7: 秩序警察本部

 秩序警察本部(Hauptamt Ordungspolizei、略称OrPo)。政治警察を除いたすべての警察を指揮する秩序警察を親衛隊の本部にしたもの。


 長官はクルト・ダリューゲSS上級大将が務めていたが、1943年に心筋梗塞で重体になり、代わりに長官代理としてアルフレート・ヴェンネンベルク警察大将が置かれることとなった。


 秩序警察(ちつじょけいさつ、独:Ordnungspolizei)は、1936年から1945年まで存在した、ナチ体制下のドイツの警察組織。


 常時制服を着用する警察組織の総称。着用する制服の色から「緑色の警察(Grüne Polizei)」とも呼ばれていた。


 英語では「order police」とも訳されることがある。ナチス政権下のドイツ警察組織は秩序警察と保安警察に二分されていた。


 1936年6月17日に親衛隊全国指導者ハインリヒ・ヒムラーがドイツ警察長官(Chef der Deutschen Polizei)に任命。


 6月26日にヒムラーはドイツ警察をクルト・ダリューゲ親衛隊大将が指揮する秩序警察と、ラインハルト・ハイドリヒ親衛隊中将が指揮する保安警察に二分し、制服を常時着用する警察組織は秩序警察にまとめた。


 秩序警察本部 (Hauptamt Ordungspolizei) の下に大都市の治安維持を担当する都市防護警察(Schutzpolizei des Reiches)、

自前で予算を捻出できる中都市の治安維持を担当する地方防護警察(Schutzpolizei der Gemeinden)、

自前で警察運営できない小規模の自治体の治安維持を担当する国家地方警察(Gendarmerie)、

消防団(Feuerwehr)の上位にある消防警察(Feuerschutzpolizei)、

大事故や災害に対応する緊急技術支援隊(Technische Nothilfe)などが置かれていた。


 1943年以降は鉄道防護警察(Bahnschutzpolizei)、防空警察(Luftschutzpolizei)、郵便保安部(Postschutz)も秩序警察本部の管轄となった。


秩序警察本部は秩序警察長官(Chef der Ordnungspolizei)によって指揮される。


 はじめはクルト・ダリューゲ、1943年以降は「病気療養のため」としてダリューゲが退き、アルフレート・ヴェンネンベルク親衛隊大将が秩序警察長官事務取扱として指揮。


 犯罪捜査を担当する刑事警察はゲシュタポとともに保安警察に再編されていたが、アルトゥール・ネーベを部長とする中央の国家刑事警察本部(RKPA)が完全にハイドリヒの指揮下にあったのに対し、刑事警察の地方分署は、専門的な指図を国家刑事警察本部から受けつつ、秩序警察に属する地方の警察署長が刑事警察の分署所長を兼ねたために、間接的に秩序警察の管轄下にもあるという二重権力構造になっていた。


 そのため刑事警察の管轄権をめぐってハイドリヒとダリューゲの間には対立があった。1943年8月に反SS的な内相ヴィルヘルム・フリックが更迭されてヒムラーが新内相となるとそれまで保安警察(国家保安本部)と距離を置いて付き合ってきた秩序警察は、刑事警察の指揮権を完全に国家保安本部に奪われたうえ、それまで秩序警察が担当した警察の報告、登録業務、警察法規、警察組織全般に関する一切の業務も国家保安本部に移され、政治的には力を喪失した。


1939年に第二次世界大戦が開戦すると秩序警察の国家地方警察は国防軍に人員を出した(多くは憲兵)。


 また秩序警察は武装親衛隊への人材提供や警察連隊として戦場に派遣され、1939年10月には15000名の秩序警察官からなる「警察師団」が編成された。


 この師団は西方電撃戦やロシア戦線で活躍し、1942年2月には武装親衛隊に編入され「SS警察師団」と改称され、ついで装甲擲弾兵師団に、1943年9月からは第4SS警察装甲擲弾兵師団となった。


 戦争末期には新たに第35SS警察擲弾兵師団が創設されているが、師団として実戦に投入されたかは不明である。


 警察連隊(Polizei regiment)は占領地域における対パルチザン(反ナチテロ組織)戦闘など治安維持活動のために編成されたもので1943年以降は「SS警察連隊」に名称変更されている。


ドイツの敗戦で秩序警察は事実上消滅し、1945年7月に連合国管理委員会(英語版)が成立するとドイツ警察改革が布告され、各占領地域でドイツ警察組織の再編が行われた。


1939年から1945年の間、秩序警察はドイツ国内の組織から独立した軍事組織を保有していた。


 最初の部隊は、警察大隊であった。これらは、占領地域の法的秩序の維持と対パルチザン作戦のため設けられた。


 警察大隊は、親衛隊や警察指揮官に指揮され、ポーランドのユダヤ人のゲットーの警備に投入された。警察大隊は、人員が必要な場合にアインザッツ・グルッペン (Einsatzgruppen) が人員を引き抜くための人的プールとして使用された。


 1942年に多くの警察大隊から28個の警察連隊が編成された。そのほとんどは、東部戦線でのドイツ軍の撤退時の戦闘に巻き込まれることになった。


 警察大隊はドイツ陸軍の通常の野戦憲兵(Feldgendarmerie)とは別のものであることを記しておく。

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