9. 昔の道を辿ってみました
時たま、
傘地蔵様のように、フィオを助けてくれますように。
ピラミッドの周りの雑草まできちんと整えては、二人で真剣に手を合わせるけど……空気感も天候も、さして変化はなし。
だんだんと光るタイルが減って、普通の砂利道と化してきた。フィオのお母さんによると、これも古代の人間が作った道。でも光る道よりは後代なんだって。つまり現代の人間が今でも利用している可能性がずっと高くなる場所。
≪ねぇ、芽芽ちゃん、ここ、大丈夫?≫
≪
いくら母竜に注意されたからって、私に振るな! しかも君ね、
結界の
ついつい下を向いてしまう。深刻な顔したって、妙案は生まれないのに。
――背筋を伸ばして、口角は上げる! 景気づけに
余韻に耳を澄ませていると、コンコンコンと
≪この子も捕まっちゃったのかな≫
≪つか、
回収しろよ、人間。
「わわっ!?」
汚れていない側面を杖で突いたら、びよーんびよーんと伸縮する。なんだこれ、透明ゴム? 力加減を間違えて、強く押したらずぼっと中まで食い込んだ! しかも杖をこっちに戻したら、すっかり元通り。穴ひとつ残っていない。
≪何この素材?≫
≪さあ……人間の作った何か? それより芽芽ちゃん、この子も助けてあげようよ≫
うーん。あんまり助けまくると、私たちまで身バレしちゃうんだけどなぁ。純粋
虫篭の位置は、まっすぐ立った私の目線あたり。地面に落ちている細い枝を一本、ゴム壁に突き刺してフィオに握っててもらう。もう二本入れて、それぞれ三方へ引っ張ったら……お、穴が広がるぞ。蝶さん、こっから出ておいでませ。
しばらく念じていたら、手の平大のアゲハが飛び出てきた。カラスアゲハのビロードの羽に、濃い紫の光沢。ひらりはらりと私たちの周りを漂う様は天女みたい。
≪わぁ、きれーい!≫
脳裏に響くフィオの声が元気になった。
フィオの力で倒木を地面まで完全に降ろしてもらって、虫篭はその衝撃のせいで亀裂が入って一部が欠けましたって感じに転がしておく。雨宿りで虫や小動物が入りこんだとしても、出たい時に出れる仕様である。
にしても、この二種類の透明素材。文明度は高そうだ。それとも魔法で、ぽんって作れちゃうのかな。どこかに電気ショックや赤外線センサー付きの罠とか設置されていたら、どうしよう。杖でコンコン確認するだけでは対処できない。
~~~っ、しっかりしろ、魔王メメ! フィオに心配させちゃう。もっと別のことを考えるんだ!
≪知ってる?
≪じゃあきっと、どっちに行ったらいいのか教えてくれるね!≫
死者の魂が戻ってきたという別解釈は黙っておこう。
紫の蝶が先導役とばかりに、砂利道を舞うように進んでいく。視界も開けてきたので、お互いに人間の気配には警戒しつつ、後を付いていくことにした。
光るタイルが丁寧に敷き詰められた道と比較すると、両端に
どの樹も、なんとなく薄っすら赤黄青紫の月の色がかっているけど、さっきみたいに極採色じゃない。落ち葉も四色ミックスだけど、全体的に土気色だから深く考えまい。気のせいだ、見ない見ない。
≪もしかして、それなりの数の人間が定期的に趣味で登山しちゃってたりする道?≫
≪そんなことないよ~。残っている古い道は森の中とか山の中が多いの。今の人間は、馬が引っ張る箱に入って移動するから、広い所にうんと大きな道を作ってるの≫
言われてみれば、大人が片手を伸ばしたくらいの道幅だ。駅のエスカレーターと同じくらいの狭さでずっと道が続いている。
だんだんと山の傾斜に沿って、蛇行するようになってきた。しかも今度は岩が突き出て向こうが見えない。
そろそろ鈴を外すべきかな。既に杖を握る手の中に
紫天女のアゲハ
「ふべしっ!?」
迷っていたら、蝶の足元が薄紫色にぼわわんと光りだして、風船みたくなって、そして羽を大きく扇ぐのと同時に足元で凝縮された紫の玉を私へ投げつけた!
≪あ、
≪え。もしかして、さっきの天道虫もあんな感じで、黄土色の
フィオが≪そだよ~≫と、ほんわか応える。母竜
≪何それ、魔法?! 私の世界だと絶対に起きそうにないことなんだけど! ひょっとして攻撃されてるの?!≫
≪まほう……なのかな。よくわかんない。『贈り物』って呼ばれてたから、攻撃じゃないと思うけど……≫
脱皮間際の対処法といい、教育ママンとしては詰めが甘いぞ、ママ・ドラゴン。
お腹に軽くヒットをかましてくれた石つぶてを、地面から拾いあげた。不透明な薄紫の……岩塩の塊みたい。なんか粉ふいてて、ザラザラしている。
≪えーと、ありがとう、ございます?≫
紫天女と意思
≪待って!≫
慌てて追いかけたけれど、蝶は跡形もなく消えていた。パーカーの腰ポケットに手を入れると、左ポケットには昨夜の
どんな理由でもらえるのか、なぜぶつけてくるのか、意味が解らない。モンスターのドロップアイテムだって、条件は討伐とか、はっきりしているぞ。
おまけに曲がった先には、さらなる珍事が待ち受けていた。
≪うーんと、コレも普通に時々あること?≫
≪は、はじめて! こんなのはじめて!≫
フィオが慌てて否定する。だよね、なんでこんな所に白髪老人の変死体が横たわっているのだ。しかもリアルな黒猫の剥製まで隣に置いてある。
……魔除けの鈴、鳴らし続けておくべきだったのかもしれない。
大地を踏みしめ、重心を落とし、杖を正面で真っ直ぐ構えた。里宮のお
念じたら火や水が出てくる世界なのだ。人生ハッタリだ。気合いで勝負だ。
「えええいっ。 悪霊退散、
私は魔王メメ! ホラーは絶対、ダメなんだってば!
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