なきにおもへば

あれは星が綺麗に見える夜でした。

私以外の誰も居ない空間に、小さな黒い影が一つ。


私はがらにもなく「ちっちっちっ…」と、その影を呼ぶように舌を鳴らした。


やはり人には慣れていないのか、すぐにどこかへ行こうとするその影を、私は追いかけた。


ただの好奇心でした。


普段は使わないような細道を追いかけ、こんな時間には絶対に通らない橋を渡り、その影と旅をした。


どうにも止まる気配のない影。

しかし私は諦めない。


そしてついにその時がきた。


私は勝ち誇ったようにゆっくりと近付き、その傍らに腰を下ろす。


見上げると、なんだか空に近付いたように思えた。

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