第14話 前例無しの改変 Ⅱ
外村と江藤の言葉に、和弥は頭を抱える。
「そ、そんなの……じゃあ、」
「だから、間違いなんかじゃ無いんです。この修正は、失敗出来ない」
江藤は一生懸命に言い募った。
「先輩たちにかかってるんです。だから……無理だ、なんて簡単に言わないで下さい!」
しかし和弥は、
「だけど、修正の事は江藤ちゃんには分かんないだろ⁉︎ 今は、無条件に楽観視できる状況じゃ無いんだ。俺だって無責任に『絶対修正できる』とかは言えないよ!」
と返す。
江藤が俯いて唇を噛む。紗奈は思わず口を出した。
「和弥先輩、江藤さんは別に楽観視してる訳じゃ無いんじゃ……」
「うるさい。紗奈ちゃんだって分かって無いくせに」
和弥が吐き捨てるように言う。その声はかなり大きく響き、律希が「和弥」と声を上げた。
「……江藤も川野も間違った事は言ってない。自信が無いからって八つ当たりするな」
「だ、だって……」
和弥が反論しようとするが、律希ははっきり言い切った。
「大丈夫。僕が修正するから」
和弥だけで無く、外村や江藤も律希をさっと見た。
『平気なのか?』
外村がタブレットを傾けると、律希は少し躊躇い、でもうなずく。
「今まで失敗した事は無いですしね」
江藤がほっとしたように表情を緩めたが、中山も外村も厳しい表情だ。中でも中山は、どこか心配げに彼を見ていた。
しかし、彼女もしばらくすれば明るい声で、
「まあ、律希の言う通りね」
と言った。
「廉さん、それに友梨ちゃんもありがとう。後は私たちに任せて下さい」
中山が頭を下げると、江藤は真剣に、
「お願いします。私たちも出来る事はなんでもしますから、言って下さい」
と答えた。
隣の外村を見ると、彼は江藤に同意するようにうなずいた。
『分析結果は後で分かりやすいデータにして送る。後は過去の改変のデータから、使えそうなやつもな』
彼が書き出した言葉に、中山は重ねて礼を言った。
外村と江藤が出て行くと、部屋は再び静かになった。その重い空気の中、中山が深く息を吐いた。
「……人類滅亡、って」
机に手をついて下を向いた彼女には、疲労の色が見える。
「中山部長?」
紗奈が気づかうように聞くと、中山は、
「冗談じゃ無いわ」
と呟いた。
次に顔を上げた時の彼女の表情には、疲労では無く怒りの感情がはっきり表れていた。
「和弥!」
「はっ、はい……?」
「絶対完全修正する。以後、マイナス発言は許さないから!」
「あ、はい、了解です……?」
部長の勢いに気圧されて和弥が彼女の指示をのむ。
「じゃあ修正ソフト開いて。基礎から修正方法探して行くよ。素早くね!」
中山が指示を出し、和弥はPCを開く。律希も会社用のPCを立ち上げた。
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