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僕には、能力が無い。

精は持っているはずなのに、いつまで経っても色がつかない。

精場も同じで、ただ何もない。

集中はできそうだが………






牌が136個。

作るのに10日以上。

ただこの時間は、無駄にはできない。

まずは、勝たなくては。




大きな草原に、一つの灯りが灯される。

そして、二人が異なった丘から降りてくる。

対峙をするかと思いきや、誰がともなく右腕を上げる。

そう、これは挨拶。

お互いの全力を出し、だが殺し合わないという合図。



牌が宙を舞う。

三萬。



「さて君は、私にどんなチカラを見せてくれるのかな?」



麻黄はその左手から牌を相手に向かって投げつける。

四萬。





そしてそれがスィーコスの目の前まできた瞬間。





バァン!!





花火のような爆発が地面で起こった。

そして先程の三萬はというと……



それに代わって麻黄が移動していた。



敵のすぐ近くまで、恐れも感じずに。

初めての戦闘だというのに、彼女はためらいすらも見せない。

それほどまでに、楽しみにしていたのか。




「もう終わり?」




「………」





無言が聞こえたのは、それほど遠くはない燈の下。

特に目立った外傷はなく、目は死んでいる。



「何かの能力かな、ま、いいや」



ジャラ………

今度は六萬、八萬を手にして、走り出す。

そして、六萬をスィーコスの背後に投げ、逃げ道を左右に限定した。



「どうする?」



バァンバァン!!!



明るい光が草原の草草に映し出される。


だが当たり前のように、スィーコスはその場を動かずに立っていた。



「………」



麻黄の口角が上がる。

最初の相手としては不足ない。

ただ争いを求め、彼女は動き出す。



(爆発が効かないなら、ただの目眩しだな)



そんな事を考えていると、



麻黄の目の前に、スィーコスが立っていた。



(まずい………)



「できれば僕も、傷つけたくはない………」




バギィ!!




骨の折れる鈍い音が響く。

血の出所は、右腕。

咄嗟に引っ込めた左腕は無事なまま。

だが問題は、そこだけではなかった。



「90%は右利きと言うし」



「………」



「その綺麗な指が使えなければ、牌は使えない」



まさに窮地。

早すぎる死が、彼女に近づく。

一瞬の油断。

それが連れてきたのは、自身の不利のみ。




「フーー」



相手の能力は多分、ない。



あるのはその強靭な肉体と、底が見えない正義だけだ。



















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