第十八話 沸石 前編

 表の通りから格子戸を抜けた先、通り庭に面した板戸が一部だけ開いていた。中は店――というより、倉庫のようになっているその場所に、誰かがいる。

 白い着物に、透き通るような髪。雑多な中にあって、どこか整然とした――そんな印象を抱かせた後ろ姿は、この店でよく見る人たちの誰でもないだろう。かといって、この静けさなら石英でもなさそうだ。

 そこにある人影は、その場でただ静かに正座していた。まるで瞑想でもしているかのように。その姿に目を奪われていると、黒曜石がふいにこう声をかける。

沸石ふっせきか」

 花梨にとっては、初めて聞く石の名だ。しかし、沸石はこちらに気づいているのかいないのか、ずっとうつむいたまま。

 かと思えば、少し遅れて聞き覚えのない声がする。

「何だ……黒曜石。気が散る」

「すまない。沸石。戸が開いていたものだから。槐はいないのか」

 黒曜石はそう答えた。

 どうやら、今のは沸石の声だったらしい。しかし、それでも彼は、身じろぎもせずにその場でじっとしている。気になってよく見てみたところ、沸石の正面には何かが置かれていることに気づいた。

 白く光沢のある石と、もうひとつ。あれは確か――

 沸石はゆっくりとこちらに振り向くと――それでも、その目は伏せられていた――こう答える。

「槐なら、先ほどまで……そこにいた」

 と沸石が話しているうちに、当の槐とそれにつき従う桜が姿を現した。

「あ。花梨さん。すみません。急に電話が鳴って。さっきまで、ここでお待ちしていたんですけど」

 花梨を目にするなり、桜はそう声をかけた。そのとなりで、槐は花梨の左手へと目を向けている。

「あれから、傷はどうですか?」

「もうだいぶよくなりました」

 槐の問いかけに、花梨はそう答えた。槐が気にしたのは、かんかん石の呪いで負った傷のことだろう。

 それまで治る様子がなかった傷も、約束の百日目が過ぎてからは、普通の傷のように治っていった。血が止まらない、というようなこともなく、包帯も取れている。少しだけ跡が残っているが、これもそのうち消えていくだろう。

 しかし、花梨が気にしていたのは傷のことではなく、むしろその原因となった――かんかん石の方だった。沸石の前に置かれている石。あれは、やはり。

 花梨が見ているものに気づいたのか、槐は戸の隙間から中の様子をうかがうと、こう言った。

「彼は沸石。今はかんかん石に残る呪いの影響を取り除いてもらっています。それが彼の力で……浄化――というと、わかりやすいでしょうか」

 しかし、その言葉には、すぐに沸石が反応した。閉じていた目をわずかばかり――ごく薄く開けて、ゆるゆると首を横に振っている。

「私の力の本質を表すには、その言葉はあまり適していない。呪いとは――穏やかな海に嵐をもたらすようなもの。嵐がおさまっても、波はしばらく荒れる。波は、起こすことよりも静めることの方が難しい。それを助けるのが私の力」

 槐は彼の発言にうなずくと、あらためてこう話し出す。

「沸石というのは、鉱物のグループ名です。天然のものだけで九十種類近くあり、さまざまな色や形を持つのですが、白あるいは無色の石が多いでしょうか。英語名はゼオライト。ギリシャ語で沸騰する石という意味の言葉から。加熱すると含まれる水が分離して、沸騰しているように見えることからこの名がつきました」

 では、かんかん石のとなりに置かれている、白く輝く石こそが沸石なのだろう。それを前にして、沸石がまるで祈りを捧げるようにしていたのは、呪いを静めるためらしい。

 槐は続ける。

「沸石は結晶の構造上ごく小さな穴を持つのが特徴ですね。石の性質を生かして、有害物質の除去、水質や土壌の改良など、さまざまな用途に利用されています」

 なるほど、と花梨は相槌を打つ。石それ自体の性質は、おそらく彼らの特別な力にも通じている。槐が浄化と言ったのも、このことを思い浮かべていたからだろう。

「今までの石も、こうやって?」

 花梨がたずねると、槐はうなずいた。

「そうですね。呪いや怪異といったものは、彼の言うとおり、荒れた海のようなもの。しかも、その波は条件によっては悪化する。逆に相性がいいと――先日の鶏冠石のように、うまく打ち消すこともできます」

 槐の言葉が、花梨の記憶の何かに引っかかった。しかし、そのもやもやがはっきりと形になる前に、ふと桜が口を挟む。

「ところで、槐さん。こんなところで立ち話をするのはどうかと思うんですけど。結局、何だったんです? 沸石さんがいるのに、急にここを整理するとか言い出して」

 その言葉に、花梨はあらためて板戸の隙間から店の中をのぞいた。以前も、ここを片づけたい、というようなことを言っていた気がするが――見る限り、そちらの方はあまり進んではいないようだ。

 同じように店の方を気にしながら、槐はこんなことを言い出した。

「いや――実はひとつ、鷹山さんにご提案がありまして」

「提案、ですか?」

 花梨は思わず首をかしげた。槐はこう続ける。

「確か、昨年の火事で、アルバイト先が営業できなくなってしまったとか。もし、よろしければ、うちでアルバイトとして働いてみませんか?」

「え?」

 と返したのは、花梨ではなく――桜だった。

 桜は槐の発言に心底驚いたように、口をあんぐりと開けている。どうやら、この提案を事前に聞いていたわけではないらしい。

 しばらくぽかんとしていた桜だが、それがようやく飲み込めた頃になると、慌ててこう返した。

「いやいや。槐さん、何を言っているんですか。うちに人を雇うほどの仕事なんて。花梨さんの方が困ってしまいますよ」

 槐は軽く苦笑している。

「前々から考えてはいたんだけどね。店の方が――まあ、手狭になっているだろう?」

 手狭、というには半分以上は足の踏み場もないようだが――花梨も桜も、そこはあえて指摘しなかった。そんな中で、沸石は淡々とその場に座り続けている。

 槐はその現状を特に気にする様子もなく、こう続けた。

「最近は、いろいろなところでフリーマーケットなどが開催されているようだから、整理して、欲しい人に譲ってはどうかと」

 それを聞いた桜は、納得したような、していないような――そんな、何とも言えないような、うなり声を上げる。

「な、なるほど……確かに、柾さんがどこからか、ほいほいもらって来るものだから、増える一方なんですよね……でも、ですよ? 働いていただくからには、お給金が必要なわけですし。すぐに売れるわけではないんですから――」

「わかりました。その仕事、やらせてください」

 桜の言葉をさえぎって、花梨は槐にそう言った。桜は驚いた顔をして、花梨のことを見返す。

「いいんですか? 花梨さん」

 そうたずねてくる桜に、花梨はうなずいた。そして、あらためて槐に向き直る。

「アルバイトは、もともと姉の捜索資金を貯めるつもりで始めたんですが……今はその点で困ってもいませんし。いつもお世話になっていますから。お手伝いできるなら、ぜひ」

 うなずき返す槐に対して、桜はそれでも浮かない顔をしている。

「知りませんよ。花梨さん……」

 そのとき、その場に姿を現したのは椿だった。話の途中に顔を出したせいで事情がわからずきょとんとしている椿に、桜はさっそくこう伝える。

「椿ちゃん。花梨さんは、この店でアルバイトするそうですよ」

「は? アルバイト? ここで?」

 椿はあからさまに顔をしかめている。そして、花梨のことをじっと見つめたあと、肩をすくめてからこう言った。

「正気の沙汰じゃないと思うけど。まあ、いいんじゃない。好きにしたら」

 椿にあっさりそう言われたので、桜はしぶしぶ引き下がった。アルバイトの詳細はまた後ほど――ということになったので、花梨は椿に向かって軽く目配せする。

 それを見て、桜はああ、と思い出したように声を上げた。

「今日はこれから、椿ちゃんと一緒にお出かけですよね。どちらに行かれるんでしたっけ」

 無言で格子戸の方へ向かう椿を追いかけながら、花梨は桜にこう言った。

「柚子さんが作品を販売されてるって言う――アンティークショップに」

 そうして、槐と桜に見送られ、花梨と椿はともに店をあとにした。




 入り組んだ細い坂道をいくつも登って、花梨はようやく、その店へとたどり着いた。

 そのアンティークショップがあったのは、神戸の街外れ。山の斜面に、建物がいくつも建ち並んでいるようなところだった。

 柚子に槐の店を紹介したのは、どうもそのアンティークショップの店主らしい。槐もそれは了解していたようだし、その人とはおそらく知り合いなのだろう。いったいどんな人物なのか――

 そんなことを考えながら教えられた道順のとおりに進んで行くと、目の前に現れたのは行き止まりの路地。周囲を建物に囲まれた、ぽっかりと空いた広場のようなところに、その店への扉はあった。

 古めかしいその扉には、磨りガラスの小窓がついているだけで中の様子をうかがい知ることはできない。扉の両側にある鉄格子が嵌められた窓もまた、厚いガラスのせいか、その先を知ることは難しいようだ。しかし、その存在も相まって、周囲はどこか不思議な空気に満ちている。

 どうやら、ここが目的地であることは間違いないらしい。思いきって扉を開けると、高く澄んだ音を立てて、ドアベルが鳴った――

「いらっしゃい」

 という声は、奥から聞こえてきたのだろうか。店内の見える範囲に人影はない。

 店の中は雑多な物であふれていた。調度品に装飾品に――その他にも、細々とした品が無秩序に、しかし整然と置かれている。

 いらっしゃい、という呼びかけはあったものの、誰かが出てくる気配はなかった。柚子の姿もない。おそるおそる中に入って行き――もちろん、椿もうしろをついて来る――並べられた品々をながめているうちに、花梨は棚の上に置かれている青い壷に目を奪われた。

 それは、かすかな光を受けて、奇妙に輝きを反射している。ただ光を返すわけではなく、水の波紋のようなものが表面に揺らぎ、たゆたっていた。興味を引かれて壷の中をのぞき込んでみたが――中に水が入っているわけではないようだ。

 不思議な現象に魅入られていると、店の奥から見知らぬ女性が姿を現した。

「何かお探しかな?」

 年の頃三十代前半くらいの女性だ。黒いワンピースに、後ろでまとめた長い髪。店と同じように、不思議な空気をまとっている。彼女が、このアンティークショップの店主なのだろうか。

 花梨は壷に気を取られるあまり、ぼうっとしていたことに気づいて、慌ててこう言った。

「あの。この壷、おもしろいですね。水の波紋のような模様が浮き出て……」

「水の波紋?」

 女性はけげんな顔をして、花梨のことを見返した。何かおかしなことを言っただろうか。

 そう思ってあらためて壷の方へ目を向けると、先ほどまであった輝きがなくなっていた。花梨は思わず声を上げる。

「――あれ?」

 そこにあるのは、ただの青い壷だ。きれいな模様か、あるいは絵が描かれているが、特に変わったところはない。先ほどの現象は、何だったのだろう。

 不思議に思っていると、目の前の女性は、ほう、と感心したような声を上げた。

「君の目には、そう見えるのか。おもしろいな」

 どういう意味だろう。今度は花梨が首をかしげる番だ。しかし、彼女はただ意味深な笑みを浮かべるだけ。

 あらためてその壷にふれながら、彼女が言ったのはこんな言葉だった。

「これはパンドラの箱なんだ」

 パンドラの箱、というとギリシャ神話のことだろうか。確か、開けてはいけない箱を開けてしまったことで、世界には災いが解き放たれたが、箱の中に希望が残ったという――

 ただ、それはどう見ても壷で、箱ではなかった。どういうことだろう。

 不思議に思ったが、そのことをたずねるよりもまず、花梨は自分が名乗ってもいないことに気づいた。

「あの。私は鷹山花梨です。彼女は――姫川椿」

 そう言って、店内を見ていた椿を示すと、そちらに目を向けながら、女性はふむとうなずいた。

「君とは会ったことがあるな。あの店の子だろう?」

 椿はいつもの素っ気ない態度ながら、軽くうなずいている。それを確認してから、女性はあらためて花梨に向き直った。

「何度か、うかがったことがあるのでね」

 彼女も槐の店には来たことがあるらしい。やはり、石のことも知っているのだろうか。

 気になるところではあるが、花梨はひとまずこちらの用件を告げることにした。

「私たち、柚子さんがこの店で作品を販売されていると聞いて」

「作品を販売、ね……」

 そう呟いて、彼女は少しだけ顔をしかめる。しかし、すぐに取り繕うと、あらためてこう言った。

「いや。柚子から話は聞いているよ。ようこそ、あかとき堂へ。私が店主の東雲しののめあずさだ」

 梓はそう名乗ると、すぐに呆れたような表情で肩をすくめた。

「ただ、柚子のやつは、どうも遅刻しているらしい。まったく。困ったやつだ。あいつが来るまで、店の中は好きに見てもらってもかまわない。柚子が作った物なら――そちらの、窓辺の机にある」

 外から見えた鉄格子の窓だろう。その下に――おそらくアンティークの――書きもの机が置かれていて、その上には、柚子の作ったらしいアクセサリーが並べられている。他のアンティークと区別するためか、その一画には手書きの説明書きが添えられていた。

 それらに興味を引かれていった椿を見ながら、花梨は梓にこうたずねる。

「私、こういう店は初めてで。アンティークショップとのことですが、ここでは、どういったものを扱っているんでしょう」

 梓は考えるような素振りをしながら、こう話し始める。

「もともと、ここは祖母の店でね。あの人が好き勝手に集めた物だから、節操なしなんだ。アンティークであれば、幅広く扱っている。まあ、ヨーロッパからの物が多いな。そもそもアンティークとは――ようは古い道具のことで、基本的に百年経った物を言う。高価な物ばかりではないから、よければこちらも気軽に見ていくといい」

 花梨はうなずいた。確かに、この店には目移りするほどいろいろなものが並べられている。そして、ひとつとして同じものはなかった。見ているだけでも飽きることはないだろう。

 それに、店主である梓はどことなく槐に似ている気がした。雰囲気が――というよりは、深い知識と、おそらくそれに裏打ちされた落ち着きとが。

 花梨は思わずこう言った。

「梓さんは、槐さんともお知り合いなんですよね。博識だとおうかがいしていて」

 その言葉に、梓は首を横に振る。

「とんでもない。むしろ彼の方がいろいろと知っているだろう。あの店のことは、もともと噂で聞いていてね。京都におもしろい石の店がある、と。それで――私は、沙羅とは昔からの友人で。沙羅にあの店のことを伝えたのは、私なんだ。変わった店があるらしいから、行ってみてはどうか、と。まさかこうなるとは、そのときは考えもしなかったんだが」

「そうなの」

 と、珍しく椿が話題に食いついた。それを見て、梓は椿にこうたずねる。

「沙羅は、また海外か?」

「そうね。帰ってたのは、年末年始だけ」

「相変わらず、フットワークの軽いやつだ。どうせまた、魔女のところだろう。昔から傾倒していたからな」

 ――魔女?

 花梨がけげんな顔をしているのを見て、梓は苦笑した。

「ああ。すまない。沙羅が留学したとき、世話になったというホストマザーのことだよ。私も会ったことがあるが、聡明な人物だ。博識というなら、まさしくあの人のことを言うのだろう」

 なるほど、とうなずきながらも、花梨は今さらながら梓にこう打ち明けた。

「実は――私はまだ、沙羅さんにはお会いできていなくて」

 そうなのか、と梓は意外そうな顔をする。

「まあ、おもしろいやつだよ」

「そうね。それから、さわがしい」

 椿の言葉に、そうだな、と同意しながらも梓は軽く苦笑した。

 会わないうちに、沙羅という人物に対して、また妙な印象がつけ加えられてしまった気がする。そんなことを考えていた、そのとき――

 扉が開くと同時に、ドアベルの音が鳴る。忙しなく店内に入って来たのは――柚子だった。

「ごめんなさい。遅れちゃった」

「何が遅れちゃった、だ。客を待たせるな」

 厳しい声で、そう出迎えたのは梓だ。柚子は梓と顔を会わせるなり、あからさまに顔をしかめると、妙な声を上げてこう言い返した。

「うへえ。あず姉ってば、来て早々に説教はやめてよ」

 柚子はそこで花梨と椿の姿を認めると、すぐに何ごともなかったような顔になる。

「ごめんね。わざわざこんなところまで来てくれたのに。狭い店だけど、いろいろと見ていってね。おもしろい物もあるし」

 柚子の発した、こんなところ――という言葉に、梓は苦い表情を浮かべている。花梨は慌てて、こう答えた。

「いえ。とても素敵なお店で。ここに来られてよかったです」

 梓はそれを聞いて――気をつかわせたと思ったのか――少しかしこまった。

 とはいえ、花梨も心にもないことを言ったわけではない。椿の方も案外楽しんでいるようで、柚子が遅れたことについても特に気にしてはなさそうだ。ともあれ――

 花梨の前に立った柚子は、真っ先にシトリンのペンダントに目を止めた。誕生日プレゼントとして、柚子が送ってくれたアクセサリー。それを見て、彼女は満足げに笑みを浮かべている。

 ちなみに、椿に送られてきたのはツバキの花をイメージしたらしい赤いガーネットのピンブローチだった。もちろん、椿もそれを身につけている。

 そのことを確認すると、柚子はうれしそうにこう言った。

「送ったアクセサリー。気に入ってくれたんだ?」

 花梨はうなずいたが、椿の方はいつもどおり素っ気ない。それを見越して、花梨はすかさず手にしていた紙袋を差し出した。

「これ、よろしければ。椿ちゃんが絶対にこれだって」

 それは、柚子に渡すために持ってきた椿おすすめのお菓子だった。和の素材で作られた洋風の焼き菓子で、近頃人気のお店らしい。

 モダンなデザインの包装紙をひと目見るなり、柚子は目を輝かせた。

「もしかして、並ばないと買えないやつじゃない? ありがとう」

 椿の方へ視線が集まったが――彼女はあくまでも取り澄ましている。本心では誕生日プレゼントのことも嬉しいだろうとは思うのだが――どうも、こういうことを素直に表に出すことが苦手らしい。

 梓は傍らでやりとりを見守っていたが、紙袋の中身がお菓子であることを柚子に教えられると、こう提案した。

「では、お茶でもどうかな? 少し狭いが……よければこちらで用意しよう」

 そう言って、梓は店の奥へと花梨たちを誘う。柚子は意外そうに、軽く目を見開いた。

「お。いいの? いつもなら、ここで何か食べたら怒るのに」

 うしろに続いた柚子を振り返りながら、梓は軽く顔をしかめている。

「当たり前だ。ここはおまえの作業場じゃない。店内はやめてくれ。カウンターの周辺なら許す。ただし、ぼろぼろこぼすなよ」

 梓は厳しい口調でそう言ったが、言われた本人はそれほど深刻に受け取ってはいないようだ。

「そんなことしないって。子どもじゃないんだから」

 へらへらしている柚子に、梓は呆れたようなため息をつく。

「どうだか。まあ――お茶くらい、たまにはいいだろう。あの人は自由にしていたし、今さらだ」

 花梨は椿と顔を見合わせたが、ひとまずは先行くふたりについて行くことにした。

 店内には所狭しとアンティークが置かれているので、通路の部分は少し狭い。高価そうなガラスの器などもあり、花梨たちは周囲に気をつけながら、おそるおそる歩いて行く。

 突き当たりにはカウンターがあって、その奥にはバックヤードに続くのだろう扉が見えた。今は開け放たれていて、梓はその向こうへと消えていく。柚子はどこから持ってきたのか、明らかに売り物のアンティークの椅子を三つ、カウンターの前に並べていた。

 その様子をながめていると、柚子に、どうぞ――と、椅子をすすめられる。高価なものだったらどうしようと思いながらも、花梨はそれに腰かけた。そうしているうちにも、柚子は受け取った紙袋からお菓子を取り出している。

 勝手がわからない花梨は申し訳ないと思いつつも、目の前で着々と進められていくお茶会の準備をただながめていた。椿は特に気にする風もなく、やはり興味深そうに店内を見回している。

 そのときふと、カウンターの奥まったところにある人形と目が合った――気がした。栗色の髪に茶色の瞳。ベルベットのシックなドレスをまとったこれは、西洋人形――いや、アンティークドールだろうか。

 それにしても、なぜこんなところに、しかも隠されるように置かれているのだろう。

 茶器を持って戻って来た梓が、花梨の視線に気づいて声をかける。

「それは少々いわくつきでね。売り物ではないんだ」

 いわくつき――その言葉に花梨は首をかしげた。梓は苦笑しながらこう続ける。

「何でも、殺人現場にあったとか。しかし、まあ、ドールに罪はないからな」

 ――殺人現場?

 思いがけない言葉を聞かされて、花梨はぎょっとする。しかし、梓は涼しい顔をして、カウンターの上にティーカップを並べていた。槐の店もそうだが――もしかしたらこの店も、けっこう変わっているのかもしれない。

 ひととおりの準備が整ったところで、梓はカウンターの奥にあるらしい椅子に腰かけた。並べられたお菓子と紅茶を挟み、花梨と椿と――少しだけ外れて柚子が並ぶ。

 梓がティーポットから紅茶を注いでいるうちに、柚子はあらためて花梨たちの方へ目を向けた。

「うんうん。似合ってる。よかったあ。喜んでもらえて」

「こちらこそ、ありがとうございます。思ってもいなかったプレゼントだったので、驚きました」

 花梨がそう言うと、紅茶の注がれたティーカップを差し出しながら、なぜか梓がこう返す。

「そんなに恐縮することはない。どうせ柚子が勝手に送りつけたんだろう。気に入らなければ、突き返してもいいくらいだ」

 それまでうれしそうだった顔をしかめると、柚子は呆れた目で梓のことを見返した。

「どうしてあず姉がそれを言うかな。まあ、試作品がてら作った物で――ってばらしちゃうと、いい気はしない?」

 それを知らされたとしても、花梨は特に気にならなかった。むしろ、少しだけほっとする。椿の方は――よくわからないが。

 しかし、梓はあからさまにため息をつく。

「そう思うなら話さなければいいだろうに。それも気づかいのうちだ」

 そう指摘されて、柚子は軽く頬をふくらませている。遠慮がないというか、何というか――そういう意味ではこのふたり、まるで姉妹のようだ、と花梨は思う。

 柚子は軽く肩をすくめると、あらためてこう言った。

「でもね、喜んでもらいたいって気持ちは本当。それに、何だか新しいことに挑戦したかったんだ。いろいろあったし。それで、どうしても作りたいデザインがあって。ちょっと練習しときたくてね」

 柚子はそこでふと窓辺の方を向いたかと思うと、遠い目をして黙り込んだ。その横顔は、なぜかほんの少し寂しそうだ。

 しかし、その理由をたずねるより前に、柚子はその表情をあらためる。そして、花梨へと向き直ると、こんなことを問いかけた。

「ところで――最近はどう? 鷹山さんは、まだあの店に通ってるの?」

 そういえば、あの頃の花梨は槐の店のことを知ったばかりだった。柚子がいるときには、石を借りている――ということを話しただろうか。

 あれからいろいろあって、今では――呪いの石に対処したりだとか――あの店に行く理由も、少し違った意味になっている。そうでなくとも――

「実は……私はあの店でアルバイトをすることになりまして」

「アルバイト?」

 といっても、それが決まったのは、ついさっきの話だ。それでも、そのことを思いのほか楽しみにしていることに、花梨は気づいた。

 槐の言葉を思い出しながら、花梨はこう続ける。

「整理できていない石があるので、フリーマーケットなどで売ってみないか、と」

「へえ。きれいな石があれば、安くで譲って欲しいな、なんて」

 柚子はすかさず、そんな調子のいいことを言い出す。しかし、それを聞いていた梓は、きょとんとした顔でこう問いかけた。

「あの店で、ジュエリーに使えるようなカットストーンを扱っていたか?」

 花梨も店の現状について、そこまでくわしいわけではない。とはいえ。

「この間、蛍石や黄鉄鉱がダンボール箱いっぱいに詰められているのを見ましたが……」

 ただ、それらが柚子のアクセサリーに使えるかどうかはわからない――と思ったが、梓はふむとうなずくと、こう言った。

「パイライトはマルカジットだな。柚子に加工できるかは別として」

「マルカジット?」

 花梨が思わずそう問い返すと、梓はどこからともなく金属製の何かを取り出した。銀細工のイヤリング――アンティークの宝飾品だろうか。そこに並んでいるのは、宝石のようにカットされた黄鉄鉱。

「マルカジットはパイライトを六面体にカットしたものだ。十八世紀頃、ダイヤモンドの代わりとして用いられ流行した」

 ダイヤモンドと違って光を通さないので、その輝きはそのものというわけではない、が――これはこれでおもしろい。

 しかし、柚子はそれを横目に見ながら、特に何を言うわけでもなかった。どうやら、あまり興味が持てないらしい。

 肩をすくめながら、柚子は話の流れを元に戻す。

「まあ、近頃は原石のまま加工したアクセサリーとかもあるし、ほら――フローライトとかなら、きれいに八面体に割れるんだよね。そういうの、やってみたいかも」

「劈開だな。四方向に完全。だが、フローライトはモース硬度四の標準鉱物だ。宝石としては、柔すぎるんじゃないか」

 梓のその言葉に、柚子は軽くため息をつく。

「まーた、そんなこと言って。それは昔の話でしょ。あず姉は遅れてるんだって。近頃は割れやすい稀少石とかでもルースがあるし、それをアクセサリーにしたのも、けっこうあるよ?」

「あれはキャビネットストーンだろう。身につけるには、モース硬度は七以上の方がいい」

 ふたりのやりとりに、花梨はおそるおそる口を挟んだ。

「どうしてモース硬度が七以上でないと、いけないんでしょうか」

 柚子は憮然とした顔でこう答える。

「いけないってことはないと思うけど――」

 自信なさげな柚子の言葉をさえぎったのは梓だ。

「まず、モース硬度は知っているかな?」

 梓はそれだけ言うと、失礼、と言いながら席を立った。そして、ひとり店内に向かいつつ、こう話し始める。

「モース硬度とは、傷つきにくさとしての硬さの指標だ。よく誤解されるが、壊れにくさとはまた別になる。鉱物学者フリードリッヒ・モースが考案したもので、十の鉱物で対象を引っかいた際に、傷がつくか否かで判断する。そのため数値も相対的なものだ」

 ほどなくして戻って来た梓は、その手に細長い木箱を持っていた。それをそのまま、カウンターの上に置く。

「ちなみに、これがモース硬度計だ」

「ここ、そんな物まであるの」

 柚子の呟きはきれいに無視して、梓は木箱のふたを開けた。硬度計とは言うが、機械ではない。中には仕切りがあって、そこには十種の鉱物が収められている。

「タルク、ジプサム、カルサイト、フローライト、アパタイト、オーソクレース、クォーツ、トパーズ、コランダム、そしてダイヤモンド。この十の鉱物が標準鉱物として選ばれている。この指標において、地球上で最も硬いのはダイヤモンドだが、ダイヤモンドが最も割れにくいというわけではない」

 花梨はモース硬度計をのぞき込んだ。見知った鉱物もあれば、まだ知らない鉱物もある。

 それに、ここはアンティークショップだ。ということは――このモース硬度計は、誰かが使った物なのだろうか。

 よく見てみると、箱には確かに使い込んだような傷がある。しかし、それもわずかなものだ。おそらく大事に扱われていたのだろう。

 しばらくしてから、梓が再び口を開く。

「で――何だったか。宝石の話だったな。宝石の定義は曖昧なものではあるが、私は資産としての価値が重要だと思っている。何しろ宝だからな。宝石の指輪などは、有事の際にそれひとつ持ち出せば、換金することもできた。まあ――そういう歴史があった、ということだ。だからこそ、美しさや稀少であることの他に、傷つきにくさは宝石の大事な要素だ」

 そこで梓は、木箱から石をひとつ取り出した。手にした鉱物は、透明な六角柱の石。これは――

「モース硬度七の標準鉱物はクォーツ。水晶、あるいは石英だな。クォーツは身近にある鉱物で、極小のものが砂にも混じっている。それより低い硬度の鉱物であれば、砂が舞っただけでも傷つく可能性があるということだ。しかし、硬度が七以上であれば、そのリスクは低い。まあ、それこそ柚子にやったターコイズやマルカジットはモース硬度六程度だから、明確な線引きというわけでもないが」

 そう言い終えると、梓は元の場所に石英を収めた。花梨は思わず深く息をはく。

「ありがとうございます。勉強になります」

「ごめんね。あず姉の話長くて」

 と、柚子は苦笑いを浮かべている。そんな彼女の胸元には、相変わらずトルコ石のペンダントが揺れていた。

 梓は少しだけ不服そうな視線を柚子に送りながらも、モース硬度計のふたをそっと閉めたかと思うと――なぜかそれを、花梨の方へと差し出した。

「よければお譲りしよう。君なら、うまく使えるだろう」

 花梨は軽く目を見開いた。そして、目の前にあるモース硬度計と梓の顔を交互に見比べる。花梨は考えた上で――それを受け取るより先に、まずは梓にこうたずねた。

「こちら、おいくらでしょう」

 梓は少しだけ、おや、という表情をしたが、すぐに取り澄ますと、それを提示した。もしかしたら、そこには何らかの手心があったのかもしれないが――それほど高い価格ではない。

「では、買わせていただきます」

 花梨がそう申し出ると、柚子がすかさず不満の声を上げた。

「えー。気を使わなくていいんだよ?」

 花梨は首を横に振る。梓は柚子を軽くにらみつけてから、花梨に向かって、ではそのように――とうなずいた。

 その頃、ひとり黙々とお茶を楽しんでいた椿は、自分の取り分であるお菓子もきれいに平らげて、そろそろ話の方にも飽きたらしい。他の商品を見てもいいか、とひとこと断ってから席を立つ。

 それを追うようにして視線を店内に向けた柚子は、それらを見渡しながら、ふいにこう言った。

「それにしても、フリーマーケット、か。私もよく出店したりするし、よければアドバイスするけど」

「ありがとうございます」

 引き受けたはいいものの――正直言って、何をすればいいかもわからなかった花梨にとって、それはありがたい申し出だった。とはいえ。

「それで、どんなお店にするつもり?」

 という柚子の問いかけには、口ごもる。さすがに先ほど引き受けたばかりで、何か具体的な展望があるわけではない。花梨は苦笑した。

「えっと……その辺りはまだ全然」

 それを聞いた柚子は、ふむとうなってから、こう提案した。

「だったら一度、出店する予定のフリーマーケットに、お客さんとして行ってみるのがいいかもね。ああいうのって、それぞれ特色があったりするし」

 そう言ってから、柚子は梓の方を振り向く。

「あず姉も、店をやってる身で、何かアドバイスないの?」

 水を向けられた梓は、ちょうど紅茶でひと息ついているところだった。彼女は考えるように目を伏せながら、こう話し出す。

「そうだな――石であろうと何だろうと、物は物だよ。それ以上でも以下でもない」

 梓はカウンターに出されたままだったマルカジットのイヤリングを手に取った。さわり心地を確かめるかのように、梓はそれをやさしい手つきでもてあそぶ。

「物の価値とは、ようするにその物に心を寄せる人の多さ、あるいは思いの強さだ。物が稀少で、求める者が多ければ当然、価値は上がる。場合によっては高騰し、奪い合いになる。商売として、それをおもしろいと思う者もいるだろうが――」

 梓はそこで、店にある無数のアンティークへと目を向けた。

「とはいえ、私はあまりそういったセンセーショナルな価値については興味がなくてね。結局のところ、良い物は時代が変わっても良い物なんだ。私はそう信じている。しかし、どんな素晴らしい物でも、劣化、風化、消失――そういった時の流れには逆らえない。それを食い止め、できるだけ後世に伝えようというのが、この店の意義だ」

 梓はそこまで語ると、何の話だったかを思い出したかのように――こほんと咳払いをしてから、こう続けた。

「しかし、まあ……石か。それも、今までかえりみられなかったような石を売るとなれば、やはり何らかの価値を見いだすことだな」

「価値を見いだす?」

 花梨が問い返すと、梓はうなずいた。

「さっき柚子も言っていたが、例えば客の目の前でフローライトを実際に割ってみせるのもいい。そうして鉱物の性質を知らない者に説明ができれば、石にもともと興味がなくとも、気にはなるだろう?」

 花梨は、なるほど、と思った。

 石にはそれぞれ特徴がある。劈開などは弱点にもなり得るが――梓の言うように、その性質を利用することもできるかもしれない。いつか見た赤鉄鉱の条痕なども、知らない人にとってはおもしろい事実だろう。

 梓は続ける。

「まあ、特別なことでなくとも――例えば見た目がきれい、形がおもしろい、でもいいんだ。そうして見る者に共感できる何かを与える。そうすれば、ただ商品を並べているよりも、それを買おうとする者に届きやすい。まあ、やりすぎるとその価値を嘘や誇張で固めることになってしまうが。だからこそ、買う方は買う方で、見極めが大事になってくる」

 梓はそう言い終えると、あらためて花梨の方へと向き直った。

「とにかく、こんなところかな。実際には言うは安しで、そうたやすいことではないが。私自身、まだまだなところではあるから、偉そうに言えたことではないな」

 それを聞いた柚子は、軽く肩をすくめている。

「まあねえ……この店、どう見ても流行ってるようには見えないし……」

 その発言に、梓はあからさまに顔をしかめていた。

「そんな店に商品を並べているおまえは何なんだ」

 そう言って、梓は柚子をにらみつけたが、そうされた方はにやりと笑い返す。

「これのおかげで、少しはお客さんも来てるでしょ。感謝してよね」

「よけいなお世話だ」

 梓はふんと一笑してから、ふと表情を変えた。

「そういえば――」

 と呟きながら、梓は再び席を立つ。

「あの店でアルバイトをしているというなら、もしよければ、ひとつ頼まれて欲しいんだが」

 そう言って梓が店内から持って来たのは、茶色い石の指輪。何の石だろうか。不透明で、つるりと丸みを帯びている。

「これはトードストーン、あるいはヒキガエル石と呼ばれる石の指輪だ」

 そう言って、梓はその指輪を花梨の目の前――カウンターの上にことりと置いた。

「トードストーンは、カエルの頭の中にある宝石だ。ヒキガエルを赤い布の上に乗せるなどすると吐き出すらしい。十七世紀の物語の中にもこうある――逆境はつらく苦しいばかりではない。醜く毒を持つヒキガエルが、頭の中には貴重な宝石を隠しているように――これは、シェイクスピアの『お気に召すまま』だな。近くに毒があると熱を帯びる、などとも言われ、指輪などに仕立てられ、お守りとして身につけられていた」

 しかし、梓はここでふと、意味深に笑った。

「――と、いうのはかつて信じられていた話で、実際のところ、この石はジュラ紀のヨーロッパに生息していたレピドテスという魚の歯の化石なんだ」

 花梨は驚いて、思わずその指輪の石をまじまじと見つめた。これが魚の歯。確かに宝石というには少し飾り気がないと思ったが、歯の化石にしてはつややかで、磨かれたようになめらかな形をしている。

 梓はこう続けた。

「なぜこれがカエルの頭の中にあるとされていたかは、定かではないが――まあ、ベゾアール石――いわゆる結石だな――それが解毒の力を持つとして珍重されていた例もあるからな。それこそ、トードストーンも――そういった特別な価値を与えられたことで、宝石となった石だと言えるかもしれない」

 奇妙な物語を与えられたことで、別の価値を得た石。それでも、その時代の人たちにとって、それは真実だったのかもしれない。そして、それが真実ではないと知られてもなお、その石はヒキガエル石の名を背負っている。

「宝石、ねえ。こんなに地味なのに……」

 と、柚子は冷めた目でヒキガエル石の指輪を見下ろしている。その発言には何を言うでもなく、梓はその指輪を再び手に取ると、花梨の方へと差し出した。

「この指輪が、どうもおかしなことを起こすらしい。しかし、私では調べられなくてね。近々そちらに行って、彼に見てもらおうかと思っていたところなんだが――もし差し支えなければ、これを預かってもらえないだろうか」

 そちら、というのは槐の店のことだろう。つまり、この指輪か――あるいはこの石が、怪異を起こす、ということだろうか。

 ともかく、現時点では特におかしなところはなさそうだ。預けるからには、怪異といっても、それほど危険なものではないのだろう。

 花梨は梓に向かってうなずくと、こう言った。

「わかりました。槐さんにお渡しすればいいんですね。お預かりします」

 ヒキガエル石の指輪を、確かに受け取る。

 それからも、花梨たちはたわいもない話に花を咲かせ――そうして、なごやかな時は過ぎていった。

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