【拍手再録】この世界のCERO基準がそろそろ気になる件。
※ものすごく微妙にですが下ネタ(?)含みます。
※地味に地の文が三人称です。彼・彼女としか表記しないので若干不自然な部分もあるかと思います。
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「(偽装)恋人できましたー」宣言によるフラグ折りが失敗し、何故かカオスな修羅場が発生し、お助けキャラ的な人物まで現れた――その数日後。
「リアル逆ハー補正とかマジいらないんですけど」な彼女は、計画が概ね失敗に終わったとはいえ、一応現在進行形で共犯者な「リアルギャルゲーフラグとかいらないからマジで」な彼を待っていた。
厳密な時間までは決めてはいないものの、明らかにいつもよりも現れるのが遅い――しかも連絡もない彼に、何かのっぴきならないことが起こったのかと若干心配になってきた頃、彼はやってきた。……わかりやすく、疲れきった様子で。
「悪い、遅れた」
「……えーと、何があったの?」
尋常でない疲れ様に、これは何か厄介なイベントでも起こったのかな、などと思う彼女。
「ひとつ、忠告しておく」
「え?」
若干唐突とも言える切り出しに戸惑うも、しかし彼はそれに構うことなく、がっしりと痛いくらいに彼女の肩を掴んで訴えかけるように言う。
「この世界の二次元っぽさ半端ない。わかってたけどそれ以上に。だから気をつけろ」
「え、えーと……ごめんその思考に至るまでを詳しく」
だいぶ精神的にキてるな、と微妙に哀れみをもって観察していた彼女が口にした言葉に、彼はきらりと不穏に瞳をきらめかせた。
「聞きたいか? 聞きたいのか……?」
脅すように――というかその面もあるのだろう、彼は低く問う。
ものすごく嫌な予感しかしなかったものの、彼女は知らないことによって安心感を得るよりも、知ることによる恐怖に耐える方が性にあっていた。それ故に頷いた。
「……媚薬盛られた」
「…………」
咄嗟に言葉が出なかった――どころか、脳の働きが止まった錯覚すら覚えた。
「媚薬……?」
「媚薬。二次元、特にエロゲ御用達のアレだ。精力剤とかいう生易しいもんじゃない。ガチの媚薬だ」
「ついにエロゲ化したの君のところ」
「真っ先に言うのがそれか!」
若干涙目になった彼に、彼女は少しばかり申し訳ない気分になった。現実逃避ついでについうっかり抉ってしまったわけだが、傷心の彼には少々ダメージがありすぎたようだ。
「一応聞くけど、間違いは……」
「起こしてない」
「一応聞いただけだからそんな噛み付きそうな顔しないでください。……よく耐え切れたね?」
わざわざ『ガチの』と注釈まで付けるほどだ。その効果は生半なものじゃなかっただろうに。
そんな彼女の内なる声まで拾ったかどうかは謎だが、彼は苦々しい顔で補足する。
「保険かけてたからな」
「保険?」
「いるだろ、都合のいいお助けキャラ」
「……そんなことまでこなすのあのお助けキャラ」
「有料だったけどな」
詳しく聞けば、そもそも周囲の不穏な動きをリークしてきたのもお助けキャラだという。そしてその情報提供後に手助けを頼むか否かを迫られたらしい。
「時限選択肢が見えたんだ……逃したらバッドエンドだと思った」などと遠い目で言う一蓮托生気味な相方を慰めるため、今日は思い切り二次嫁と戯れさせてあげよう、と考えた彼女は知らなかった。
後日、自分もまたCEROCレベルの危機に陥った挙句、お助けキャラの世話になることなど――まだ、知る由もなかったのだった。
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拍手小話のリクエストをいただいて書いたものの再録です。
内容については『媚薬ネタ』という指定を知り合いにもらって考えてみたのですが、見ての通り艶っぽい事態にはなりませんでした。
大体片割れに起こった出来事はもう片方にも起こるという(本人たちには)嫌な仕様です。勿論男向け女向けの差はありますが。
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