篠原千晶(6)

「見ろ……この甲羅」

 瀾が気絶している河童の一匹を指差す。

 虎縞状の模様。

「熊本の『水虎』か」

「で、腕を延せるのは……広島の『エンコウ』だ」

「つまり……アレか? 日本のあっちこっちから、久留米ここに河童が集って来てると?」

「安徳グループの先代は、日本中の『河童』から怨みを買ってる。そして、今、その安徳グループで内紛が起きてる」

「ところで、何で、空中と水中に居たのが判った?」

「『魔法』系じゃない索敵能力を持ってる応援を呼んだが……」

「じゃあ、そいつなら、『魔法使い殺しの魔法使い』どもにも対抗出来るのか?」

「と……思ってた」

「はぁ?」

「思ったより話がデカくなってる。万が一、広島の『神政会』まで出て来たら、そっちの対処に回ってもらう必要が有るかも知れん」

「ドローンの方で何か判るか?」

 そう言って私は、一箇所に集められている壊れたドローンを指差す。

「これから調べるが、メーカも生産国も……多分だが入手経路もバラバラだろう。複数の組織が複数のルートで仕入れたモノの可能性が高い」

「空に居た奴は何者だ?」

「多分だが、安徳セキュリティの社長の兄弟だろう。安徳セキュリティの社長が似た姿に変身したのを見た事が有る。河童系で、空を飛べて、近代西洋オカルティズム系の『魔法使い』」

「盛り過ぎだ。何だ、その牛鰻カレー天丼みたいな奴は?」

「ちょっと気になる事が有る」

 瀾は、関口のボケ満載のツッコミを冷たく無視した。

「何匹か河童を逃した」

「まぁ、それは仕方ない……」

「あの河童ども……多分だが……使だ」

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