第289話 まだ慌てるような時間じゃない
「そうね、実はまずローレンス様に謝罪しなければならない事があるの……」
「しゃ、謝罪……とは?」
おそらくこれ以上先を聞くのは止めておいた良いだろうとは思うものの、それとは別にもう既に取り返しのつかない事であるからこその謝罪であるとも思うので、ここで聞かないのは問題を先送りにするだけで結果さらにヤバい事になりかねないと判断した俺は、意を決してフェミルへ謝罪の内容を確認する。
「それがだな、実はローレンス様がミゼルに模擬戦で勝利した瞬間に帝国へ使者を向かわせていたの……」
そしてフェミルは俺とミゼルの模擬戦の後に帝国へ使者を送ったと言うではないか。
何してくれるんだよっ!! と叫びたいのを何とか抑えて、深呼吸をして心を落ち着かせる。
大丈夫だ。〇南の某エースもきっと『まだ慌てるような時間じゃない』と言ってくれるに違いないはずだ。
まだそうだと、俺の想像しているような内容を帝国へ伝えに行っていると決まった訳ではない。
今はまだシュレディンガーの猫状態でしかないのだ。
言い換えればどちらにも可能性はあるという事である。
「その理由を聞いても……?」
「えぇ。それが謝罪の理由だもの……。でも私の話を聞いて嫌わないで欲しいのだけれど……?」
「……………もちろんだよ(もちろん俺がどんな反応をするのかは内容によるだろう)」
「よ、良かったわ……。嫌われたらどうしようと思っていたのよ、実はっ!! そして使者へ帝国に伝えるように言った内容なのだけれど『エルフの国であるグリーンウッド王国は正式にエルフの国王女という立場である私と、そしてローレンス様と正式に婚約した』という事を伝えるように、そしてその情報が正しい事を証明する私の父であり国王でもあるグリューン王のサインと玉璽の判を押した書類を持たせて向かわせたの……っ!!」
「………………………あ、はい」
これはもう俺とフェミルとの婚約は決定事項であり、そして同時に俺とフェミルの婚約破棄は国家間の問題になり得るので不可能に近いという事である……。
「それと、もう一つローレンス様に伝えなければならない事があるわっ」
「あ、はい」
しかもどうやらまだ俺に伝えなければならない事があるらしいのだが、正直言って『もう好きなようにしてくれ』という状態であり、反論する気力は既に無くなっている。
「私と婚約するにあたって私はとある領地を与えられる事になったのだけれど、この領地を、ローレンス様を領主にするように話が進んでいるわっ」
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