絶対的な恐怖

 エアコンが効いた部屋で、僕はその時を待っていた。

 目の前にある扉を見る。そこが地獄への入口だった。

 これから、僕は、地獄へと入り、絶対的な恐怖と相対することになる。

 もちろん、僕が望んでいることではない。こんな経験しないなら、しない方がいいのだ。自ら進んで、あの恐怖に嬉々として自ら進んで飛び込もうとする人がいるならば、その人は、頭のねじが飛んでしまっている人だろう。

 恐怖にひきつっていると、扉の向こうで叫び声がした。

 子供の声だ。

 ここでは、子供だろうと、大人だろうと、関係ない。

 皆が、平等。皆が、支配者のてのひらの上だ。

 やがて、静かになる。

 ……ああ、終わったのか。

 となると、次は、僕の番だ。

 僕を呼ぶ声がする。

 ゆっくり立ち上がり、扉へと向かう。

 地獄に入ると、支配者がいた。

 白い服に身を包み、笑顔だ。

 僕は、支配者のそばにある椅子に腰かける。

 深く息を吐く。さぁ、耐えられるか……!

「はい、それじゃあ麻酔かけた後、親知らず抜いていきますねー」

 歯科医師は、のんきな口調で言う。

 こっちは、めちゃくちゃ怖いんだよ!

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