先輩との昼
宮下先輩は、今度は保健だよりの原稿が出来た、と後日保健室に現れた。
「ありがとー、宮下君。お昼休みに、食べながら読んじゃうわね。放課後、取りに来てくれる?」
「修正あったら直して、修正無ければその時一緒にコピーって感じですか」
「あら、増す刷りも手伝ってくれるの? 助かるわ」
「了解です」
「じゃあ、放課後ね」
石田先生は、昼食を職員室で摂るので、宮下先輩より先に保健室を出て行った。私は保健室でお弁当を食べる。緊急の生徒が来たら、私がすぐ隣の職員室まで先生を呼びに行くことになっている。
私は先輩の前で食事をするのもあれかな、と先輩が保健室を出るのを待っていたのだが、先輩はなかなか出て行かない。
「俺も昼ここで食べて良いか?」
「えっ!?」
「教室遠いから面倒なんだよな。次体育だし」
先輩の教室は3年だから保健室や職員室からは一番離れた棟にある。しかも4階。保健室は1階だし、次の体育の運動場も近い。ついでに言うと購買も近い。
「お昼持ってないじゃないですか」
「購買で買ってくるわ。すぐ隣だしな」
やっぱり。職員室と購買に挟まれるように保健室はある。まあ、先輩の意見も納得だ。石田先生も、私の親友がお昼を一緒に食べようとやって来ても元気で健康な生徒が保健室でお昼を食べることを別に咎めない。人数が増えるわけでもないから大丈夫だろう。
「まあ、どうぞ。好きにしてください」
購買で焼きそばパンを買ってきた先輩と、私はお喋りしながら昼食をとった。男子にしては焼きそばパン一個なんて少食だなと思ったら、体育が持久走らしい。確かに、たくさん食べるわけにはいかない。私は運動が苦手だが球技は好きだという話をした。他にも先輩から委員会の話を聞いたり、私は社会が苦手科目だという話をした。
「日本史は年号を語呂合わせにすると良いぞ」
「よく言いますよね、それ」
でも私覚えられないんだよなあ、という話をすると、教科書の年号を見てノートに年表を書いてみるよう勧められた。
「年号も意識する癖がつくし、年号聞かれるより、前後関係とか、どっちの戦争が先に起こったか聞かれる問題とか多いからな」
先輩の解説になるほど、と納得した。日本史の先生が生徒指導の先生なので少し怖いという話をしたら、先輩は安曇先生の方が怖いと言い出した。
「いや、安曇先生は良い先生ですよ。この間も――」
教室復帰について10個以上提案をしてくれて、面倒見の良い熱心な先生だと話した。先輩曰く、釣り気味の目が怖いらしい。そこを意識した事は無かったので、次は見てみようと思う。
「立花とか石田先生は垂れ目気味だから話しやすい」
そんなことが影響するのか、としみじみしてしまう。よく見ると、宮下先輩は釣り目気味だ。
「ああ。だから、俺に話しかけてくる後輩ってあんまりいないんだけど」
先輩は私と最初に話した日のことを思い出したらしい。
「ただ保健室で会ったくらいじゃ、絶対後輩と仲良くなれるタイプじゃないんだよ、俺」
だからお前、ほんと物怖じしないよな、と先輩は笑っていた。
「じゃ、俺食べ終わったし着替えなきゃだから行くわ」
「あ、はい」
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