白の世界 〜変人たちの鎮魂歌《ウィアドーレクイエム》〜

桐沢もい

REQUIEM 0

第0話 はじまり

「変人は、ひとところに集めてしまえぃ!」


 腰のあたりまで白髪を伸ばした男が言った。白髪はまさに純白。夜中にひとしきり降った雪が、明け方の静かな山肌にみせるような、まぶしいばかりの白だ。

 大きな円卓を白髪の男たちが囲むように座っているが、まったき白はその男のみだった。他の男たちは、まだ黒いところが部分的に残っている。


「お、お言葉ですが、ゴッド様。それは、あまりにも下界に介入しすぎではありませぬか……」


 ゴッドのちょうど向かいに座る男が言った。しかし、ゴッドは自らの右耳をほじった後、その指をふぅとひと吹きし、首をこきこきと鳴らすのみだった。

 しばらくしてやっと、ゴッドは先ほど発言した男の方に視線を向ける。


「お前、帰ってよいぞ。そして、明日からは来なくてよい」


 場に緊張が走った。円卓を囲む男たちが、ゴッドの発言の意味を理解し、おののいた。


「そ、そんな……。では、私は明日からどうすれば良いのです!」

「そんなの知ったことではない……」


 ゴッドが冷徹に切って捨てる。そして、男が二の句を継げずにいることを確認したのち、声量を上げて続けた。


「ハローワークにでも行けぃ!」


 帰るよう言われた男は、肩を落とし、寂しそうな背中を見せて、会議室をあとにした。

 ゴッド以外の男たちは、緊張の面持ちで口を引き結び、何も発言しなかった。重苦しい空気が滞留する会議室で、ほとんどゴッドの独壇場ともいえる会議が、粛々と進められた――――

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