第44話
「ん……んん」
何も見えない暗い闇の中。
テレシアのうめき声がこの場に聞こえてくる。
「あっ。起きた?」
動けないように手足を縛られて転がされている僕は、テレシアの足に自分の頭をこすりつけて告げる。
「えっ……あ?こ、ここは……?」
意識を取り戻したテレシアは周囲を見渡して……真っ暗で何も見えないことに気づく。
「ちょっ!?ど、どこ!?」
慌てた声を出して暴れ始めるテレシア。
「ほ!?」
テレシアが体を暴れさせれば……一番被害を被ることになるのは僕だ。
何も出来ない僕の体を、アレナの足が、手が、体が打ち付ける。
メタメタのぼこぼこに。
「痛い!?痛い!?痛い!?お、落ち着いてッ!」
僕は声を張り上げて、叫ぶ。
「えっ……あ。マキナ。ど、どこ!?」
「君の近くだから!暴れないで!叩いているから!」
「えっ……あっ!?ごめん!」
自分の体が僕に当たっていることに気づいたテレシアが自分の体の動きを止める。
「大丈夫だよ」
「と、ところでここがどこだがわかる?」
「さ、さぁ……?僕もいつの間にかここに居たから」
ここがどこなのか。
僕はそれを正確に理解しているけど、テレシアに教える必要はないだろう。
「そんな……ッ!ごめん……」
テレシアが僕に向けて謝罪の言葉を口にする。
「私、だよね。狙われているのは……。ごめんね。巻き込んじゃって……」
「良いよ。良いよ。気にしなくて。君が一人で誘拐されるようなことにならなくて良かった。……まぁ、僕一人でいるくらいで何が出来るのかはわからないけど」
「ううん。居てくれるだけで……」
「ははは。そう言ってくれると嬉しいよ。……さて、と。これからどうしようだよね。あっまずは僕の縛られている両手、両足の拘束を解いてくれない?テレシアの分は僕が噛んでちぎったから、自由でしょ?」
「あっ……うん」
両手と両足が自由になっているテレシアは僕へと手を伸ばして体を触り、なんとか縄を掴んで僕の縄を開放させてくれる。
「ん。ありがと。ふー。これで自由になった」
両手と両足を使えるようになった僕は立ち上がり、凝り固まった体を動かす。
「さて、と。ここはどこだろうか?」
真っ暗で狭い部屋。
一畳ほどもない暗い部屋。
何も見えないせいで何もわからない暗い部屋。
「ん?これ詰んでね?」
この状態から現在の状況を推察するのは不可能だね。うん。
僕は最初から全部わかっているんだけどねッ!
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