第20話 死闘
「さて……、どうしましょう」
結局、3日目に突入してしまいました。しかも、食べ物全部無くなっちゃいましたし…。はぁ……、まだ2階層も残っているのに。
「くぅ……」
うっ。少しお腹が空いてきました。うぅ、これはなんとしてでも早く終わらせて、すぐに帰らないと。
じゃないと、じゃないと……
「わたし、モンスターより先に空腹で死にますぅぅぅうぅうぅ」
うぉおおぉお。だいじょうぶ!広さは変わりませんし、
──3時間後
「ぜんっぜんっ見つかりませーーーん……。 ぐぎゅるるるぅ……」
ううっ。お腹もぺこぺこですし。探索してから早3時間。曲がり角を曲がって行き止まりまで歩いたり、モンスターから隠れたり、逃げたりして。なんで、一向に階段が現れないんでしょうか?そろそろ、現れてくれてもいい頃だと思うのですが。
「いえっ!だいじょうぶ、だいじょーぶ!もう探索してない場所もほとんど無いですし!逆に、あと少しで10階層まで行けるんです。元気だしていきましょーっ」
心が折れたら一気に空腹が襲ってきますしね。それにさっき道を曲がってから行き止まりに付いてませんし、もしかしたらこの先に階段があるのでは……?
「あっ!やっぱり!!階段です〜」
へへ。これでついに!ついに!このダンジョンの最終層まで行けますよ〜。基本的に、ダンジョンといえば最終層はボス部屋だけですしね!
「まあっ?わたしに攻撃は通りませんからねっ!また耐えて耐えて耐え続けて、どっかーーんっとやって終わりでしょうっ!」
ふんふんふふーーん。かつて、ここまで気持ちが軽くダンジョンに居たことはありません!さあっ!往かん!ボス討伐へ〜っ!
───10階層【怪物の祭祀】ボス部屋前
「ここまで、長かったですね。最初はどうなる事かと思いましたけど、ここまで来れました。まあ、それはそれとして後でぜっっったいに師匠には文句を言わせてもらいますが。でも、こんなわたしがたったの2日でLv.29までになれましたし。ただ、ここまで来たら絶対にボスを倒して帰ります。」
目の前には、天井にまで届くような巨大な扉。左右の松明は煌々と炎が燃えていて、こう強敵に挑むぞ!て雰囲気がビシビシあります。この扉を開いて中に入ったら、わたしが死ぬかボスを倒す以外には開きません。つまり、逃げ道は無くなる。
「ふぅ……。いきましょう…」
ズズズ……っと巨大な扉が閉まる。ぼっ、ぼっ、ぼっ、ぼっ、と壁に松明の灯がともる。
「GYAOOOOOON!!!!!!!」
「くぅっ……」
中心から凄まじい咆哮により、髪が乱れます。さぁ、ボス攻略で…す……──
「…………え…!?」
おかしい。おかしいですっ!このダンジョン【怪物の祭祀】のボスは、
「どうして…っ!どうして!竜鬼がいるっ!!!」
「はっ!ま、まずいっ!」
「GURUOOOOOOッッッッ」
「がっ、はっ……」ズガァンッ
「ごほっ……」う、うそ、でしょ……?ぜんぜん、見えなかった。そ、それに、今まで1度も削れてこなかった私のHPが今ので1割も削られたッ!
「どうしてっ!どうしてぇえええぇえっ!死ねない死ねない死ねない死ねない。死にたくないっ!こんなとこで、タコ殴りで殺されるっ!?ぜっっったいに無理ですっ!」
考えて。だいじょうぶ。削られはしたけど、まだ1割だよ。落ち着いて。
「GIAGIAGIAGIA」
「ふっ。ふっ。ふっ。ふぅ〜〜」
笑ってる。ははっ。完全に舐められてますね。それだけの実力差があるてことです。まずは、まずは一発!ダメージが防御力を貫通したということは、それだけの相当なダメージが溜まってるはずです。舐め腐ってゆっくり歩いてきてます。これなら当てられる。
「GURuuu...」
(わたしが攻撃出来る範囲まであと3歩)
「GUGYA」
(あと2歩)
「GIGIAaa」
「いまぁあぁあっっっ!いっけぇええええ!」
全力で、あ、た、れぇえええぇええっ!
ズダァァアンッ
「GUOOooooaAa」
決まった!!よしっ!よしっ!どうだっ!?結構ダメージ入っているで、しょ……─
「う、うそです、よね……?ほぼの、ノーダメージなんて」
「GURUuuu....」
少し痣のようなものもありましたけど、それもすぐに治ってしまいました。しかも、今ので完全にわたしのことを警戒していますぅ。まずい、まずいです。今まで、時には吹き飛ばしたり消し飛ばりしてて、自惚れていました。
「GYAOOOOOON......!!!!!!!」
「うそ、ですよね…?」
竜鬼が青白いオーラをゆらめかせ、一歩一歩と進んできます。地面にヒビが入り、ズドンッズドンッと歩みが進む度に小規模な地揺れが起こっています。
「RUOOO...ッッッッッッッッッ」
「ガハぁっ……!!!」
そこからは、ただただ一方的に殴られているだけでした。今まで、1度も削れてこなかったHPはどんどん削られて、あと2、3撃も貰ってしまえば、わたしの命はなくなるでしょう。
「GRAGRA」
「…………っ。ぐ。ふ…………」
あと、2撃。少しだけ、いい夢見れたか、な。こんなわたしでも、すんごい師匠ができて。あれだけ上がらなかったレベルも、ここ2日でびっくりするくらい上がったっけ……?
「ふふっ。うれし、かったなぁ。こん、なわた、しなんかを、で、しにしてくれて……。ごめんね、ししょう。ごめんなさ、い。ごめんなさい……」
涙が止まりません。痛みからじゃない。モンスターに弄ばれる自分が憎い。こんなにも私を強くしてくれた師匠に恩返しをしたかった。強くなったと自惚れてた自分が恥ずかしい。この程度、ようやくみんなの背中に手が届くかどうかなのに。そうだ。りんちゃんにも強くなったよ、て伝えたかったなぁ。あぁ
、悔しい悔しい。狂おしいっ。死にたくないよ。生きたいよっ!
「わたしは、まだっ。まだっ、ししょう、にも!りんちゃんにも!かんしゃ、をつたえられて、ないっっ!」
「guruoo...」
HPはあと、2割程度。ぎりぎり、2撃耐えられるかどうか。相手はわたしを舐め腐って、身体強化しかしていないし、他のスキルも何も使ってこない。わたしの
「どうする。どうする。どうする。どうす、る。…………あっ。あった。」
アバターのオールセット。師匠も特にセットしてなかったし、オールセットしなくても
「問題は、30秒ほど時間を要することですが。まあ、アレだけ舐められてれば問題ないですかね」
竜鬼は弱者をいたぶることに愉悦を持っているみたいで、嘲笑を浮かべながら大層ゆっくりとこちらに歩いてきますしね。
「ならば、往きましょう。これが、最後の決戦です。avatar allset──【剛体の戦乙女】桜」
金色の髪は、桜色の髪に。そして、肩までだった髪の長さは腰まで伸び、背中には職業【戦乙女】を象徴する純白の二対の翼。両の手には肘まで隠せるガントレットを。背も少し伸びたわたしは、まるで別人のように映るでしょう。
「GIAッ!?gururu...」
「警戒しても無駄ですよ。ここから先、あなたの攻撃が簡単に通るとは思わないことですっ」
「GYA....GYAGYAGYAッッッ!ガァァァァッッッッ!!!!!!!!!」
竜鬼は、どうやら一丁前に楯突こうとしてるわたしが気に食わないのでしょう。怒気が込められた咆哮と共に、わたしに突っ込んできました。もちろん、わたしにその姿を目で追えることはできません。だけど、
ズドォオオオンッ
「Gua.....?????」
「もう、貴方の攻撃で倒れることはありませんっ!」
まあ、正確には今もHPがほんのちょっと削られましたけど、さっきに比べれば月とすっぽん、ゴーストに物理攻撃です!ですが、私のHPも心もとない。
「gurualalaaaッッッッ!!!!!」
「いきますよ〜っ!ここからは反撃ですっ!スキル!【戦禍の盾】!」
戦禍の盾でのダメージの請負。そして、このダメージもちゃんとわたしの中に蓄積されていきますっ!
「GUGAAAAAA!!!!!」
「…………っ!あつ、い。ぐ……、ダメージはない、けどっ」
まさか、ここで【
「戦禍の盾が、きれるほうが早いっ!」
「ぐ、ぁぁぁあぁあぁぁぁあぁあぁ」
(HPが、また一気に消えていく。このまま、じゃ、わた、し……)
「く……。はっ……。はっ……。はっ……」
あ、あぶなかった。でも、もう、HPが残りわずか。すこし、でも、かすった、だけでも、死んでしま、う。でも、まだっ!
「スキルッッッッ!【
もやせっ!もやせっ!燃やせっ!この、命を!この心を!わたしの全てをここに!!!
「RUOOOOOOOOooooooooooooooo」
「はぁあぁぁぁあぁあぁあああぁぁぁぁ」
色が消える。ただ目の前の1匹の敵を殺す獣となる。魂と心を燃やす。
「 」
音が消える。この1分。わたしの全てで、こいつを倒しますっ!だから、だからっ!どうか、倒れてっ!殴られてもダメージは通らなくなった。殴ったら竜鬼に確かにダメージを与えられた。だけど、それもちょっとずつ回復してる。
わたしは生きたい。感謝を伝えたい。まだ、わたしにずっと親友でいてくれた、あの優しい笑みを見れていない。まだ、わたしを助けてくれた師匠の、世界1位のあの人の弟子でいたい。もう、決して、わたしは諦めないっっ!
「いあぁあぁあぁあぁあぁあぁっっっっ!」
「GOAAAaaaaAaaaaaa...........!!!!!!!!!」
勝つ!勝つ!勝つ!勝つ!!!!!
「はぁっ、はあっ、はぁっ……。がはっ。」
1分経過。
「...........gu...........gyoo...」
「うそ、です、よね……?」
たち、あがる。まだ、立ち上がる。こちらに、むかってくる。さいごの、一撃を当てようと。
「……まけ、ないっ…。わたし、だって。う、おぉおおっっ!!!」
お互い、こんなになっても。きっと、わたしの拳は当たらない。わたしと竜鬼の素早さにはあまりにも大きな差がある。だから、わたしは賭けるしかない。竜鬼がまっすぐくることを。
だから、わたしは、拳を前に突き出す。
ドガァァァアアンッッ
最初、それがなんの音が分からなかった。
その音と一緒に、わたしは後方に飛び壁に打ち付けられた。薄れゆく意識で、竜鬼が消え去ったように見えた。
でも、げんかいだ。あぁ、どうなったのだろうか。わたしは、死んでしまうのか。アバターが解ける。
そこで、意識が途切れた。
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