第11話 これで良いんだ

次は彼女達だ。


「エルザ、クラリス、リタ、話があるから聞いて欲しい」


他の償いは教会がしてくれた。


俺が今更何も出来ない…


これから償いをするというのなら…彼女達にだろう。


「どうしたんだ? 暗い顔して、今更自分がクズみたいな奴だって気がついたのか?」


「ああっ、嫌って程にな」


「それでどうしますの? 償いももうできませんわ、それに幼馴染まで殺してしまって…まぁこれは半分は私達のせいですわね」


「私達に話があるんだから…何かあるんだよね」


「ああっ…これからは馬鹿な事はしない、自分がクズだったという事も良く解った、だから、もし俺なんかもう一緒に居たくないというなら、このパーティは解散で良い…三人は好きな様に生きてくれ」


「あのさぁ、リヒト、私達にそんな生き方出来る訳ないだろう?」


「そうですわ…四職である以上、その様な生き方は許されませんわ」


「そうだよ」


確かにそれは出来ない…普通なら。

だが、俺が『全部背負えば』それは可能となる。



「もし、皆が、望むなら俺は『単独勇者』を選ぶ、そうすれば俺と違い三職である、皆は生き残る事が出来る」


単独勇者とは「三職」に頼らずに一人で戦う勇者だ。


四職のなかのリーダーが勇者だからこそ『その選択が出来る』


「リヒト、冗談はよそうぜ、責任を感じているなら、もうそれで良い」


「それは確かに私達の理想ですができませんわ…冗談はやめて欲しいのですわ、そんな夢みたいな話は止めて欲しいですわ」


「戦わない日常は確かに夢だよ…出来もしない事は言わないで」


「そう解った」


彼女達への償いは『これで良い』


彼女達が戦わない未来…それをプレゼントする。


それでリヒトが行った事への償いが出来る。


◆◆◆


俺は一人、教会に行き単独勇者の手続きを取った。


教会の司教は驚いていたが…


「勇者様が言われるなら」と手続きを行ってくれた。


冒険者ギルドにてパーティの解散手続きをして


皆には一人当たり金貨1200枚(約1億2千万)を彼女達の個人口座に移した。


それでも金貨数十枚(約数百万)はあるから大丈夫だ。


前の世界と違いこの世界なら金貨の500枚もあれば生涯暮らせる。


これで三人は幸せに暮らせるだろう。


「彼女達へ伝言を頼めるかな?」


「どんな伝言ですか? 基本的に銅貨3枚で手紙にして渡す形になりますが…」


「それじゃ、それで『楽しかった、ありがとう』そう伝えて下さい」


「リヒト様…冗談ですよね…まさか死ぬ気ですか」


「はい…銅貨3枚」


「…解りました」


俺はギルドを後にした。


彼女達も優しいがあれは、俺でなくリヒトへの『愛情』だ。


リヒトの償いもあるが…幼馴染だいつかバレるかも知れない。


これで良いんだ。


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