『信頼と憎悪』



「ぎぃっ、貴様ぁあ゛ぁ……!」


「ラヴェンダー、オレはお前に勝ったなんて思っちゃいねえ。 オレの方がお前よりプラスだなんて風に見下してもいねえ。 ただ、もう争いは終わりだ。 EXEとジョン・ドゥを止めなくちゃならねえ……」




 顔を押さえて歯ぎしりするラヴェンダーの前で、オレは握っていた拳を解いた。




「……ラヴェンダー、頼みがある。 お前も協力してくれ。 お前ほどの力があれば奴らを止められる。 あの夏休み、オレと『同化』したお前なら分かるだろ? オレが、『いつもの場所』や学校、クラスメイトたちをどれだけ大切にしているのか。 お前は非情で冷酷だが……、オレの考えの深くに触れて、知った、数少ない理解者でもある。 そして逆に、オレはお前がどんだけ強え奴なのか知ってる。 頼む、力を貸してくれ。 お前が必要なんだ……」


「何を……、言い出すかと思えば! 手伝え? 協力しろだと……! ゴホッ、ゴホォ……。 先程は学友を危険に晒しやがってとキレていたと言うのに、今度は手を貸せ? 随分と心変わりが激しいな……! 私を殴って気が晴れたか?」


「ああ、思いっきりぶん殴ったからな! だからもう、それでチャラだ。 いや、チャラに!」


「……なんて男だ。 貴様のエゴは……、身勝手すぎて阿呆らしくなってくる。 手を伸ばせば思った通りに何もかもが上手くいく、そう思っている奴の発言だ。 化け物め…………」


「お前に言われてたまるか!」


「……EXE様は、私を救ってくださった恩人だ。 あの方の執筆された小説が私の鬱屈とした『心』に作用し、結果は他責と憎悪の化身という暗い形にはなってしまったが……、それでも、生きる活力を貰った。 ……私はあの方に、あの小説の続きを書いてもらいたいのだよ。 その為に、これまで『少数派ルサンチマン』の潤滑油トルクとなってきた。 そんな私が、なぜ『特例』に協力しなければならない? さっさと、殺せ……! 必須カノンイベントの佳境、光と闇の衝突。 闇はヒーローの手によって破れ、脚本シナリオは最終頁へと行を移す。 貴様が私を殺せば……、脚本シナリオが進む。 それが運命の正規ルートだ……。 早く、殺せ……」




 ラヴェンダーは、自分が負けると知っていたのか?

 それとも、分かっていても己の力を信じた上で、自分が定めを捻じ曲げられる程の存在なのかどうか、試したかったのか?


 こいつの考えってのは、いまひとつ理解出来ない。分かってるのは……、マイナスで、孤独で、嘘つきで、残忍で……、夢想家だってことだけだ。

 オレはもっと知らなくちゃいけない。ラヴェンダーにとっての生きる意味、それがEXEが書いた小説って言うなら、その小説のどこが響いたのか、何が好きだったのか、感動がラヴェンダーの人格にどう影響したのか……、そんなこともさっぱり知らないオレが、責任もなく命を取り上げられるワケがない。そんな事をしていい、ワケがない。




「殺さねえよ、お前らの尺度で全部を語るんじゃねえ。 オレは人殺しなんてするつもりはない。 殺す奴のこれまでの人生、これから送るはずだった人生。 それと、そいつの周りにいる人間全部の想いを理解した上で、それでも殺す理由になるって思わねえ限りは! オレにはそんなことは出来ねえ。 ……きっと、今挙げた条件が揃ったとしても、何度も踏みとどまる。 それが人間だからだ」


「……優等生、ぶるな…………。 先程までの殺意はどうしたというのだ……?」


「知らねえ! 何言われたって、オレはお前を殺さねえし、『少数派ルサンチマン』の計画だって進ませねえ! オレは欲張りなんだ! 全部上手くいくハッピーエンドがお好みなんだよ」


「……フッ。 ハッピーエンド、か……。 まだ、青いな。 青すぎるな、『特例』。 自分にとってのハッピーエンドは……、誰かにとってのバッドエンドに値すると知るのは……、まだ先か……」




 呆れ返り、薄い息を続けるラヴェンダーの後ろの方から人型のシルエットが接近する。

 まるでオレ達の争いが終わるまで出方を待っていたみたいに現れたのは、麻袋を頭からかぶったジョン・ドゥだった。




「おーい、ラーヴェラヴェラヴェ〜。 ダメじゃんかよ、ちゃんと殺されなくちゃ。 俺ってば言ったよな? 次の必須カノンイベントはヒーローの手で悪党がぶっ倒される展開だってさ。 このまま瀕死で放置じゃ殺されたことになんねえってー」


「ジョン・ドゥ……! 『オカ研』の皆はどうした!?」


「そっちはノープロブレム。 俺を誰だと思ってる? 次の『主人公』だぜ? ちょちょいのちょいで全員コテンパンよ」




 ……今、なんて言った?

 オカ研の皆がもう倒されたって?

 あんな化け物みたいな力を持ってるヤツらが、一瞬で?


 ラヴェンダーとの戦いに必死でいつの間にか大移動しちまってたせいで、あいつらの姿が見えねえ。

 ジョン・ドゥが嘘をついてると信じるしかないが……。




「実の所、俺はオカ研よりアンタの方が心配だったね。 雑魚過ぎて殺す価値も見出されず、適当に放置されてたら可哀想だなって思って見に来てやったんだ。 案の定、ダメダメだったみたいだな?」


「貴様ぁ……!」


「あー、そういうのいいから。 もうHPミリなのに噛み付いてくんな。 こりゃあ、が必要みたいだな?」




 ジョン・ドゥが自分の頭から力任せに麻袋を引き抜くと、その下の顔には白いペストマスクが装面されていた。

 ラヴェンダーと、同じ。色だけが2Pカラーのそれのアイレンズが紅く煌めく。


 直後、ラヴェンダーが強く咳込み始め、苦しみだしたかと思えば、肉体の内側から飛び出した大きな蕾が服を破って飛び出し、胸部で大きな花を開いた。




「ジョン・ドゥ! お前、ラヴェンダーに何を……!?」


「こいつ、俺の言うコト全然聞いてくれなくてさ。 こうやって体内に直接植物を生やして、血管も筋肉も制御奪って強制してんだよ。 いや、っつった方が良いな? そこの心臓から生えた花はアンテナ代わりだ。 オレからの指令を受け取るための、な」


「お前……! 仲間を人形みたいに操ってでも、オレと戦わせて殺させる気かよ?」


「うんにゃ、そうしようと思ってたんだけどさァー。 予想以上にラヴェンダーの衰弱が進んでるし、ヒーローは何故か闇堕ちモード切れちゃうしで上手くいかなさそうなんだよなー」




 どうしよっかなー、と頭を抱える素振りを見せるジョン・ドゥに対して、オレは冷ややかな目で応える。




「……悩んでる振りはやめろよ。 お前が嘘吐きで、仲間がどうなっても何も思わねえ野郎だってのは十分に分かってる。 プランBを用意してんだろ? 時間稼ぎして何を待ってやがる!」


「…………ははは」




 どうやら図星だったらしく、言われた通りにジョン・ドゥは悩む振りをやめた。代わりに、まるで財布でも出すような自然な動きで懐から拳銃を取り出してこちらへ向ける。




「っ……! 手段は選ばねえってか? だけどな、そんなので脅されようとオレはやらねえ。 お前らの計画通りにはさせねえ!」


「……だーよな。 しゃーない、お前に言われた通りプランBといこうか?」




 ジョン・ドゥはそう言って拳銃を下げ、山彦やまびこを誘うみたいに片手を頬にあてて、




「ああ! このままだと計画失敗だ! 悪は滅びず、今後も身勝手な虐殺を繰り返すだろう! 誰か助けて! ラヴェンダーの息の根をここで止めてくれ! 助けてくれー、ヒーロー!」




 と、明らかな棒読み三文芝居で声を上げた。


 ジョン・ドゥはどうしてか、オレをヒーローと呼ぶ。だが、今の救援要請は明らかにオレ向けのものではなかった。

 きっと、あの男だ。一切の主役になりたくて、英雄として讃えられたくて、自称ヒーローを名乗り身勝手に戦う、あの男を呼んだのだ。





「応ッッッッ!!」





 鉄の扉を蹴り破って、ヒーローに助けを求める声に呼ばれて彼はやってきた。

 烈火のマフラー、黄金のマスク、ボロボロの黒い鎧。先のピュシスとの戦いで満身創痍となったはずの彼は、残り少ない活力を振り絞って豪快に登場して見せた。


 植物に身体を操られたラヴェンダーの腕が小さな種子をマシンガンの様に飛ばして迎撃しようとするが、ディオは近くの柱を蹴って跳ね、容易に回避する。





「ヤベー攻撃が来るぞ、避けろー!」




 植物のツタがラヴェンダーの砕けたペストマスクを拾い上げて、顔に強引に縫い付ける。

 アイレンズが紅く煌めき、操り人形となったラヴェンダーの背に負の念を固めた翼を再び呼び戻す。




「そいつは触れただけで人を殺せる悪魔の力を持ってるぜ! 倒すなら遠距離だ! 一撃で片付けてくれーっ!」




 どうしてディオにラヴェンダーを殺すように仕向けようとするのか、全く理解が及ばなかった。

 だが、あのジョン・ドゥが何の策もなしにそんなことをするハズがない。




「駄目だっ、やめろディオッッ!」


「『対悪党用浄化光線銃イービル・デストロイヤー』ッ!

 ――――悪、成敗ッ!!」




 ディオの腰から取り出された二丁の鮮やかな拳銃。その引き金が、躊躇なく引かれる。

 銃身の爆裂と共に発射された弾丸は、吸い寄せられるようにラヴェンダーの額に命中。

 縫合されたマスクを再び散らし、植物の塊と化した肉体が鮮血を吹きながら倒れる。




「なぁ、ヒーロー。 どうしてディオなんていう身勝手な暴れ馬をこの俺が放置してたと思う? ……そいつが鬼札ジョーカーだからだ。 お前はこの世界の『主人公』で、俺はまだ一介の社会不適合者、社会の廃棄物に過ぎない。 もしお前が『主人公補正』を活用して運命を捻じ曲げるなんて芸当に成功し、自分の意思で必須カノンイベントから脱しようとしたら俺なんかにゃあ止める術はない。 だが……、


「……ディオが、二人目の『主人公』だって言いてえのか!?」


「ノーノー。 『主人公』はひとつの世界、ひとつの脚本シナリオに、たった一人しか存在できない。 だからこそ誰もが羨むんだ。 だがディオは今、一時的に『主人公』と同等の役柄を獲得している。 ピュシスとの戦いで朽ちゆく肉体を強引に動かすための強壮剤として使った奇策……、ディオは今もまだ、! つまり、擬似的ではあれど『主人公』が悪を殺したという図式は成立しているんだよ! ディオを鬼札ジョーカーと呼んだのはそれが理由だ! ディオはこの物語せかいの重要人物が欠員した時の補充要員ワイルドカードになれるッ! イイ役者だぜホントになぁ!」




 ディオは腰から追加のカラフル銃を引き抜き、ジョン・ドゥへと向ける。




「我は、我の為に人を救う。 ヒーローとして認められ、英雄として讃えられ、全ての主役となるためにッ! 我をヒーローと呼び、崇め、奉り、信じる者の声は全て聞き入れよう。 しかし、物事の善悪を決めるのもまた我だッ! ジョン・ドゥーッ! 我をヒーローと認めたばかりのファンを失うのは惜しいが、それでもお前は成敗するに値する存在だと我は判断したぞッッ!!」


「だっひゃー。 分かってねえなあ『主人公代理』サンよ。 辿




 ジョン・ドゥは2Pカラーのペストマスクを外し、大口を開いて嘲笑を掲げる。

 その声帯を今にも潰そうと、ディオが二丁を発砲した。




「言ってんだろ……、『破壊衝動ゲームオーバー』だってなあッ!」




 直後、ジョン・ドゥの両眼の周りに黒ずみが現れる。オレにはそのアザの正体が何なのか、すぐに分かってしまった。


 ジョン・ドゥは余裕そうな顔で、ディオの放った弾丸を両手を広げた胸で受け止める。

 予想の通り、弾丸は肉を通らず。胸の上で砕けて散り去った。




「お前、オレの権能を……!」


「絆の権能による、擬似ニア破壊衝動ゲームオーバー』。 友達として明確に関係を結んだ相手の能力を劣化コピー品質で扱える。 例え『主人公』だって例外じゃないんだぜ?」




 あの時……、あの夏、御山弟に連れられたあの廃墟で出会った時から、こいつはオレを利用するための算段を立てていたんだ。

 協力する振りで信頼を得て、オレの権能を盗用し、その果てには『主人公』の座を奪うために。






 "じゃあゆっくり仲良くなるとしよう。 ヒーロー、絵描きちゃんの隣座らせてくんね? こっち移動してくれよ"


 "いや……、こいつも嫌がってるし……"


 "シュレちゃんの座る場所もないしさー、頼むぜ。 この子の座る場所確保のためにもそっち座らせてくれよ〜"






 ジョン・ドゥは最初から……、今この瞬間まで、全て計画の内だったんだ。

 ただの嘘吐きではない。計画的で利口な二枚舌だ。人を騙し、喰らう蛇のような人間……!






「あァー、ディオ〜! 十年も失踪してたお前を見つけて街に降りてきた時の最初の食事メシ、憶えてるか? あの死人が出そうなレベルの濃厚豚骨ラーメン! 最高だったよなぁ! あの味、たまに思い出すぜ。 また食いにいきてーってな。 でもまあ、




 ジョン・ドゥは持っていたピストルを急に構えて、警告もなくディオに二、三発ぶっ放した。

 運悪くその内の一発が鎧の剥がれていた左肩に直撃し、ディオは軽く仰け反る。




「頭狙ったんだけどな、やっぱムズいねコレ。 日本じゃ満足に射撃訓練もできないし上達の仕様がねえや」


「この程度の痛みッ、十年の山篭りに比べれば……!」


「流石は野生児。 鍛えられた肉体は伊達じゃないねえ。 急所の外れた弾丸一発くらいじゃ死なねえわな。 でも! ところがどっこい残念賞。 撃ち込まれた弾丸は、ワンショットワンキル確定の即死チート弾でした〜」





 ぼどり、と。

 水飴の塊が溶けるみたいに、ディオの左腕が自然に抜けて床に落ちた。

 老い果てた樹木が森の奥で誰にも知られず静かに倒れるように、肩は血液すら噴かず欠損を受け入れている。





「なッ……!」


「お前の老化の代償が来るとこまで来ちまってたワケじゃないんだぜ。 俺の撃った弾が、お前の肩の組織を尽く溶解させたってだけだ。 もうおっちんじまったが、オル・コープス・デリッチっつー友達がいてな? そいつの権能を使って生成した濃硫酸! そいつをジョゼフィーヌの権能で弾丸に溶接、封入した特別製のホローポイント弾だ。 当たったら最後、体内を溶かす毒が肉の中で撒き散って死ぬ。 上手く生き残っても半死半生、永久的な障害に悩んで生きてくことになる。 ま、つまりはどう足掻いたってリタイアってこった」


「馬鹿、なッ……!」




 目立った出血はないが、その損傷は明らかだった。

 ディオはその場で膝から崩れ落ち、受け身も取らず前のめりにぶっ倒れてしまう。




「さてヒーロー、次はお前だ……。 って言いてえトコだが、破壊の権能が邪魔で殺しきれねえだろうからいいや。 時間かかるのは好きじゃねえ。 またな!」




 もう何の未練も、懸念も、やり残しもない。

 そんな顔でジョン・ドゥは立ち去る。


 残されたオレは……、呆然とするしかなかった。

 敵が味方で、味方が敵で。

 敵同士が殺しあって、トドメを刺しあって。

 そして……、ここには血溜まりだけが残った。




「……どうして、こうなった?」




 何が悪かった?

 オレが、悪かったのか?

 オレが、ここに来たから皆死んだのか?




「何で……、どうして…………?」




 『主人公』って、何なんだよ。

 なんでオレがそんなモンになってんだよ。

 オレは、こんなハズじゃなかったのに。




「どこで……、何を間違えた……?」




 オレは……、記憶を取り戻したかった。

 そして、平穏という青春を送りたかった。

 それだけだったって言うのに。





「キ……、ラ…………!」


「…………ラヴェンダー?」




 オレを呼ぶか細い声の元へ駆け寄る。

 枯れかけた植物ツタが褪せた紳士服の上から全身をびっしりと覆い、既に死んでいるとしか思えない光なき眼を少しずつ動かし、オレを追うラヴェンダーの姿がそこにあった。




「お前、まだ息があったんだな……!」


「……よく、聞け」




 半刻もしない内に死んでしまいそうな様子で、ラヴェンダーは最後の生気を絞り出して語る。




「…………今すぐ、自害、しろ」


「お前……、この期に及んでそんなことを……!」


「ちが、う……。 お前に、私の権能で新型の『黄昏症候群トワイライトシンドローム』を、感染させた」


「何だと……!?」




 ラヴェンダーの権能。

 対象を自作の病に感染させる能力。

 発動条件は、相手を睨み続けること。


 先程の戦いでは、奴からの羽根ミサイルを避けるために何度も柱の裏に隠れたりしていたから発動できなかったのだろう。

 しかし、植物に乗っ取られ床を這い、ただ見ることしか出来なかった今だから集中して発動できたのかも知れない。




「……『黄昏症候群トワイライトシンドローム』のことは、お前が一番よく知っている、だろう……。 今死ねば、時間が巻き戻る。 そこの弁慶が打たれる前に戻れるはずだ……。 そのために、自害しろ」


「お前……!」


「……私は、EXE様の忠実なる下僕。 しかし……、ジョン・ドゥ……。 あの男の計画の歯車にされるのは……、真っ平、だ……」


「………………、」


「急げよ、たのむ、から……」





 それからもう、ラヴェンダーの眼は動かなくなった。

 最後にラヴェンダーの遺していったリトライの機会を、無駄にするワケにはいかない。


 オレはラヴェンダーの目蓋を閉じさせた後、すぐに気絶したディオの元まで寄って腰から残っているカラフル拳銃を引き抜いた。

 その銃口を、こめかみに当てる。



 ジョン・ドゥの計画を止める。

 そして、こんな未来ひっくり返してやる。

 ハッピーエンドが待ってるかどうかなんて分からねえが、それでも、少しでもいいエンディングに到達できるように足掻いてやる。






「……証明してやるよ、ラヴェンダー。

 どんだけ上手くいかなくたって、

 どんだけマイナスが重なったって、

 不貞腐れずに足掻いてりゃ、

 少しはマシに笑える日が来るってことを!」






 恐怖はなかった。


 ラヴェンダーのことは理解できないし、あいつの思想に賛同することも出来ない。だが、信頼するに足りえる負の念を持っている。

 死の間際、ラヴェンダーはジョン・ドゥを心底から恨んでいたハズだ。その負の念こそが、オレがこいつを信じる最大の理由になる。



 引き金を、引く。

 破壊を起こさないよう、意識しながら。





「『黄昏症候群参型トワイライトシンドローム タイプスリー』。

 お前を信じるぜ、お医者様……!」






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る