第五話 夢と現実の境目

あれから数日が経過した。


淡々と日は過ぎていき

懸念されていた脳のむくみも

問題無さそうなので一般病棟に

移動出来る状態になった。


しかし肝心の一般病棟の

空きが無いという事で

俺はICUの奥にある個室で

数日空きを待つ事になる。


この白い個室は綺麗で中々に広く、

更にテレビまで設置してくれた。


また、家族からノートと筆記用具も

持ってきてもらったので

暇な時間に左手で絵を描く

リハビリも始めた。


左手だとロクに描けないけれど

やはり創作は楽しい。


数日前と比べたら遥かに

環境は良くなったと思えた。



しかし一つ問題があった。

例の“深夜バトル“である。


状態が安定したので看護士の

見回りも減りおまけに場所は奥だ。

人気が更に無くなってしまった。


その結果、減りつつあった

深夜バトルの回数は

明らかに増えてしまう、


唯一の救いはテレビの存在だ。

もしテレビが無かったら本当に

頭がどうなっていたかもしれない。


夜中が更に怖くなってしまった。


………


とある日、晩御飯を食べてウトウトしていたら

テレビで特番、夏の怪談スペシャルが

始まってしまった。最悪である。


電源を消す、もしくはチャンネルを変えれば

即解決なのだが半覚醒状態なので

リモコンに手が伸ばせない。


頭の中に様々な妄想が浮かんでくる。

夢と現実の境目はとっくになくなっている。


やばい。やばい。やばい。


俺は倒れる前から睡眠障害を持っているので、

悪夢を見る事は良くあるが、このタイミングで

深夜バトルされるのはたまったもんじゃない。


訳のわからない状態に陥りそうになった時、

全てを消し去ってしまうような

信じられない事が起こった。


TVから流れる音とは明らかに違う

声が聞こえてきたのである。



「この声、聞こえる?」

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