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職員玄関横に車をつけると、真っ黒に日焼けした青年が、仔リスよろしく転がりでてきた。
「朧月さんっ」
(真っ黒なのは彼が警察官でありながらウィンドサーファーでもあるからだ。
逗子の海で育ってきた彼は、ユースオリンピックにまで出場しておきながら警察官を志し、逗子市長と彼の出身高校、いまここに佇む神奈川県立新逗子高校をガッカリさせたのだった)
「霖、」
「ごめんなさい、朧月さん。お休みのところを…」
「構わないよ? で、」
オロオロする様子を隠しもしない後輩くんを宥めるロウを横目に、オレも博士くんを促して車を降りた。
「生物実験室で倒れていたのは二年三組の雪くん、十六歳、男の子です。左手首を実験用のカミソリで…」
事務室で手続きをし応接室に向かいながら、霖青年がメモ帳を手に必死な様子で説明していくのを、ロウは「うん、うん、」て、慈しみの眼差しで聴いている。さっきまでの、温度のない目が嘘みたいだ。
どれだけ後輩大好きなんだろう。
もちろん、ロウに後輩は毎年のようにやってくる。
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