第6話 星の導き

 千年前に魔王軍と戦った伝説の七騎士の武器が宝物庫にあり、その武器を誰がもつかの適性を計るために星見の儀が必要であると魔術師エウリュアレはリオネル王女に進言した。


 王女はそれを許諾し、僕たちは横一列に並ばされた。

 何故だか、あの鷹峰麗華が左横に並ぶ。

 振り向くと僕の顔の位置にあのJカップロケットおっぱいがあり、つい見とれてしまう。

 どうやらあの渡辺蓮には見つかっていないようなのでこっそり横目で眺めよう。

 あの突き出た柔らかそうなおっぱいを眺めるのは眼福の極致と言える。

 

 そうこうしているうちに星見の儀というのが始まる。



 儀式自体は簡単なもののようだ。

 エウリュアレが手をとり、それぞれの適性を見ていくのだという。

 まず始めに結城涼の手をとる。

 エウリュアレは目が不自由なので近衛騎士団長ラインスロットが介添人になる。



「結城涼様、貴方の守護星はシリウス。獅子王の剣をこのかたに……」


「本田政勝様、貴方の守護星はリゲル。岳飛の槍をこのかたに……」


「羽柴マリア様、貴方の守護星はペテルギウス。サラディンの戦斧をこのかたに……」


「石川咲夜様、貴方の守護星はアンタレス。ウイリアムの弓をこのかたに……」


「渡辺蓮様、貴方の守護星はスピカ。名刀政宗をこのかたに……」


「真田雪様、貴方の守護星はデネブ。パラケススの杖をこのかたに……」


「鷹峰麗華様、貴方の守護星はベガ。やはりこれは運命でしょうか。竜剣ジークフリードをこのかたに」

 それぞれにそう言い、ついに僕のところに魔術師エウリュアレが来た。

 なんか鷹峰麗華の時だけちょっと違ったな。



 エウリュアレは僕の両手をとり、胸元に近づける。

 皆にそうしたように目蓋を閉じた顔を向ける。

 あれっ、他の人たちとちょっと違う。

 エウリュアレはうっすら目蓋を開ける。

 その瞳はあのメドゥーサと同じ血のように真っ赤だ。

 僕は思わず息をのむ。

 心臓がドキドキと鼓動が速くなるがどうにか落ち着こうと心がける。



 聞こえますか。

 今、貴方の心の中に直接話かけています。

 私はエウリュアレです。

 頭の中で魔術師の声がする。

 僕は周囲に気どられないように頷く。



 よかったです。

 王女殿下との謁見が終わりましたら、私のところにいらしてください。貴方にだけにしたい話がございます。

 私はこの城の北東に館をかまえています。魔女の館と人は呼んでいます。



 僕は小さく頷く。

 話とはなんだろうか。ものすごく気になるな。


 エウリュアレは僕の手を強く握る。彼女の体温が直につたわる。

「和久燐太郎様、貴方の守護星はアルタイル。これはめぐり合わせですね。レオナルドの羽ペンをこのかたに……」

 へっ、僕だけどうしてペンなの。ペンでどうやって戦えっていうのさ。



 くすくすと笑い声が聞こえる。

 羽柴マリアと石川咲夜が笑っている。

「ペンだってさ。やっぱりあいつはなんかの拍子に紛れこんだんだよ」

 咲夜が言うとマリアがそうですわねと相づちをうつ。

「そんな失礼ですよ、マリアさん、咲夜ちゃん」

 真田雪がたしなめる。


 左横の鷹峰麗華が足踏みしながらどうしてかイラついている。



 くそっ、どうして僕だけペンなんだよ。

 やっぱり僕は救国の七騎士なんかじゃなくてたまたま異世界にやってきた紛い物なのか。

 僕は心の中で愚痴る。


 そんなことはございません。

 そのことも我が屋敷でお話いたします。どうぞ周囲の声に迷いませぬように。

 そう心の中でもエウリュアレは言うと手を離し、ラインスロットに誘導されて王女の隣に戻る。

 やがて、衛兵の手によってそれぞれの武器が運ばれてきた。それらの武器は星霊器と呼ばれるものだとエウリュアレは説明した。

 千年前に魔王軍と戦った救国の騎士たちが使っていたものらしい。

 僕の手にもその星霊器が渡される。

 それはやっぱりペンだった。白い羽毛のペンで中央に小さな透明な宝石が埋め込まれていた。

 かなり美しいものだが、こんなのであの魔王軍と戦えるとはどうしても思えなかった。

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