第27話 任意成年後見人契約
任意成年後見人契約をしている。両親と妹の相続手続きで良くしてもらった行政書士と契約している。この行政書士は成年後見人の実績も多く持っている。
何故任意成年後見人契約をしたか。
私が組織で働いていた頃の年長の職員のことで驚いたことがあったからだ。
この人はいい人だった。親切で、気配りができて行動力があった。
この人は定年になったら奥さんと二人で介護の仕事をするんだと言っていた。二人で勉強して資格も取ったと言っていた。着々と準備を進めていたという。
定年退職の日を迎えた。その人は慕われていたから送別会が催され、多くの人が参加したという。会は盛り上がり本人もとても嬉しそうだったという。
送別会の翌日。奥さんが起こしに行った。ぐっすり眠っているように見えた。声をかけたが反応が無い。身体を揺すっても目を開かない。大きな声で呼びかけ強く揺すっても何の反応も無い。
救急車で病院に運ばれた。脳幹出血で意識が戻る可能性はほぼないだろうと医者は言ったそうだ。
自発呼吸はあるけれど、当然食事は摂れない。
生きている。こうなるといろんな契約関係の変更、解約が大変だ。本人じゃないとできないと言われる。代理人だって本人が委任しなきゃいけないから代理人も立てられない。保険の請求だってままならない。
夫のことで強いショックを受けている奥さんにこのことが追い討ちをかけた。途方に暮れるばかりだったという。
僕は尊厳死宣言公正証書は作ってある。死を迎える時の措置だ。でもそれだけじゃ足りない。死んではいないが自分の意志では何もできないという状態も十分にあり得るのだ。
だから任意成年後見人契約をした。
そして日々身の回りの整理をしている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます