形式花火

納涼

炎天（えんてん）、遍（あまね）く陽動（ようどう）

今（いま）に迂闊（うかつ）な日溜（ひだ）まりの底（そこ）

繁（しげ）る言葉（ことば）と林道（りんどう）のイマージュ

脱分極（だつぶんきょく）を亡霊（ぼうれい）として

碑文（ひぶん）たちは厭世（えんせい）を慈（いつく）しむ

分離（ぶんり）されるための右左（みぎひだり）

納棺（のうかん）に潤滑（じゅんかつ）のあらんことを

実情（じつじょう）、捻（ね）じれ続（つづ）ける螺旋（らせん）階段（かいだん）

体躯（たいく）を模（も）した羅列（られつ）言葉（ことば）

息継（いきつ）ぎは、首（くび）を挿（す）げ替（か）えるように

半夏生（はんげしょう）には水銀（すいぎん）の雨（あめ）が降（ふ）る

溺（おぼ）れたがる紅色（べにいろ）に

見（み）せたがりの極彩色（ごくさいしき）

死（し）に化粧（げしょう）には天上（てんじょう）の口付（くちづ）けを

ずっと恨（うら）んでいるだけの誇（ほこ）りがある

開（ひら）けた空（そら）に殺鼠（さっそ）の響（ひび）きがこだまする

呼応（こおう）などなし、ただ産声（うぶごえ）として

真空管（しんくうかん）は嗤（わら）い始（はじ）める、母体（ぼたい）と共（とも）に

水銀（すいぎん）を撒（ま）き散（ち）らしつ、文節（ぶんせつ）を思（おも）い

枯（か）れかけたプルメリアが咲（さ）くように