ココア

朝起きると母が


「まだ時間早いし、ココアでも飲む?」


と言ってくれたので、


「うん、飲む」


と答えた。


その日はとても暑く、とてもゆっくりした朝を過ごしていた。


何故かって?

夏休みだったから。


私はココアが大好きなので、母が用意してくれているココアを楽しみにしながら、ダラダラと横になっていた。


「ほい、出来たよ〜」


ココアとは言っても、カップに粉を入れ、お湯を注ぐだけのもの。

飲みたければ自分で作りもするが、なにより面倒だった。


出されたものを見ると、そこには見慣れない白い物体があった。


「そろそろ暑いから、フロートにしてみました!」


母の言葉に一瞬硬直し、


「いや、余計なことすんなよ。もうそれいらない」


そう言い、自分で作り直して飲んだ。


私が「いらない」と言ったココアは、その後母が責任を持って飲んでいた。


目立った"反抗期"はなかったが、そのことを思い出す度に、なんとも言えない苦しさに苛まれる。

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