第173話 夕食会

 それから夕食までの時間はルークのお世話をしたり、読書をしたりと過ごしていた。そして18時になった時にチャールズさんが部屋に現れた。


「エルザ様、そろそろ夕食のお時間ということで本館からお迎えの馬車が参りました」


「ありがとうございます。それではルークを連れて行きますね」


ベビーベッドで静かに眠っているルークをそっと抱き上げ、あることに気付いた。


「そう言えば、本館にはベビーベッドがあるのかしら?」


「はい、既に用意されているそうですよ」


「それなら安心ですね」


そして私はチャールズさんと一緒にエントランスへ向かった――。




「それではエルザ様。行ってらっしゃいませ」


馬車に乗り込んだ私にチャールズさんが声を掛けてくる。


「ええ、行ってきます」


チャールズさんに見送られながら私はルークと共に本館へ出発した。




****


「エルザ。待っていたよ」


「いらっしゃい、エルザ。よく来てくれたわね」



私をエントランスで出迎えてくれたのは義父母だった。


「今夜は夕食にお招き頂き、ありがとうございます」


「いや、むしろ無理に呼んでしまって悪かったと思っているよ」


「どうしてもセシルがエルザと夕食を取りたいと言ってるのよ」


義父母は2人とも、申し訳無さげにしている。

その姿はまるでフィリップが生きていた頃とは真逆だ。


「いいえ、大丈夫です。どうかお気になさらないで下さい。それでセシルは今何処にいるのですか?」


「セシルなら今ダイニングルームで待っているよ。では行こうか?」


「はい」


そしてお義父様に促され、皆でダイニングルームへと向かった。




「エルザ、待っていたぞ。それにルークも一緒なんだな」


ダイニングルームでは車椅子に座ったセシルが嬉しそうに私を出迎えた。


「こんばんは、セシル。今夜は食事に呼んでくれて嬉しいわ」


「よしてくれよ、俺たちは夫婦なんだからそんなかしこまった挨拶は無しだ」


その言葉に、思わず私は義父母を見た。2人は申し訳無さげに私を見ている。


「言われてみれば確かにそうね」


セシルの向かい側の席の隣にはベビーベッドが置かれている。

そこでベビーベッドにルークを寝かせると、早速セシルの向かい側に着席した。

義父母もそれぞれ着席すると、4人での食事が始まった――。




**


「父さん、仕事の方はどうなっている?」


セシルは自分が馬車事故に遭って仕事が出来ないことを気にしているのか、食事をしながら義父に尋ねてきた。


「あ?ああ。大丈夫だ、お前は何も気にするな。そんなことよりも怪我を早く治すことだ。それに……記憶の方もな」


「怪我の方は分かっているけど、記憶と言われてもな……」


そしてセシルはチラリと私を見た。


「な、何?セシル」


「うん……エルザ。食事の後、少し2人だけで話がしたいんだけど…いいか?」


私に話……?

一体どんな話なのだろう?


「ええ、分かったわ」


疑問に思いながら、私は返事をした――。

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