第七話 たわいのない話

そしてその翌日の夜である。


「あ、来た来た。お兄さーん!」

少女は笑顔で手を振っている。


マジかよオイ。

こいつ本当に来ちゃったぞ。


「今日こそおしゃべりしてもらうからね!」

「……あんたは何だ?」

俺は観念して少女に話しかける。


「ん?私?アヤナだよ」

「うんうん名前はアヤナさんねわかった。

 で、あんたは何なんだ?幽霊か?」


「知らない」

即答されても困る。


「知らないって…」

「だって本当にわからないもん」


少女は困ったような表情を見せた。

本当なのだろうか。


「そもそも来た来たって言ってたけど

 あんたの方がここに来たんじゃ無いのか?」

「ううん。お兄さんが現れるんだよ?」

「…」


どういう事だ?

俺がウトウトした時だけ会える感じなのか?


「それより名前っ!」

「ん?」

「お兄さんの名前も教えるのが礼儀でしょ!?」

「あーはいはい。俺は和一だよ」

「カズさんね。わかった。

 でね?お兄さんは…」

「名前教えたのにスルーかよ!」


「お兄さんはお兄さんだからいいのっ」

結託の無い笑顔を見せる。


「…」

なんだろう。舐められてる気がする。


「お腹すいたー。ここ何か無いの?」

「見てわかるだろうある訳ないだろ」

「私クレープ食べたい」

「余計にある訳ないだろ!」

「クレープ大好きだけど最近全然食べてないんだ」

「俺はワッフルコーンのアイスが好きだがなー」

「お兄さんはクレープの良さわかってない!」

「ほう。」

「元々クレープはガレットというそば粉で作られ…」


こんな感じで、俺が本格的に眠ってしまうまでの

少しの間、少女とたわいのない話をする。


そして、俺は少しずつこの時間が

1日の楽しみになっていった。


少女と話してると嫌な妄想に

襲われる事が 無いのもあるが、

それよりも誰かと気楽に話せるのが

純粋に嬉しかったのである。

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