リフレクト・リメンバー

小雨

リフレクト・リフレイン

 いつからだろうか


 反射する自分の事が嫌いになったのは




 小さい頃、母の手鏡を覗き込んだ時?


 初めてコンタクトを入れた時?


 初めての彼女とのデートで観覧車の中から夜景を見下ろした時?


 一夜の過ちを犯した時のホテルの洗面台で自分の顔を洗った時?


 いや、最初からだ


 最初から自分の事が嫌いだった




 満月の夜、月明かりが花瓶の中のナナカマドを照らした


 病院の一室


 隣で眠る君が目を覚まさなくなった時




 君の声も、君の匂いも、君の視線も、君の想いも、君の温もりだって、


 何度も何度も何度も、頭の中で繰り返し思い出す・・・




 君を蝕んだ病は、僕にはうつってくれなかったよ




 小さく冷えていく君の手、


 強く握ろうが、二度と握り返すことのない君の手


 ねぇ、目を開けてほしい


 たった、一度だけでいい


 なにに反射しても好きになれなかった自分の事も


 君の瞳に映った自分なら好きになることが出来たんだ


 君の瞳に映った僕なら




 君の瞳に映る自分を何度も繰り返し思い出す


 君が愛してくれた僕の事を見失わないように


 何度だって繰り返す




 僕の瞳に映った君の笑顔




 (終)

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