第三話 温かな朝食

鳥の鳴く声で目が覚める。

まだ少し早いようだが二度寝したら昼まで寝てしまいそうだからこのまま起きておくことにする。

そういえば食事は付くのだろうか。 聞いてなかったな。


とりあえず下りて聞いてみよう。

受付にはもう昨日受付をしてくれた少女が座っていた。

こちらに気付いたようで声を掛けてくれる。

「おはようございます。 お加減どうでしたか?」


「ばっちりでした。 ありがとうございます! あ、聞き忘れていたんですが朝食とかって外で食べてきた方がいいんですか?」


「あ! 説明を忘れていました! ごめんなさい! 別料金になりますがうちの食堂で食べていっても大丈夫ですよ!」


あ、食堂あるんだ。 小さいから外に食べに行かないといけないかと思ってたや。


「食堂は二階の突き当りにあります! 私のお父さんが料理長なんですよ!」


「そうなんですね! 楽しみだ! じゃあ食堂に行ってきます」


そういって階段を登るといい匂いが漂って来ていた。


ぐぅ~っとお腹が鳴ってしまう。 今すぐにでもご飯が食べたい。

俺は焦る気持ちを抑えながら食堂へと向かう。


「いらっしゃい! 一人かい?」


「はい、一人です。 お腹ペコペコなので山盛りにしてもらえますか?」

我慢が出来ず山盛りを頼んでしまう。


「あいよ、あんちゃんちょっと細いから余分におかず付けておくよ」

おまけしてくれるらしい。 かなり太っ腹だ。


「ありがとうございます!」


十数分が経ち、より一層いい匂いが漂ってくる。

これは多分ベーコンの焼ける匂いだ。

この匂いだけでパン二枚は食べれてしまう。


「お待たせ! こんがりベーコンの目玉焼き乗せと新鮮な小麦を使ったふわふわのパン、これがおまけのサラダとスープだ」


「ありがとうございます! うわぁ、おいしそうだ!」


「しっかり食べるんだぞ!」


分厚めに切り分けられ、こんがりと焼かれたベーコンの上におまけで目玉焼きが二つ乗っていて、その横にはこんもりとしたレタスやニンジンの入ったサラダ、この国では珍しいふんわりとしたパンがお皿に乗せられている。

ちなみにスープはコンソメの効いたオニオンスープだ。

香りがふわっとよくて食欲をそそられる。


俺は合掌がっしょうし、厨房に聞こえるように

「いただきます!」と言う。


目玉焼きをフォークで割るとトロっとした黄身があふれ出してくる。

それをベーコンに絡ませ頬張ほおばる。

「美味しい!」

この一言に尽きるくらいシンプルだが、安心できる味だ。


思わず声が溢れてしまう。 恥ずかしい。


すると料理長が声を掛けてくる。

「そうか! 美味いなら良かった! 腹いっぱい食ってくれ!」

料理を褒められ嬉しいのかテンションが上がっているようだ。


料理長は強面こわもてな見た目をしており、一見ベテランの冒険者に見えてしまうが口が裂けてもそんなことは言えない。

実際めちゃくちゃ優しいからね。 人は見かけになんとやらって奴だ。


次にパンを頬張る。 すると口の中いっぱいに小麦とバターの香りが広がり、噛むと甘さが出てくる。

この地域では珍しい発酵させたものだ。

ここより西の国では結構ポピュラーな物だと聞いたことがあるが、王国では材料が手に入りにくいのだとかで、若干値が張る。


スープもコンソメの安定なおいしさがあり塩味も丁度良く、おかわりを頼みたいくらいどんどん飲めてしまう。

そのままスープも飲み終わり、食べきってしまう。

まだ食べれるが腹八分目という言葉を聞いたことがあったのでそのくらいでやめておくことにした。


「とても美味しかったです! 夜も来て大丈夫ですか?」


「あぁ! 首を長くして待ってるぜ」


本当に見た目に反していい人なんだよな。 色眼鏡で見たら闇組織のボスの様にも見えなくない。


俺は食事も終わったので武器屋に向かうことにした。

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