22話 ソロ攻略終了後

「にしても、なんでこんな遅くなったんだ?」

「え?なんですか?」

「ん?いや、最終層まで行けたんなら、さくらのステータスやスキル加味してもサイクロプスの四鬼くらいなら、多少手こずるとしてもそこまで時間はかからなかったんじゃないか、てな」


実際、今回の【異常】がどういった種類のものなのか、まだ聞けてないし。普通にモンスター倒して、ドアが開かなくなったとかのバグだったのかよく分かんねえんだよな。てか、ダンジョンから出て、すぐに飯屋に直行して今に至るし。なんやかんやで、聞きそびれてたから知りたいんだよなぁ。


「あーー、なるほど。いやぁ、それがですねぇ、なんか竜鬼が出現したんですよねぇ。ほんと、死ぬかと思いましたよぉ師匠」

「へぇ〜……、竜鬼ねぇ。そりゃ、時間あれだけ掛かるわ」

「いやぁ、わたしもなんで生きてんのか、て感じですよ〜。あ、おかわりいいですか?」

「おう、いいぞぉ〜」

「わ〜い」


ん……?


「はぁあぁぁぁぁ!?竜鬼ドラグ・オーガァァァ!?」

「うわあっ!?て、あ。あぁぁあ……。私の照り焼きチキンが……」


いや、確かに丸々落としちゃったことは勿体ないけども!いや、そこへの絶望じゃなくてですね!?


「え?マジで言ってる!?さくら、おま、竜鬼相手に生き残ったんか!?」

「あはは……。はい。その後に獲得したスキルからしてHP1割切ってたぽいですけど、なんとか……」

「そいつは、またぁ……。にしても、まさか竜鬼が出てきたとは。うーーーーむ」

「どうしたんです?」

「いやな、そんな並外れて強力なボス個体が出てきたことが【異常】なのか、どうか少し考えていてな」

「え……?ダンジョンの【異常】じゃない可能性もあるんですか!?」

「あぁ、そうなんだよな」


【異常】、それは簡単に言っちまえば、ゲームのバグ。ダンジョンが引き起こす未知を纏めて総称するものだ。例えば、1個体の異常な数の増加やダンジョンの進化といったものが当てはまる。また、規則性とは度外視な部分で発生する、イレギュラー。

逆に行ってしまえば、そこに規則性やルール等がある限り、それはあくまでもダンジョンという枠組みの中で発生する正常な反応のひとつとなる。


「───よし。ダンジョンにソロで潜り初めてからのことを聞いてもいいか?」

「ふぁい。いいれふよ。ばくっ」

「うん。少し食べるのやめよ?一応、真面目っぽい雰囲気作ろうとしてるんだけど?」

「あー、すみません。久しぶりのご飯でして……。もうちょい、ばくっ、したらっ、ぱくり、止め、るんで。ひょっとまっへくれへいいれひょうふぁ?」

「あ、はい」


うちの弟子、さっきからずっと食べてるよ……。最初は、時間もかなり経ってるし食料も3日分しか上げてなかったから仕方ないよね、て思ってたけどさ。それに、お腹の音を盛大に鳴らした弟子のために、迷惑料と祝初攻略のお祝いで、なんでも奢るとは言ったよ……?


「でもね、流石にこれは予想外なんですが……」

「……?なんれひょーふぁ?」

「いんや、好きにお食べ……」

「ごくっ。はいっ!あーーむっ。ん〜〜〜っ」


消える、消える。そして、積まれる積まれる山のようなお皿の数々。お店の人も、もう半泣きじゃん。なんだかなぁ……。まあ、元気な姿と考えれば、良いのかな。


「───────ふぅ。あ、すみません師匠。お待たせしました!」

「いや、待ってはないよ」

「……?そうですか?えーと、何を話すんでしたっけ?」

「ソロ攻略の話」

「あぁ!そうでしたね!分かりました!じゃあ、お話していきますね〜」


────────────────────

□香和さくら

「まさか、あの竜鬼がダンジョンの【異常】じゃなくて、ユニークボスと呼ばれるものだったとは…」


どうやら、わたしがボス階層にたどり着くまでにHPを1度も削られなかったことが条件だったとはねぇ。まあ、それも恐らく、て話だったけど。


特殊個体ユニーク・モンスター】─

ダンジョン内で特殊な条件の達成によって現れるモンスターの総称。例えば、今回みたいにプレイヤー側が条件を満たしたことで発生したのが竜鬼。他にも、【異常】と組み合わさることで発生しやすくなる、通常より遥かに強い個体。


「まあ、【異常】じゃないなら【特殊個体】の1つと言われれば、すごく納得できますよねぇ。にしても修行初日あの日以降ずっとダンジョンの中にいましたから、早く家に帰ってゆっくり寝たいです」


流石に5日(1部、死闘)のダンジョン攻略は相当きつかったです。さっき、たくさんご飯食べたのでお腹は満たされたのですが、そうなると急にくるのが眠気でして……


「ふわぁぁあぁ…………。」


「Lv.40かぁ〜。えへへ。スキルや称号も手に入ったし」


あの後、師匠からはめちゃくそ謝られましたし、ほんとはめちゃくちゃ文句を言ってやろうと思っていたのですが。なんというか、嬉しさの方が勝って、むしろお礼を言っちゃいましたねぇ。


「んんーー。なんか忘れてるような気がするけど。ま、いっかぁ。今日はこのままお布団ダイブなんだよぉ〜……」


現在時刻、午後の15:00。ダンジョンの扉を開いたら師匠が居て、びっくりしましたよね。その後、師匠が泣いていたのは驚きましたが。まったく、そんなに心配したのならこんな事はもうしないでもらいたいですよねっ!まあ、それは置いといて。その後、お互い疲れているのもあってそのまま野宿して、さっきまで朝兼昼ご飯を食べて、今自宅です。


「はぁあ、なんというかすごくほっとしますねぇ……。あ……、だめ、だ…………。きゅうなねむけg......Zzz」


────────────────────

□???

「さくらっち……。あの後からずっと連絡も取れてないし……。あの野郎、もしさくらっちになんかあってみろよォ……、絶対に許してやらねぇんだからなぁ」

────────────────────


□霧宮朧

まさか、ユニークモンスター。しかもその中でも出現条件が特殊なユニークボスに勝っちまうとは……。


「こりゃ、思った以上に掘り出し物だったか……?」

「おーにーいーさーまーー?」

「げっ」

「げっとは何ですか!?それより、お兄様!今の!その!やさしーーい笑みはなんっですか!はーーーーー!そんなにも、あの女が気に入ったんですかっ!ぺっ」


妹が、やさぐれてる件。草生える。


「やさぐれ雪月ゆづきも世界一可愛いね。流石、俺の妹」

「じとぉ…………」

「口でじとぉて言う人なかなか居ないよな。」

「はぁ。まあ、いいですよ。今回は、そのお言葉に乗せられてあげます♪」

「いやあ、我が妹ながらチョロかわだねぇ」


ふぅ……。何とか乗りきったぜ。流石に、これから2、3時間問い詰められるのはめんどくくさいしなぁ


「で?お兄様?そこまで、上機嫌てことはそのお弟子さんのさくらさん?でしたっけ?そんなに凄い人なんでしたか?」

「あーー、そうだな。凄かったよ。この学園の奴らは勿体ないことをしたもんだと思ったな。」

「へ〜〜、そうなんですか。ふーーーーん」

「ん??どーした?」

「いえいえ、なーーーんにも。ありません」


うーーむ。この反応の時は、何かしら隠してる時なんだよな。まあ、だからといって聞き出せるのかと聞かれたら否である!と答えるが。


「んーー。よし!」

「あの……。お兄様」

「ほいほい、どした〜?」

「その泥棒猫……んんっ。さくらさんの事、これからどうするつもりですか?」

「…………?なんでそんな事気になるんだ?てか、地味に誤魔化せてないぞ?」

「そこはいいですからっ!あと、単純に初の修行でしたし、これからどうするのかなぁとお兄様の行動が気になっただけです!」


んーーー、それねぇ。ほんと、どうしよっかなぁ。正直、ダンジョンに突っ込むのが手っ取り早いんだが今回みたいな事があるとなぁ。


「あーーー、実は結構悩んでるんだよな。ダンジョンに突っ込んでひたすらモンスターと戦わせるか、他の方法にするべきかガチめに悩んでる」

「ふむ……、なるほどなるほど。それなら、1つ!よろしいでしょうか!?」

「おう、なんだ?」

「その、さくらさんという方を少しばかり私に預けて貰えませんでしょうか!?」


あーーーー、なるほど。なるほどなるほど。




「……え?拷問しない?」

「しませんけどっ!?」


あ、良かった。うちの妹、時たま盛大に空回りするらねぇ。少し怖かったのだよ。んーー。結構あり、か……?


「いずれは対人訓練とかも考えていたし……。そもそもの話、俺の弟子になるなら雪月と会わせといた方がいいかもな」

「てことは……?」

「ん。いいぞ〜。まあ、預けるて言っても別にそんな酷いことする訳じゃないんだろ?多少の訓練とか付けるくらい?」

「……………………ま、まぁ?そんなところです、よ?」


不安だなぁ…………

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