亜空間魔法の使い方~この魔法、こんな使い方があるんですよ?

いいたか

第一話 ありふれた追放

「おい、レイド、お前の様な何もしない荷物持ちポーターはこのパーティには相応しくない。 今日を以て解雇だ」


とある夕刻、ギルドの酒場で細剣を腰に携えた男が声を上げる。

荷物持ちとは俺の事だ。 俺は亜空間魔法を使い、荷物を通常の荷物持ちポーターより大量に持ち運んでいた。 これは、かなり前から皆知っているはずなんだが…。


「急にどうしてだい? 俺の力が必要だって言ってくれたじゃないか」


「お前より優秀な荷物持ちポーターが見つかったのさ。 聞けばお前より許容量が多く、戦闘もこなせるとか。 この度Aランクになったこの【貴顕きけんの三日月】にはお前の様な荷物持ちしか能の無い奴より、多彩で有能な奴の方が相応しいのだ」


新しい人員が見つかったことによる人員整理らしい。

そんなことは一言も聞いていなかったので素直に驚いてしまう。


「待ってよ。 ケイン、君が戦闘に加わらなくて良いって言ったんじゃないか。 急にどうしたのさ」


「そんなのは安く荷物持ちポーターを雇う方便に決まっているだろ。 非戦闘員なんて金の無駄なのだからな」


「じゃあこれはパーティ全員の総意なのかい?」


この【貴顕の三日月】は五人パーティだ。


細剣使いで二つ名持ちのケイン、魔法使いで次期賢者候補とも言われているナディア、長剣と小盾を使うタンクのアレク、教会にて聖女の地位に就いているヒーラーのアリア。 そして、荷物持ちポーターのレイド。

この五人は幼馴染でアリア以外は同じカエサス村の出身で十四歳だ。


前衛のケインとアレクの両親は村の自警団に所属していて、二人は幼少期から剣を振るっていた。


ナディアと俺は一般家庭の出自だが村に訪れる冒険者の魔法使いに魔法の指導を付けてもらっていた。


聖女のアリアは幼い頃から教会で育っており、巡礼でたまたま俺達と出会い、仲良くなっていった。

その頃に俺達は「皆でSSランク冒険者になろう」なんて口約束をしたんだ。


「あぁ、皆、そうだよな?」


「攻撃手段を持たないで守られるだけの人間が今までこのパーティに所属出来ていたのですから、感謝なさってください。」


アリアが俺を蔑むような目で睨みながら言ってくる。 だとしたら、アリアも攻撃手段無いよね。


「わかったよ。 だけど後悔しても知らないし、何があっても俺は二度とこのパーティには戻ってこないから。 そっちもそのつもりで居てね」


俺には絶対的な自信がある。 誰にも公表はしていないし、公表するつもりもない。


「何言ってるのレイド? アンタみたいなお荷物が上から目線なの気持ち悪いって思わないの?」


「そうだな。 じゃあそれでいいよ。 パーティの荷物は倉庫に入りきらないだろうからパーティホームの庭に全て置いておくんで。 装備に関しては自分で買ったものだからそっちに渡す必要はないから渡さないよ」


「あぁ、それで良い。 俺も鬼ではないから明朝までは待ってあげよう」


全員が腹を抱えて笑う。 しかし、俺は気にしない。


気にする必要が無いんだ。 だって俺は■■■■■■なのだから。


「じゃあ、先に戻って出立の準備をするよ。 俺の配分だった素材も置いておくから明るくなったら確認して。 全部亜空間魔法で保管してあるから状態も良いし、お金に変えるといいよ」


「わかった。 じゃあな」


「レイド、謝るなら今の内よ? アンタ逆らう相手を間違ってるわよ?」


「俺は謝られるいわれはあっても、俺から謝るつもりはないよ。 ご忠告ありがとう」


俺は言いたいことを言ったのでギルドの食堂を後にする。

まだギルドの開店時間内なので受付に行き脱退申請とソロ活動の申請をする。


「いつもご苦労様! パーティ脱退の報告とソロ活動の申請お願いしたいんだけど大丈夫かな?」


「かしこまりました。 受理しておきます。 レイド様は先日のソロによるドラゴン単騎討伐・・・・・・・・、並びに王都に進行した魔族討伐の功績が認定されたためSランクに昇格させていただいております」


お、とうとうSランクだ。 皆に内緒で結構ソロでの依頼を受けたなぁ。 指名依頼もたびたびあったし。

夢のSSランクまであとどのくらいなんだろうか? 俺は期待に胸が躍り嫌な事を全て忘れてしまう。


「わかったよ。 ありがとう。 そろそろギルドカードの更新に顔を出そうと思っていたからね。 丁度良かったや」


「ギルドカードの更新はランクアップと同時にされていますのでまた2年後に更新になります」


ギルドカードはFランクは木製、Dランクからは銅製、Bランクからは純銀製、そしてSランクはミスリル製になるのだ。

とうとう俺はSランク冒険者の証明でもあるミスリル製の冒険者証になった。


そしてドラゴンスレイヤーの称号も得ることになったのだった。


そのことを俺のパーティメンバーは一ミリも知らない。


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