女神様。どうか俺に幸運を・・・

琥珀ミライ

第1話 人生運が全て!

 人生とは『運』だ――

 

 この世の事はほぼ全て運で決まる。どれだけ否定しようとこの事実に揺るぎはない。


 ところで何故俺は冒頭から、こんな皆が辟易するような理論を呟いているかというと、そこには理由があるからである。


 これは自慢に出来る事ではないが、俺は自他ともに認める『不幸』な男なのである。


 俺が生まれた日は13日の金曜日という不吉な日。


 外に出れば、鳥にフンを落とされる。


 食事に行けば、3回に1回は注文を間違えられるかオーダーが通ってない。


 行列に並べば、俺の前で売り切れる(何故か俺の後ろには並んでいない)。


 喧嘩の仲裁に入れば、何故か両者のパンチが俺に間違って入る。


 学校のめんどくさい委員を決める抽選では見事当選。


 腹痛でトイレに駆け込めば、大抵は満室。


 おみくじを引けば大半は凶(運が良ければたまに末吉あるよ)。


 など……挙げればきりがない。



 何? それでもこんな愚痴みたいなものを聞きたくない? そうだろう。君は正しい。だが……今日だけは許してもらえないだろうか? 何故かって? 


 何故なら、今日俺はこの不運に振り回された十七年という短くもなければ、長くもない人生に幕を閉じようとしているからだ。




「ああっ、可哀想。事故だって?」

「ええ。看板が落ちて、そのまま直撃ですって」

「まあ! 危ないわ~。他に被害は出なかったの?」

「それが、ちょうどその時、ここにはこの子しか居なかったらしいの」

「あら~。この子には可哀想だけど、それが不幸中の幸いよねー」

「はーい! 皆さん危険ですから下がってくださーい!」


 大勢の野次馬の話声と、その群衆を遠ざけようとする警察の声が微かに耳に入る。当の俺は頭から大量の血を流し、意識が途切れかけていた。



 『ああ、なんて俺は不幸なんだろう』と自分の不運を呪いつつ、俺はこの理不尽な人生に終止符が打てると少し安心しながら目をそっと閉じた。

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