第205話 コンテストの結果

「それでは結果を発表いたします!」


 少し投票時間を置いたのちにそうやって会場中にアナウンスが鳴り響く。美少女コンテストでは三位まで決定するらしいため、リア様の名前が最初に呼ばれないことを願う。


「まず最初はこの方! あの流麗な動きは見る者を魅了しました!」


 流麗な動きだと!? まさかリア様か? そんな、そんなことは……。


「持ち前の美貌も合わせ、メルディン王立学園に置いて三番目に美しい女性の名は、サニー・ファイス!」


 司会のその言葉に会場中が熱狂し、俺はホッと胸を撫でおろす。良かった。いや、信じていないわけではないが、如何にリア様といえど交友関係の狭いことが仇になるかと思ったのだ。美しさ勝負では不安になることはないが、人気勝負となると話は別なのである。


 サニーと呼ばれた藍色の髪の女性が瞳に薄っすらと涙を浮かべながらスポットライトが当てられている場所へと移動する。そして、司会から花でできた首飾りとマイクを渡される。


「あ、ありがとうございます。まさか私が三位に選ばれるとは夢にも思わなくて……」


 そうして少しサニーからの言葉が語られた後に、マイクが司会へと返却され、二位の発表となる。


「続きまして二位の発表でございます。ブロンドの美しい長髪。そして何より、その整った容姿で会場中を魅了いたしました!」


 ブロンドの美しい長髪に整った容姿だと!? おいおい、今度こそリア様じゃないか? ブロンドヘアに整った容姿何てそれ以外考えられないぞ!


 見事に司会の読み上げる言葉に翻弄されながらも注意して続きに耳を傾ける。


「伯爵家のご令嬢! ベニータ・バジェスタ!」


 またもやリア様とは違う名前が告げられる。さっきからリア様の特徴に合致する人が居過ぎじゃないか? これじゃ心臓に悪い。


「リアの名前まだ呼ばれないね。もしかして一位かな?」


「そうに決まっている。あれだけの容姿にあれだけの演武を披露したんだ。流石に一位はリア様だろう」


 半分安心、半分緊張。そんな中で二位の女性が三位の女性の横に当てられたスポットライトへと足を運び、花の頭飾りを着けてもらってマイクを持つ。


 そうして先程の女性と同じく胸中に秘めた緊張と選ばれた喜びとを爆発させながら語り始める。更に熱量のこもった司会の振りに豪華な景品を経てとうとう第一位の発表へと移りゆく。


「それでは皆様お待ちかねの第一回メルディン王立学園美少女コンテスト第一位の発表になります。今大会、第一位は!」


 司会がそう振った瞬間、照明が今回の出場者たちを順番に照らしていく。照らされたかと思えば通り過ぎて違う人が照らされる。その速さが段々と速くなっていき緊張感が高まっていく。


「登場した時の華々しさ、そして自己アピールの圧巻ぶりには会場全体が心を震わせました! リーンフィリア・アークライトォォォッ!!!!」


 今までで一番大きな司会の掛け声とともに全ての照明が一点に集中し、その顔が照らし出される。会場が揺れるほどの歓声に包まれる中、当の本人は困惑気味になりながらも前へと進み出る。


「ねえ、グランプリ、リアだってさ!」


「私と一緒に演武の練習をしたんだから当然」


「リアさん、物凄く綺麗でしたもんね。正直、最初からそうじゃないかと薄々感づいておりました」


「我もだぞ!」


 カリン達が口々にリア様を称え合う中で俺はこの素晴らしい瞬間を瞼の裏に焼き付けるがごとく、その光景を食い入るように眺める。流石はリア様だ。分かっていたこととはいえ、我が主の成功に喜びを禁じ得ない。


「今のお気持ちは?」


「このような光栄な賞にぽっと出の私が選ばれるなんて思ってもいなかったので正直驚いています。皆様には感謝してもしきれないです」


「リーンフィリアさんのお友達も見ていらっしゃるとのことですが」 


「う~ん、それに関しては恥ずかしいですね。でもグランプリを取れたことは学園での貴重な思い出となりました。こんな私を選んでくれた皆様、ありがとうございました」


 それから多くの歓声に包まれる中、美少女コンテストは終わりを迎えるのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る