第143話 私とコレット様
どうしても私の部屋を見たいとコレット令嬢に強く訴えられた私は彼女を自室に招いた。
「どうぞ、お入りになって下さい」
扉を開けて部屋の中にコレット令嬢を招き入れた。
「お邪魔致します‥‥まぁ……綺麗な部屋ね」
コレット令嬢は部屋に入って来るなり、辺りをきょろきょろと見渡し…感嘆の声を上げた。
「すごいじゃないの。お部屋も広々としているし、備えつけの家具も立派で素敵ね。流石は平民とはいえ、一流商家のご令嬢ね。とても素敵なインテリアだわ。あら、あのカウチソファは有名ブランドのお店じゃないの?」
平民…その言葉にどこか蔑みを感じたものの、私はお礼を述べた。
「どうもありがとうございます」
しかし私の言葉が聞こえているのか、コレット令嬢は独り言のように言葉を続ける。
「お屋敷も私の屋敷に引けを取らない大きさだし……応接室も立派だったわ。お茶のカップも有名作家のデザインだったし…。なるほどね。だからアンバー家ではブライトン家が平民でも、ローズさんをフィリップ様の結婚相手に決めたのね」
「!」
その言葉に驚いた。
一体、どこまでコゼット令嬢は知っているのだろう?
すると私の表情から何か気付いたのか、コレット令嬢はにっこり笑みを浮かべてカウチソファに座ると話し始めた。
「あら?もしかして何も知らないとでも思っているの?私達貴族の間では有名な話なのよ?貴女の姉であるローズさんは地味な貴女と違って華やかな美人だったのでしょう?色々なお金持ちの商売人や、独身貴族の男性達から結婚の申し込みがあったそうじゃないの。そして結婚相手をフィリップ様に決めたのに……何処からともなく現われた旅の男と恋に堕ちて駆け落ちしてしまったのよね?それでアンバー家はしたかなく次女の貴女をフィリップ様の妻にしたのでしょう?」
一体どこで彼女はこの情報を仕入れたのだろう。
ショックを通り越して、驚きの方が大きかった。
「でも……フィリップ様は自分が病に侵されていて、余命幾場も無いのを黙って貴女と結婚したのよね?ひょっとするとローズさんはフィリップ様の命が短いのを知っていたのじゃないの?それで逃げて貴女に押し付けたのでしょう?」
流石にその言葉だけは頂けなかった。
「いいえ、それは違います。私はフィリップのことを愛していましたし、フィリップも姉ではなく、私を愛していると言ってくれました」
すると、途端にコレット令嬢の眉が険しくなった。
「だったらっ!」
突然の大きな声に思わず肩が跳ねてしまった。
「だったら‥‥フィリップ様のことを今も愛しているなら‥‥私からセシル様を取らないでよ……セシル様が今日、私に言ったのよ?こんな卑怯な真似をしてまでエルザに会おうとする私を愛することは出来ないって…」
コレット令嬢は今にも泣きそうな顔で訴えてくる。
「え……?」
その言葉に顔が青ざめるのが自分でも分かった。
「どうせ戦略結婚だから、この結婚をやめるわけにはいかないけれど…例え結婚しても私を愛することは無いだろうって‥‥こんな残酷な言葉…あんまりだと思わない…?」
そして、ついにコレット令嬢の目から大粒の涙がこぼれ落ちた――。
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