうか?
しかしながらカレンとミーシャの婚約の話はジークとマリアの反対により取り敢えずお預けとなった。
嬉しい申し出ですが、これ以上は俺の教育に良くないのでと言って断ってくれたのだ。
しかしもしも俺が3人以上の妻を愛せる器量があるときは必ずカレンとミーシャを優先するとの事となった。
バロンとミネルバはいい感じで、2人で話し合っていた。
その様子を見ていると俺のハーレム状態の所に1人の女の子がやってきた。
その子はみんなを押しのけ俺の膝の上にちょこんと乗ると俺の方に向き直って抱きつきながらこう言った。
「マルス兄は、リーナの。誰にも渡さない」
この言葉に4人の構成員は声を失った。
しかしこの前もそうだが、リーナに抱き着かれると腕輪が当たって痛い。
腕輪を見てみると偽装の腕輪だった。
なぜリーナが装備しているのかと思いリーナを鑑定してみると
【名前】リーナ・ブライアント
【称号】-
【身分】人族・ブライアント伯爵家長女
【状態】良好
【年齢】7歳
【レベル】5
【HP】10/10
【MP】52/52
【筋力】6
【敏捷】7
【魔力】12
【器用】12
【耐久】5
【運】20
【特殊能力】水魔法(Lv2/D)
【特殊能力】土魔法(Lv2/D)
【特殊能力】神聖魔法(Lv1/G)
【装備】偽装の腕輪
なんと神聖魔法を覚えていた!
俺は動揺を顔に出さないように努めていたが何人かには顔の動揺がバレたかもしれない。
まぁなんで動揺しているかなんて誰にも分からないだろうからあまり問題はないとは思うけど……
俺は少し風に当たってくると言って外に1人で出るとジークがすぐあとを追ってきた。
「マルス、見たのか?」
「はい。見えました。どうするおつもりですか?」
「うむ。迷っていてな……(リーナが)10歳の時に(マルスは)13歳。2年間はなんとかなるかもしれないが、その後が心配だ……」
「そうですね……アイク兄に預けてみては如何ですか?」
「……あぁ。それが一番なんだろうな……ただアイクはな……いや何でもない……」
どうしたんだろうか? アイクに何か不安でもあるのだろうか?
「マルス。当然誰にも言うなよ。本当に誰にもだぞ!」
凄い念を押してきた。これはアイクにも話すなという事か?
「分かりました。誰にも言わないです」
ジークはパーティに戻っていった。
なんか俺は急にさみしくなってしまった。
俺が1番信頼しているアイクに対してジークが何かを感じていることが……俺はアイクが好きだ。変な意味ではない。俺の自慢の兄なのだ……
少し外でしんみりした後、会場に戻ると俺のパーティのパーティ名をみんなで決めていた。
「剣聖と4人の美女」
「ハーレムパーティ」
「もう女はお断り」
「毎日が修羅場」
「股間クラッシャーズ」
などなど……基本的にハーレム系を全面に押し出すパーティ名だった。
毎日が修羅場ってこれじゃあ神聖魔法使いも来ないじゃないか……股間クラッシャーズは絶対にエリーが考えたんだろうな……
「マルスはなんか案ないの?」
完全に出来上がっているカレンが俺に聞いてくる。
「うーん。3人の時は
「えーどういう意味?」
「俺とクラリスとエリーはそれぞれバルクス王国とザルカム王国、リスター連合国と3つの国の出身で3人だから
「うーん、やっぱり数字を入れるとなると面倒かもね。だって5人目の側室もすぐに出来るでしょ? そしたらまたパーティ名変えなきゃいけないじゃん……」
とミーシャが言うとクラリスとエリーが
「「もう増えません。増やしません。絶対に!」」
スローガンのように言ってきた。
そしてミーシャも婚約者になったつもりでいる……
するとエリーがやはりパーティ名は俺の髪の毛の色である金を入れるべきだと言ってきた。
そしたらクラリスが
「
燃え上がれ俺の
日本から来た転生者に一発でバレるでしょ……
「黄金探検者」
「黄金爆発」
「金爆」
「黄金ハーレム」
「黄金クラッシャーズ」
「金〇クラッシャーズ」
そして最終選考が
「
「
まぁ1人以外みんな
俺が少し迷っているとクラリスが
「やっぱり気になる? 下手すれば
「そうなんだよなぁ。日本人には
「漠然としてるわね……あっ「
「お! いいね! 何か始まるって感じがする!」
女性陣に聞くと意味は分からないけどカッコいいからそれにしようという事で「黎明」に決まった。
俺たちのパーティ名が「黎明」に決まったと同時に今日の優勝記念パーティはお開きとなった。
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