第163話 工房
「一体どこに繋がっているのかしら?」
あの警報以来、電気が通ったのか、既に光の能力が要らないほどにまで明るくなった廊下を歩いていく。先程までの廊下よりは狭いその廊下にはまばらに部屋が存在している。ただ、どの部屋にもめぼしいものはなく、ただの研究室なんだな、といった感じであった。
「わっ、なにこれ!?」
リア様が驚いた物。それは謎の液体が充満した中に魔物の死体のようなものが保管されていたからだろう。
「魔物を使った研究室のようですね」
「何であなたはそんなに冷静なのよ」
「こういうことは慣れておりますので」
寧ろ古代文明の卓越した技術が隠されているんじゃないかと若干ワクワクしている。だが、危険なことは変わりないため慎重に奥へと進んでいく。
「何かしらこれ」
「あまり意味がある物のようには見えませんけど」
リア様が次に指差したのは黒く大きな球体に包まれた謎の少年の像。一見すると、普通の少年のように見えるが、顔は何故か悲しげな表情を浮かべている。ただの飾りなのかそれとも何かしらの意図があって置かれているのか定かではない。
「この先が最後の部屋ね」
「そのようですね」
何のことはない。先程までの部屋と同じ形をした扉があるだけだ。そう思ってリア様と共にその扉の前に立つと、スーッと自動で扉が開いた。
「へえ、こんなに技術力があったなんて驚きね」
「明らかに今の私達よりも高度な文明を持っていたんですね」
それなのに滅んだ。これほどまでに技術力を以てしても抗えない程の何かが起こったのだろうか。それとも能力が進化して要らないものと廃棄されたのだろうか。知れば知るほどに謎が深まっていく。
そうして自動で開く扉を通り抜け、中へ入ると、ここに来て初めて見覚えのある物が目に入る。
「工房のようですね。それもかなり大規模な」
部屋全体が工房となっており、あちらこちらに武具を作ったであろう残骸が散らばっている。何故これが工房であるのかが分かったのか。それは俺も不思議な事なんだが、ファーブルさんの工房にあったものと
「懐かしい」
見覚えのある機械にそっと触れる。ファーブルさんの工房は魔神族によって焼き払われ、使えない状態になってしまった。それをもう一度拝むことができるとは。
「こっちはこれで終わりね。残りの人達がどんな感じなのかを聞きたいんだけど」
リア様がそう言った瞬間、コミュニティカードのバイブ音が部屋中に響き渡る。
『クロノー、そっちはどんな感じ?』
「カリンか。こっちは武具の工房があったくらいだな。そっちはどうだ?」
『こっちは恐ろしい程に何もなかったよ。強いて言えば台座の上に置いてあった変な鉱石くらいかな』
変な鉱石か。武具職人見習いとしては好奇心がそそられるものだが。
『あっ、他の4人とも繋げるね』
「頼んだ」
それから少ししてからガウシアとクリスのコミュニティカードに連絡が通じる。ガウシアが見つけたのは本棚で一杯の書斎、クリス達が見つけたのはこの建物には似つかわしくない玉座の間のような豪華な部屋だったという。
『なんだ。結局お宝は無しか』
『いや、古代文明の本というのはある種宝みたいな物さ。非常に興味がそそられるよ』
「クリスの言うとおりだな。それじゃあ一回皆でガウシアの所で集まるか」
そう言って通話を切る。
「何て言ってた?」
「ガウシア達が書斎を見つけたらしいのでそこに集まることになりました」
「書斎ね~。まあ他に何も見つかってないなら行くところはそこしかないわね」
そうして工房の外へ出ようとすると、先程自動で開いたはずの扉が閉まったまま動かない。そうして入り口でも聞いた警報音が部屋中に鳴り響いた。
「まあ、出るよね」
天井から先程と同じ形の機械が降ってくる。しかも、その手には様々な武具を握っていた。
「リア様、下がっておいてください」
俺は一歩踏み出して、破壊の力を身に纏う。
「ブレイク」
空間すらも歪むほどの破壊の衝撃が機械たちに襲い掛かる。10体ほどの機械を消し飛ばすも、一体の機械の前でその勢いを止める。あいつが止めたのか。
そこには他とは違って黄色い見た目をした機械が一振りの長剣を構えて立っていた。
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