夏に吸われる

メトロノームのコツコツに、

ヒトの指を連想れんそうしつつ、

覚えたての事実をもてあます


夜を追って暗くなる世界

朝とたたずむ夕べのかたらい

日陰ひかげに根づく志願者しがんしゃ


開腹かいふくされるまま大笑いする入道雲にゅうどうぐも

ついばむようにのがれ去るのは熱い雨脚あまあし

Tシャツのグチャグチャに歩幅ほはばせばまる


〝ヒトはいつか必ずバラバラになる〟

〝あれ〟はまさしく極論きょくろんそのものでした

「 汗と雨のしたたるほうへと、

    たましいはすすんでゆくのよ 」


首で見上げる空色そらいろ世界

ひとみくろに当てめたって

見ないふりの故郷こきょうあわいだけ


うれしくて なつかしくて たりていく

でもそこは 季節きせつのようにはまわらないで

そのかわりに あたまのなかは光だけになって

真っ白になって なにも考えられなくなってしまうの


メトロノームのコツコツは時間のおと

メトロノームのコツコツは根元ねもとからくる

メトロノームのコツコツは感情のなかにも


メトロノームのはり魔法まほうつえ

メトロノームの指先はいつもだまっている

メトロノームはマジメだから、

そのあたまのなかには、

かぞえた数字だけがならんでいるのよ

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