ネル お姉さんからもてなしを受ける
本文の前に一言。
深夜テンションのせいで少々開幕から飛ばしていきます。ご注意を。
◇◆◇◆◇◆
「……はぁ……はぁ……そこ、触っちゃ……くぅっ!?」
「ウフフ。恥ずかしがらなくて良いのよん! お姉さんにぜ~んぶま・か・せ・てっ♪」
イザスタの手が艶めかしく伸び、汗にまみれた背をぬるりと撫でさする。
「あら~? 見かけより良い身体してるわねぇ。華奢に見えて意外と中身はしっかり。あたし好きよそういうの! 良いわぁ! 触り甲斐がある」
そしてイザスタはゆっくりと指を開き、
ドスッ!
「はうぁっ!?」
「あら? 痛みはない筈だけど……これは相当疲れが溜まっちゃってるわねぇ。さしずめそこのネルちゃん達に付き合って思いっきり頑張ったのね。大丈夫! お姉さんに掛かればすぐに良くなるからね!」
「ちょっ!? ちょっと待ってくだ」
「ダ~メ!」
メキャ!
イザスタは輝くような笑顔で骨をこきこきと鳴らしながら、ピーターの
時間は最初に女がイザスタと名乗った時に遡る。
「それじゃあ次はそちらの番よ。まずはお名前から聞かせて!」
何とかピーターを引きはがし、いつでも突撃できるよう軽く構えながら様子を窺ってみたのだけど、イザスタはこんな調子でまるで敵意も悪意も感じられない。……仕方ない。
「名前? ネルだよ。ネル・プロティ。アンタを倒してもうじき幹部になるレディ」
「まあ名乗られたら名乗り返すのが礼儀ですわね! 私ガーベラ・グリーンと申します。よろしくお願いいたしますわ」
「その、ピーター……です。よろしく」
「うんうん! ネルちゃんにガーベラちゃんにピーターちゃんね! よろしくっ♪」
名前を言うと、イザスタはとても嬉しそうにまたころころと笑う。
しかしどうしよう。自己紹介中も探ってみたけどこの女、身のこなしにまるで隙がない。おまけに、
「ネル。気づいていまして?」
「うん。まともに行ったらさっきの二の舞だよ」
液体だから砂浜に染み込んで終わりかと思ったら、さっきのドロドロがそのまま不自然な動きでイザスタの周囲に集まっている。また絡みつかれたら嫌だなぁ。
「う~ん。気合入れないとよく視えないですけど、微かにあの人から何かあのドロドロに繋がりを感じます。というかこれ……」
呼吸困難から立ち直ったピーターが、目を凝らして何か妙な顔をしている。
「というか……何?」
「いえ。何でもないです。……まさかいくらなんでもそんな事ないよね。」
なんか変な事を言ってるけど、今はまあ置いておこう。それよりどうやってあのドロドロをどうにかしつつイザスタをぶっ飛ばすかだよ。
試しにもう一度さっきより速度を上げて突っ込んでみようか。そんな事を考えていると、
「あら? あらあらあら!? その胸に着けてるのって!?」
何かに気づいたような声を上げ、イザスタはあたしの方に普通に歩いてきた。な、何よ?
すると、イザスタはあたしの胸ポケット。正確に言うと胸に付けているオジサンから借りた砂時計のお守りを凝視する。
「……やっぱり。ねぇネルちゃん。アナタ
「えっ!? オジサンの事知ってるの?」
「勿論よ! だってケンちゃんはアタシの……っと!?」
ピカ~っ!
急にイザスタの胸元から、正確に言うと胸に付けていたネックレス。そこに付いている赤い砂時計の飾りが光りだした。……あの砂時計。このお守りと似てる。色はこっちは灰色だけど。
「何ですの?」
「ちょっと待っててね! ……はいもしもし! こちらイザスタお姉さんよ~! ……あらケンちゃんじゃない!? うふふ! どうしたの突然?」
えっ!? オジサンが何でこの女に連絡を!?
どうやら砂時計は通信機になっているみたいで、イザスタはこっちに背を向けて何か話し始めた。口元が見えず声もよく聞き取れない。そしてしばらくすると、
「……ゴメンって。悪かったとは思っているのよホント。お詫びにこっちは責任もって頑張っちゃうから……えっ!? そんなに張り切らなくて良い? まあそう言わないで! 任せといて! ……じゃあねケンちゃん! その内また遊びましょうねん。ば~い! ……待たせちゃってごめんね皆」
通話が終わったのか、振り向くなりイザスタはさっきよりもご機嫌な表情でこっちに笑いかける。
「や~っと終わったのオバサン。それで? アンタをぶっ飛ばせばここの課題はOKってことで良い?」
「もぅ。オバサンじゃなくお姉さんと呼んでほしいのになぁ。まあ良いけどね。……え~っと、実は伝えなきゃいけない事があるのよん」
「ルール説明ですか? それが課題として必要なのであればお聞きしますが」
ガーベラがそう尋ねると、イザスタは少し困った顔して首を横に振る。
「そうじゃなくて……なんて言えば良いかしらねぇ。色々と手違いと言うか
そこでイザスタは一拍置くと、
「実はここ。完全に
そうあっけらかんとした態度でめちゃくちゃな事を言い出した。
そうして話は今に戻る。
一応リーダーとしてピーターが詳しく聞いてみると、ここはちょっと特殊な場所にあって普通の方法では出る事は出来ず、扉の復旧を待つしかないんだって。
試しにガーベラが思いっきり髪を伸ばして周囲を探ってみると、少なくとも数キロ以上は広がっていてそれ以上は調べるのが大変になったとか。それだけ広くてプライベートルームとか。
復旧までどのくらい掛かるか分からないという事でちょっと……ちょびっとだけ慌てたけど、あくまで事故という事でこの分のタイムは運営側も考慮してくれるらしい。あと、
「さあさあ。事故とはいえ折角のお客様ですもの! 扉が直るまでた~っぷりおもてなしさせて頂戴な! 心も身体も満たされるようすっごく大歓迎しちゃうから!」
「あのぉ……そう言いつつ何でボクの服を掴んでいるんでしょうか? あと何で手をワキワキとさせていらっしゃるんでしょうか?」
「
なんかピーターがまた攫われた。
目にも止まらぬ早業で上の服を脱がされ、素早く用意されたシートに寝かされ、イザスタの手が動く度にピーターの身体から普通鳴っちゃいけないような音が鳴る。
その間、あたし達はと言うと、
「
「さあね。分かんない。……あっ!? このリンゴ美味しい! もう一つ食べよっと!」
イザスタが用意したビーチチェアーに横たわり、ちょいちょい備え付けの果物を摘まんでいた。結局これは試験とは関係ないんなら、わざわざイザスタをぶっ飛ばして下手に体力を使うより出た後に備えた方が良いもんね! あたしってばあったま良い!
あっ!? そうだっ!
「ねぇイザスタ。そういえばさ」
「うん? なぁに?」
リンゴを齧りながら呼びかけると、イザスタはマッサージの手を休めずに応える。丁度良いから待ってる間に聞いておこう。
「その砂時計と言い、オジサンにやけに馴れ馴れしい感じだしさ。アンタオジサンの何なの? 今オジサンはあたしの下僕一号だからあげないよ」
「それは私も気になりますわね。あの方の交友関係が相当広いのは知っていましたが、一体どういう御関係ですの?」
「ケンちゃんとアタシの関係? ……う~ん。なんて言えば良いのかしらね。元同僚とか友達とか色々あるけど一番ピンとくるのは……」
そう尋ねるとイザスタはしばらく考え、
「………………
「……は?」
グシャっ!
それを聞いて、あたしはいつの間にか食べていたリンゴを握り潰していた。
◇◆◇◆◇◆
スマヌ。第三章後編スタートにこれは本当にスマヌ。
でも筆が止まらなかったんですものしょうがないよね? 特にピーター君の所は筆が進む進む。その調子だピーター君。
この話までで面白いとか良かったとか思ってくれる読者様。完結していないからと評価を保留されている読者様。
フォロー、応援、感想等は作家のエネルギー源です。ここぞとばかりに投入していただけるともうやる気がモリモリ湧いてきますので何卒、何卒よろしく!
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