第1話
そこは誰も居ない暗い……暗い闇の底。
未だ誰も到達していない氷に閉ざされた大陸の地底に作られた一切表に出ることのない一つの巨大な城。
「う、うーん……」
そこの一室。
最上階に位置しているこの世のありとあらゆる贅が集められている荘厳な一室。
そんな一室の中央に置かれている巨大なベッドの上に寝かせられている一人の女性の口から、声が漏れ出す。
重さを感じない……極上の手触りと快適さを与えてくれる布団が静かに蠢く。
「……ん……ふわぁ……」
女性のまぶたがゆっくりと持ち上がり、そのきれいな口からとろけた声が漏れ出す。
「ふにゅー。こ、ここは……」
そして、女性はそのとろけきった表情のまま辺りをゆっくりと見渡す。
「あ。おはよう。よく眠れた?」
そして、女性の視線が。
ベットの近くに置いてある椅子に座っていた僕のことを捉える。
殺し合いをしていた相手である僕のことを捉える。
「……ッ!?!?」
僕を見て、とろけた表情を浮かべていた女性……魔王様の表情が一変する。
「何故貴様がッ!!!」
僕のことを睨みつけてくる魔王様は魔法を発動し、己の魔剣を異空間収納から取り出そうとする。
すべては僕を殺すために。
「無駄だよ」
そんな魔王様に対して僕は口を開く。
「ここは魔法が一切使えないからね」
ここにはとある仕掛けが施されている。ここで魔法を使うことは不可能だ。
「……」
ベッドに腰掛けたまま、魔王様は僕をにらみ続ける。
その手には何も握られていない。
「なるほど……魔法が使えない空間ね。確かにすごいわ。良くも準備したものね。……でも、あなたも魔法なんて使えないでしょ?ただの凡人風情が私と肉弾戦闘で勝てるとでも?」
「いやいや。僕なんかが戦っても勝てるわけ無いだろう。……だけど、ここに居るのは僕だけじゃない」
「……ッ」
この部屋の扉が開き、ゾロゾロとアルファを先頭として『シャリ』のメンバーが入ってくる。
「さて。天才たる魔王様。たぜぶぜだよ?」
僕は魔王様に向かっていたずらっ子のようね笑顔を向けた。
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