2

「さあ、始めましょうか」

「...いいわ」

両者が両目を合わす。

が、先ほどと違うのは款にとって見つめている相手が生神であるということ。

目からは微かな光が出ている。

それに反して款は微かにも恐怖を感じていないのか口元には微笑が浮かんでおり、今すぐにでも攻撃に身を転じてしまいそう。



ジリ...


両者が20mほど離れた場所で前身の構えをする。




..........




バゴォン!




刹那、両者足の部分にあった岩が砕けながら争いの開始を合図した。

款が鎌を綺麗に横に振るのに対して生神

はそれを素手で受け止める。

「!」

これに少しは驚いたのか款はすぐに自身の武器を引っ込める。

その後すぐに鎌を持っていた手を離し、右腕を上げ思いっきり振り下ろした。

そのままフィソファの体をも貫通する筈、だった。

あろうことか生神はまた攻撃を素手で受けた。

今度は両手を使ってがっちりホールドしている。

危機を感じて款は腕を引っ込めようとする。

が、離れない。

「クソ」

「いけ、フィソファ」

「ええ」


ドン!


手を握っていた両手のうち右手を離し、、フィソファは右手に溜めていた力を掌底打ちでピンポイントに款の右腹へと当てた。

「グッ...」

外から見ればダメージはないよう。

だが体の中では筋肉という筋肉が痛みで圧縮し、腹からの痛みを最小限に抑えようとしている。

「さあ、お前はここから...」

ここからは本気を出さないといけない、それを両者とも肌で感じる。

「どうしますか?」

「...ふん、良い気にならない方が、身のためよ」


今度の強がりは款の番か。

そう思えた刹那、款の全身から黒いナニカが出てきた。

(彼女の攻撃は今のところ物理のみ、だったら………)

ソレは奥が見えないほど黒く、まるで蒸気であるのように彼女の体から溢れ出てくる。

「ッフーーー」

そして、口からも出した。

まるで熱気を帯びすぎた人間であるかの如くその姿に、生神はすぐ樣精場へとフィソファを呼ぶ。




「おい、あれはやばい」

「わかってます」

早る衝動を抑えながらフィソファは案を練る。

「...今は、できることをしてみたいと思います」

「何ができる?今のお前に」

「何もできないことはわかっています。ですが、まだ相手はいくつかの手を持っているように見えます」

「...それは本当か?」

「ええ、私の心理眼が外れたことがありますか?」

「…」

「それに、わたしにはまだ手がある」

そう言いながらフィソファは生神の後ろ側、黒い部分を指差す。

「……あれは…」

「ええ、もう私は、あのような経験を味わいたくありません」

「…わかった、頼むぞ」





「ああ」




無理にでもアレを倒すしかない。


私は、フィソファなのだから。












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