第16.5話

「……リーチェス、死んだかしら?」

「いや、あれくらいじゃ死なないと思う」

「取り敢えず、早くセラフィラントを抜けて国境へ行こう。この国にいるよりはあいつから逃げおおせる」


「そうね……もうお金も殆どないわ」

「リーチェスの物も全部売りつくしちまったから、本当にギリギリだぜ」

「冬になる前に、ガストレーゼ山脈を越えよう。そうすれば、すぐには追ってこられないから」


(一日も早くこの国を出なくちゃな……本当に、なんてツいてないんだ!)



「それで、一緒に旅してきた仲閒に刺されて、荷物も奪われた……と」

「ああ」

「そうか。でもそいつらも冒険者なんだろう? 通称だと……探せないな」

「ヘストレスティアに向かったはずなんだ。あっちの国にも手配をかけてもらえるんだろ?」

「国交はある。が、そういうことはできない。皇国民ではないし。犯人達も……君も」


「くっそ!」

「それじゃあ、お大事に」




「あいつですよね、触書が回っていたのは」

「そのようだ。仲閒という三人に裏切られたにしては、傷が浅い」

「おそらくその三人に襲われたというより、逃げられた……って事ではないかと」

「どうしてだね?」


「奴の隣の部屋に、こんな燃え残りがありました」

「……なるほど、隷属契約書か」

「これで脅していて、反撃にあった、というのが真相ではないかと」

「うむ、だが、奴の名前部分が……燃えてしまってて読めないな」

「魔力も通っていませんし、証拠にはなりません」


「捕縛は無理か。ならば一日も早く出ていってもらわねばならんな」

「……幾ばくかの金を、盗みやすい位置に置いておきます」

「そうだな。自分から犯罪を犯して出ていってくれれば、捕らえて投獄する事もできるからな」

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