第20話 偽りの世界



戦闘本能が…抑えられない。


「正々堂々戦いましょう」


「何者だ!」


「私の名は魔族四天王の一人黒騎士 ナイツ」


前世持ちの俺からすると 騎士 騎士で可笑しいがそんな事言っても仕方が無い。


「正々堂々とはどう戦えば良いんだ…」


「一対一で戦えば良いだけだ、武器は自由」


「解った、受けて立つ」


魔族とはいえ凄いイケメンだ…良いなぁ、多分楽しい人生を送っていたんだろうな。


「我が音速の剣、受けてみよ」


これが魔族四天王とは最早驚かない…スロー過ぎてあくびが出る。


しかも、これ受けても痛くないかも知れない。


わざと剣をそのまま受けてみたが…あっ折れた。


「受けてやったが折れたぞ…次はどうするんだ?」


「嘘だろう、魔剣グランドが簡単に折れるなんて…」


「次は何をするんだ?」


「…」


「今は命を助けてやるから…仲間を集めて来い…それで雌雄を決しよう」


「解った」


駄目だ…最早この程度じゃ戦闘本能の疼きを止められない。


◆◆◆


「約束だ、連れてきてやったぞ、我が魔族大隊、地上の魔族最強の騎士を集めた魔王騎士団、その数…その団長でもあるのだ、我を愚弄した罪、その命で償え」


「そうか…だったら掛かって来い」


「我が剣は炎…全てを焼き尽くす」


魔法剣か、だが…今の俺には効かない…


避けるのすら面倒なのでひたすら攻撃をした。


見た目は人間のままなのに、攻撃が一切通らない。


試しに目で剣を受けたが…剣が折れた。


ただ軽く手を振っただけで鎧を着た騎士が数十メートルは飛んでいき鎧が砕ける。


ああっまただ目の前が赤くなる…


「たた助けてくれー―――っ」


「馬鹿者、敵に背を向けるなー――っ死ぬぞ」


「こんな物いったいどうしろと言うんだよ」


「こんな奴に勝てるわけが無い」


「嫌だ嫌だぁー――殺さないで、殺さないでくれー―――っ」


「降伏する…降伏するからやめろー――――っ」


目の前の赤い光景が晴れた…


ぴちゃん、ぴちゃん…俺の手はナイツの髪を持っていた。


しかも首から下は随分と離れたところにある。


◆◆◆


暫く魔王軍とぶつかっていると…魔王軍から降伏宣告をされてしまった。


魔王直々の書簡に『好きな物、好きな地位、好きな女…全てをやるから進行を辞めて欲しい』と書かれていた。


もう魔族は戦ってくれないようだ。


流石に降伏してきた者に攻撃をし続けるのも、心が痛んだ。


四天王であの程度であれば…もう戦闘本能を鎮める意味はなさない。


結局俺は…


魔国の国の一部に領地を貰い、そこにサキュバスたちを呼び寄せ一緒に暮らす事にした。


勇者リヒトは魔王に負け殺された事にして貰い…余生を送る事にした。


ただ、牛鬼は不老不死という話もあるから…この後の事は知らない。


「なんでわらわが、畑など耕さなければならぬのだ」


「働かざる者食うべからず」


「わらわは食事は要らぬ…ただ夜の相手だけしてくれれば良いのじゃ」


「雅さま…それは私達でいう食事ですから…その権利を捨てるという事で良いんですよね?」


「やった、これで順番が」


「お前ら~ふざけるでない…わらわもちゃんと耕すから…な」


「それなら良いや…頑張れよ」


もう、俺は幼馴染と一緒には暮らせない…だが遠くから幸せを祈っている。


サキュバス達には…村人の様な生活を送って貰っている。


この偽りの世界で…人間らしく生きていく…


そうしないと化け物になって…


「また、難しい顔をしておるな、また化け物じゃとかの悩みか?『化け物』で良いじゃないか? お主は…サキュバスとはいえこれだけの女子に愛されているのじゃから」


「食料としてだろう?」


「否定はせぬが…サキュバスをこれだけ相手に出来るのじゃ、充分化け物じゃ」

「そうだな」


化け物の人生を楽しんで生きていく


               FIN








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