2
僕には、能力が無い。
精は持っているはずなのに、いつまで経っても色がつかない。
精場も同じで、ただ何もない。
集中はできそうだが………
牌が136個。
作るのに10日以上。
ただこの時間は、無駄にはできない。
まずは、勝たなくては。
大きな草原に、一つの灯りが灯される。
そして、二人が異なった丘から降りてくる。
対峙をするかと思いきや、誰がともなく右腕を上げる。
そう、これは挨拶。
お互いの全力を出し、だが殺し合わないという合図。
牌が宙を舞う。
三萬。
「さて君は、私にどんなチカラを見せてくれるのかな?」
麻黄はその左手から牌を相手に向かって投げつける。
四萬。
そしてそれがスィーコスの目の前まできた瞬間。
バァン!!
花火のような爆発が地面で起こった。
そして先程の三萬はというと……
それに代わって麻黄が移動していた。
敵のすぐ近くまで、恐れも感じずに。
初めての戦闘だというのに、彼女はためらいすらも見せない。
それほどまでに、楽しみにしていたのか。
「もう終わり?」
「………」
無言が聞こえたのは、それほど遠くはない燈の下。
特に目立った外傷はなく、目は死んでいる。
「何かの能力かな、ま、いいや」
ジャラ………
今度は六萬、八萬を手にして、走り出す。
そして、六萬をスィーコスの背後に投げ、逃げ道を左右に限定した。
「どうする?」
バァンバァン!!!
明るい光が草原の草草に映し出される。
だが当たり前のように、スィーコスはその場を動かずに立っていた。
「………」
麻黄の口角が上がる。
最初の相手としては不足ない。
ただ争いを求め、彼女は動き出す。
(爆発が効かないなら、ただの目眩しだな)
そんな事を考えていると、
麻黄の目の前に、スィーコスが立っていた。
(まずい………)
「できれば僕も、傷つけたくはない………」
バギィ!!
骨の折れる鈍い音が響く。
血の出所は、右腕。
咄嗟に引っ込めた左腕は無事なまま。
だが問題は、そこだけではなかった。
「90%は右利きと言うし」
「………」
「その綺麗な指が使えなければ、牌は使えない」
まさに窮地。
早すぎる死が、彼女に近づく。
一瞬の油断。
それが連れてきたのは、自身の不利のみ。
「フーー」
相手の能力は多分、ない。
あるのはその強靭な肉体と、底が見えない正義だけだ。
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