第12話

「なんでうちがこないなとこに……」

 

 僕の隣に立っているアレナが絶望に似たような表情を浮かべながらため息をついている。

 僕たちがいるのは多くの騎士たちがいる砦の中。

 

 魔族討伐隊。

 皇太子を殺した魔族たちを殲滅するために集められた騎士たちが駐屯している砦の中に僕とアレナとレミアも混ざっていた。


 僕たちは騎士たちが多くいるところから離れた人気のない場所に集まっていた。


「というか、あの人は居ないんだな……」

 

 ラーニャは僕たちのもとにいない。魔族討伐隊の中にラーニャの名前はないのだ。

 

「良かった……」


 そのことにレミアはこれ以上ないまでに安堵しているようだった。

 ……レミアも色々と苦労しているのだろう。うん。頑張れ、主人公。僕が覚醒イベントを片っ端から叩き潰しているせいで、君の苦労は生まれていると思うんだけど……主人公精神力でなんとか頑張ってくれ。


「……はぁー。嫌や。お硬い騎士と一緒になんかをするなんて。商人と騎士なんてこの世で一番相性の悪い二組だんやで?」


「大丈夫だよ。そもそも、別に僕たちは騎士と一緒に戦うわけじゃないからね」


「え?そうなん?」


「うん。そうだよ……そもそも。僕たちと騎士が上手くやれるだなんて思っていないと思うよ。


「はい。そうです。流石はマキナ様」


「……やっぱり来たんだね」 

 

 僕は声がしていた後ろの方に振り向き……そこにいるラーニャの姿を確認する。

 本来、魔族討伐隊のメンバーではない存在であるはずのラーニャ。しかし、彼女ならばここに来るだろうと思っていた。


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああ!!!」


 ラーニャの姿を見たレミアが大きな声を上げる。

 そのさまはまるで幽霊でも見たかのようなものだった。


「そこまで驚かないでください。……さて、と。マキナ様の言う通りあなたたちに求めるのは騎士と共に戦うものではありません。少人数で動く斥候のような役割です。あぁ、当然私もご一緒しますよ」

 

 ラーニャは笑顔を浮かべたまま僕たちにそう話した。

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