最終話 物語は続いていく

その後、俺はリハビリを頑張り、

退院時には杖と装具付きながら

どうにか歩く事が出来るようになった。


感覚麻痺だかロボットアームは大分回復した。

表層部分の感覚は少しだけ回復したものの

厄介な痺れも発生したので一長一短だ。


残念ながらアパートは引き払って

自宅に戻る事になってしまったけど、

念願だった車の運転は

無事再開する事が出来た。


仕事も障害者枠ながらも新しい会社に

入ることが出来て順調に働いている。


まだまだ俺の物語は進んでいくんだ。


時々、週刊誌とかで作者が

ちゃんと物語を完結させたのに、

編集部の意向か大人の都合でその続きを

無理矢理描かされてるのを見る事がある。


今の俺もそれと同じなのかもしれない。


無理矢理最終回の続きを描かせてるから

最初はグダグダな展開だったり色々と

作者の苦労が見える事もあるけれど、

それでも頑張った末に更に面白い最終回を

描く事がある事も知っている。


だから、俺も同じようにより良い人生、

より良い最終回を迎えられるよう頑張ろう。


生き残ったからには何かを残したいし

大好きな創作活動を続けていきたい。


元からやっていた絵や音楽、

動画を作るのは身体、環境的に

難しくなってしまったけど、

これを機に小説を書いてみるのも悪くない。

文章下手だし少し恥ずかしいけど。

小説なら左手だけでも何も支障は無い。


そして、生からの解放から戻されて

また死の恐怖に怯える事になったけど、

”あの時、死ななくて良かった”と

思えるように生きていこうと心から思う。


それに、俺には密かな楽しみがある。

これは転職したての頃の話だけど、

通勤中の信号待ちでクレープ片手に歩いている

アヤナにそっくりな女子高生を見かけたんだ。


本当に驚いて、ずっと見ていたから

その視線に気づいて彼女もこちらを見返したけど、

彼女、俺と同じくらいびっくりしてた気がする。


信号が青になったからそのまま走ってしまい

彼女とはそれっきりだけど、もしかしたら

また彼女に会えるかもしれない。


そんな予感がするんだ。


俺はまたアヤナに会える日を楽しみにしながら

しっかりと最後まで生きていきたい。





…カタカタ、カタ。ターン!


そう思いながら、

自分はエンターキーを力強く叩いた。



 ―――― 終 ――――

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