うざいからパーティー追放?あ、そうですか。じゃあ村長になりますね。

ゆめうめいろ

1.うざいから追放?

「もうお前いらないよ。」 


 それは突然だった。


 ……えーっと……?

 

 食事中に急に外に呼び出されて何されるのかと思ったら……うん。

 まあ、呼び出された時点でこうなるとは思ってた。


 「えーっと?心当たりしか無いんだけど一応理由を聞いても?」


 …………理由……か。

 あんまり実践で使えないことだろうか。

 でも、これからは―――


 

「うざいから。」

 

 

 …………ん?

 今、なんて?

 

「え?なんて―――」


 「だからうぜぇからだよ!お前別にそこまで強くもないのに周りからは人気で、お前よりもずっと俺らは頑張ってるのにどんなに頑張っても上がっていくのはお前の人気―――わかるか!俺たちの苦しみを!」


 はー?

 要は努力してもそれが一切報われないだけでなく何もやってない俺の人気が上がっていくからと……


 「……それだけ?」

 「……そうだ。お前と仲間だっていう事実も今では吐き気がする。お前をパーティーから追い出すのには他のパーティーメンバーからも同意をもらってる。このパーティーにお前の仲間なんかもういないんだよ!」


 えーなんか……なんかさ?

 もっと高尚な理由があんのかと思った。

 確かに当人たちからしてみたら由々しき事態なのかもしれないけどあなた達もっと       他に気にすることありますよね?

 本職はどうした本職は?


 「……ん。わかった。でも、俺がパーティー抜けてお前らはどうするつもりなんだ?ヒーラーがいなくなったら困るのはお前らだろう。」

 「困る?何いってんだ?今までにヒーラーのお前が活躍した戦いなんてあったか?」


 ……たしかに無い。

 今までも戦闘終わりにヒールをしたことはあったけど戦闘中に行ったことはなかったし。

 みんな強すぎるんだからこれはしょうがない。

 これはしょうがないことなんだ!

 まあ、別に戦闘終わりなら効率は悪くなるけどしばらく休めば俺がいなくても充分回復できると思う。

 一応作戦とか雑用とかをこなしてたのは俺だったんだけども……。

 そんな姿は一切パーティーメンバーからは評価されなかってわけか。

 ……悲しい。


 ていうか―――


 「でも、これから先は今までとは比べ物にならないくらい強い魔物も出てくるしヒーラーが必要になる場面が増えてくる……はず。少なくともいたほうがいいと思うが?」


 これからは魔王領に近くなってきていつも戦っている魔物の数倍強い魔物が普通の魔物のようにポップする。

 その証拠に一週間に一回現れるかどうかのボスクラスの魔物が最近では2、3体くらい現れるようになってきている。


 どんなに強くてもそんなところで充分に休むことなんかできるわけ無いだろうしずっと戦い続けることももちろん不可能だ。

 いくら自分を追い出そうとしている奴らでも死んでほしいとは思わない。


「ふーん。まぁ、最悪お前じゃなければ誰でもいいから他の奴でも仲間にしておけばいいだろ。まあそんなことにはならないと思うが。」


 そんなことになるから言ってるんですが。

 どれだけ話しても俺を追放する意思は変わらないらしい。

 どんだけ俺嫌われてんだよ。

 もうこのままじゃ埒が明かないな。


 「わかった。それじゃ荷物まとめて出てくよ。今までありがとうな…………それじゃ。」

 「あぁ。早く出てけ。」


 最後まで辛辣過ぎやしませんかねぇ。


 こうして今まで肩を並べて戦ってきた仲間にパーティーを追放されたのだった

 はぁ。












 「チリンチリンッ」



 ……ん?んーん?……あ……朝か。

 …………動きたくない。

 そして働きたくない。

 布団の中に潜りながらそう思った。



 働かなくても充分なお金持ってるし。


 俺は勇者と呼ばれる天才のパーティーメンバーだった。

 勇者の名前はサリアス。

 防御力、攻撃力、魔法適合力、体力、知力。

 何もかもが完璧。

 そして、そのパーティーメンバーもまた優秀だった。

 剣使いのクエロ。

 魔法使いのミナル。

 タンクのオルア。

 弓使いのミナス。

 そしてヒーラーの俺。



 みんな国でトップの学園を主席クラスで通過している。

 もちろん俺も。

 まあ、この中じゃ一番下なんだけどね……



 そんな勇者パーティーが目指していたのは魔王の討伐。

 まあ、魔王は……圧倒的悪だと思ってくれれば良い。

 そんな魔王を倒すために各々役割を持って勇者と共に戦ってきていた。

 ある時は、砂漠の中。

 ある時は、海の中。

 色んな所へ旅をしていった。

 それなのに……。


 うざい……ねぇ。


 最初の方はみんな優しかったんだけどなー。

 ここ最近はハブられてた感じもしてたしそろそろかとは思ってたけどまさかうざいからだったとは……

 自分でもなんで周りから好かれているのかわからない。

 仲間には何でもできる勇者や、かっこいい剣士、可愛い魔法使い。

 本当に一切わかんない。

 何故か街へ物資を買いに行ったときなどはものすごく優遇されるし、勝手に行われていたらしい勇者パーティーの人気投票なんてものではぶっちぎりで俺が一位だった。

 何でそんなものがあんだよ!ってツッコミを入れたくなるような人気投票だけどなぜか全体の得票数は多いんだよなー。

 しかもその中で3人に一人が俺に投票してるっていう……

 俺が活躍する場面なんて少ないのに。



 当然嬉しいけど活躍する機会なんてほとんど無い裏方の俺が人気なのかがぜんっぜんわかんない。

 どうやらふざけて入れたわけでもなさそうだし……。


 まあそのせいで追放されたんだから笑えないけど……。



 で、その勇者パーティー時代に国から支給されたお金が無職になっても一生生きてけるくらいあるからもう働く気力もわかない。

 このまま一生働かずに暮らしていきたいなー。

 もう何に対しても気力がわかない。

 別に国で最高級のヒーラーなんて俺以外にも大量にいるしきっとそいつらを引き連れていずれ魔王討伐を成し遂げてくれるだろうから俺の存在意義がわかんない……。

 

はぁ。

 今まで頑張ったんだから余生はゆっくり過ごさせてほしい。(現在23歳)

 まあせっかく、久しぶりに自由な時間ができたんだからゴロゴロしなきゃ損でしょ!

 ……それじゃおやすみなさい。


 そうして俺は二度寝を決め込んだのであった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る