EP7 椿の告白
午後2時ごろ、俺と椿さんはコンビニでたくさん買ったおにぎりやサンドウィッチ、ジュースなどを食べている。椿さんはとてもよく食べる。コンビニに行った時からはしゃいでたからきっと食べるのが大好きなんだろうな。
「このおにぎり美味しい!何これ…梅さくら?美味しすぎるよこれ。わたしの口の中で大革命起こしてるわ。」
「大袈裟すぎるでしょ。期間限定ってなってるけど、珍しい具でもないんだから。」
そういうと椿さんは目を見開いて「そうなの!?」とグイッと詰め寄ってきた。
「はい。毎年この3、4月くらいに期間限定で販売されてるおにぎりですけど、梅と桜デンプンの丁度いいマッチで春といえばのおにぎりですよ。逆にこれを知らないって相当時代遅れですよ?椿さん流行に乗ってそうなのに意外です。」
椿さんは感心して聞いて少し不思議そうにした。
「そうなんだ。ていうか走馬、わたしそんなイケイケ風に見えてたの?」
「え…だってその黄緑のニットって最近着てる人多いし、なんな髪型もウェーブかかってて、毛先にかけて茶色くなってってるからてっきりオシャレや流行の最先端進む系の女性かと思ってましたけど。」
うんうんと頷いているが、表情はなんだか微妙に見える。
「そっか〜、走馬にはわたしはそんなふうに見えてたか〜」
ため息を吐き、ニコッと口角を上げた椿さんは「わたしはそんな人間じゃないよ」と言う。
俺は『まさか〜嘘でしょ』とでも言いたかった。だけど、朝の椿さんの話を思い出して俺は言葉をしまい、「そうなんですか」とだけ言った。
「うん。この服とか髪は全部、友達から椿っぽいよ。って感じで選んでもらったわたしじゃない格好だから。」
椿さんはニコニコしながら言ってるけど、すごく心の内がズキズキするセリフだ。
「じゃあ、どうしてお友達にコーディネートなんて…嫌なら自分で選べばいいのに。」
椿さんはその言葉に何を感じたのか、目を細めて斜め下に目線をやった。
「それはごもっともなんだけどね。わたし今の流行とか全然わからないんだ。だから外を歩くときに変な服装してたら嫌だから、友達に頼んだの。」
俺よりも流行に疎い。まさか、そんなことないだろ。だって椿さんは輝いている。俺なんかよりもずっと、ずっと。なのになんで自分を偽って周りに委ねているんだよ。
「なんで…だよ」
「え。」俺はうっかり本音を吐いてしまった。するとそれを聞いた椿さんは、一瞬悲しげな表情を見せ、また笑う。そして
「あ〜やめだやめだ!まわりくどいね。正直に告白するよ。わたし、つい先日まで大病で入院してたんだ。だから外のことなーんにも知らないんだ。」
突然な告白に俺は唖然とした。そしてなんと声を掛ければいいかわからなかった。そんな俺に椿さんは辛くにこやかな声で追い討ちをかけた。
「わたし、あと一年も生きれないんだ。」
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