死世界東京 〜明日なき少女と壊れた世界〜

青田夢結

始まり

第1話

「……え」


見渡す限り、凄惨な光景が広がっていた。

エリシアが目覚めると、見慣れていた煤けた天井ではなく、血と泥が混ざったような色の空がエリシアの頭上に蠢いていた。


ふと、大きな音が聞こえた。


横を向くと、怪物のような獣たちが争っているのが見えた。

その周りには、同じような怪物の死体と、

沢山の大人の死体が転がっていた。


「……っ」


本能が悲鳴をあげそうになるのをすんでのところで堪える。

もし、声でもあげて怪物らの標的にされたら命はないと、本能で感じ取っていた。


何もしていない怪物が辺りを見回していた。

エリシアは何者とも目を合わせないように、必死に気配を隠し、見つからないように祈りながら近くの障害物に移動を試みていた。


その、とき


───目があった。


瞬間、エリシアは一目散に逃げ出した。

走って、走って、転びかけて、

体を立て直しながら走る。


後ろを振り返る余裕などなく、振り返りでもしたら自分の命が消える予感がした。


左右の景色が通り去る中、

後ろから聞こえる獣のような唸り声は、段々と声量を増していく。


その音は段々と大きくなっていき、

ついに耳元に吐息がかかり ───


急激に離れていった。


怪物は足を止めていた。

怪物の縄張りから外れたからだった。

怪物が止まったことに気付かず、エリシアはただただ走っていった。

まるで、この世界から逃げ出すように。



「……はぁ。また、か」

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