第148話 王城訪問

「ガウシア殿下に会いに来た?」


「はい」


 どこか威圧的な態度の衛兵に対してリア様が問いかける。今回、ガウシアの訪問に当たってはアンさんは来ていない。友達水入らずで話してきなさいとのことだからである。ただそのせいでゼルン王国の作法が分からず少し戸惑ってしまう。


「よく分からん奴がこの国の王女に会えるわけがないだろう。帰った帰った」


「一応、ガウシアの友達の証拠としてメルディン王立学園の学生証も持っているんですけど」


「そんなもん証拠にはならん」


 頑なに跳ねのけらる衛兵に俺は少し苛立つ。どうしてさっきからこいつはこんな威圧的な態度なんだ? それもリア様に対して。こらしめてやろうか。


 しかし、これは計算外だ。有名人であるカリンやライカが居れば何とかなるのではないかと密かに思っていたが、現実はそんなに甘くはなかった。


「どうする? 全然通してくれなさそうだよ?」


 衛兵に追い返されて一旦その場から離れて作戦会議を始めているとスッとライカの手が挙がる。


「私のギルドカード見せてくる」


 そう言うと懐から一枚の金色に光り輝くカードを取り出す。紛れもないSランク冒険者であることの証だ。


「それなら行けるかも。ライカ、お願い」


「任せて。これで入れなかったところはない」


 自信満々に向かうい、数分後に戻ってくる。


「無理だった。でも事情は教えてくれた」


「なんて言ってたの?」


「ガウシア、病気だって」


「「「病気!?」」」


「うん。だから身内とか近しい人しか面会はできない」


 ライカのまさかの発言に全員が驚く。そりゃそうだろう、少し経過しているとはいえそれでもつい最近までは元気に学校に通っている姿を見ている。こんな短期間で病気にかかるなんて。


「そっか。だから通話にも出なかったのね」


「うん。なおさら心配だけど仕方ない」


「友達くらい面会させてくれてもいいのにな」


 リア様とライカは納得するもカリンは一人、不満を口にする。


「まあ感染する病気だとしたらうつすかもしれないからじゃないか」


「別に気にすることないのに」


 当初の目的であったガウシアと会うという話はなくなったこととガウシアが病気にかかっているという情報により、どんよりとした空気が流れる。


「まあ、無理なものは無理ですし残りの時間、せっかく来たんですからゼルン王国を楽しみましょう」


「あらあなた達」


 俺が沈み切った全員の気持ちを盛り上げようとしたとき、不意に後ろから声がかかる。


「あなたは闘神祭のときの」


 そこにはフルーツで一杯のバスケットを持ったヘルミーネ・アーレントが立っていた。


 ♢


「へえ~、よくもまあ城に無策で突入しようと思ったわね。殿下の護衛隊隊長である私が居なきゃ入れなかったわよ?」 


 そう、まだなってもないのに護衛隊隊長と名乗るヘルミーネのお陰で俺達は城に入ることが許可されたのだった。


「うぅ、仰る通りです」


「まあでもちょうど良かったわ。私も今来たところだから。殿下も皆さんに会いたがっていらっしゃったから」


 ヘルミーネの言葉からガウシアが意識がないような危険な状態にはないということが分かり、ホッとする。コミュニティカードにすら反応がないってのは単純に通話が体の毒になるかもしれないから辞めてるだけってことなんだな。


 それからヘルミーネの意見でまずは女王陛下に会う事となる。


「こちらにいらしております」


 そう言われたのは玉座の間の前ではない部屋の前であった。公的な面会という訳ではないため、普段女王陛下がいらっしゃる場所へ挨拶をするということらしい。


 ヘルミーネがドアを4回ノックすると、中からどうぞ、という声が聞こえてくる。


「あら、今日も来てくれたのねヘルミーネ。それに今回はお友達もたくさん」


「「「「お邪魔してます」」」」


「うふふ、ゆっくりしていってね。リーンフィリアさん、カリンさん、ライカさんにクロノさんね? 娘からよく話は聞くわ」


 相変わらず女王陛下は気さくな感じで相手してくれる。


「今日もガウシア殿下のお見舞いに来たのですが、こちらの方々も共に伺ってもよろしいでしょうか、陛下?」


「ええ、大丈夫よ。寧ろありがたいわ。ガウシアも皆には会いたがっていたから。あっ、ちょっと待ってて。私もいっしょに行くわ」


 こうして女王陛下とともにガウシアの部屋へ向かうことになった。

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