第28話
あれ‥‥俺何やってたんだろう。
確かカエさんと‥‥。
あぁ、果てた後そのまま爆睡してたのか。
なんでこんなに頭が痛いんだ、いて‥‥。
って、ここカエさんの部屋だっけ?
あぁもう少し寝てよう‥‥。
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数時間後。
うぅ〜ん!よく寝たー!
伸びをしながら周りを見渡すとそこは自分の部屋だった。
いつの間に帰ったんだろぅ。
ふぁ〜。やけにあくびが出るし体がだるい。
久しぶりの行為に加えてカエさんの初めてをエスコートするのにすごく疲れたのかな。
‥‥ってあれ?待てよ、俺の部屋ってアパートはもうなかったはずじゃ‥‥‥‥!!
俺は急いで外に出てみる。
なんで‥‥なんでだよ‥‥。
そこは地下だった。
なんで戻ってんだよ!!地上にいたんじゃなかったのかよ!!
一人で叫ぶ俺。
と同時に膝から崩れ落ちる。
涙こそ出ないが泣きたかった。
どうゆう事だよ‥‥。
俺は帰ったつもりなんかないぞ。
急に夢から現実に戻された気分だった。
しかしこの感じこそまさに正しかった。
そうだ、秘密基地だ!
俺はそのまま秘密基地に急いだ。
が、あったはずの穴がない、探せど探せど見つからない。
絶望的だ。
そうだ!トンさん!他の場所にまだ秘密基地があるかもしれない!
そう思った俺は急いで現場に向かう。
しかしトンさんの姿が見当たらない。
「トンさんって今日休みですか?」
他の作業員に聞くと、どうやらトンさんは昨日で仕事をやめたというのだ。
なんで急にやめるんだ?と不審に思いながらもトンさんの家に向かう。
「トンさん!」
俺がトンさんの家に着いた時トンさんは大きな荷物を持ってどこかに行こうとしていた。
「おー、アニじゃねぇか!どうしたんだ?」
「トンさんどこか行くんですか?」
「お?おぅ、少し旅行にな」
「旅行?仕事まで辞めて旅行ですか?」
「お、おぅ、たまにはな!別に俺が何しようがいいじゃねぇかよ!」
トンさんがやけに挙動不審で俺は嫌な予感がした。
「トンさん、何か知ってますね」
「何の事だ?俺は何も知っちゃいねーよ!」
「ムキになるとこ、余計に怪しいですよ」
「ムキになんかなってねーよ!いい加減な事言うんじゃねぇ!」
「ちょっと待って下さいよ!」
トンさんが逃げようとするので、俺はトンさんが持っていた荷物を掴んで離さなかった。
「何してんだよ!離しやがれ!」
「どう考えてもトンさんの行動がおかしいんですって!」
俺たちが引っ張り合っているとカバンがパーンと開き中身が舞った。
「‥‥トンさん、なんですかこの大金は」
「勘弁してくれよ‥‥」
「説明してくれるまでどこにも行かせませんからね」
「頼む、何も聞かないでくれ‥‥」
「無理です。逃げようとした時点で俺に何か隠してる事は確実なんですから」
「はぁ‥‥」
トンさんは深いため息をついてその場に座り込んだ。
俺は仁王立ちで話し始めるのを待っていた。
「分かったよ。分かったから、正直に話すから、座れよ」
俺は苛立ちを露わにしながらトンさんの横に座った。
「包み隠さず話して下さいよ」
「分かってるって。で、何が知りたいんだ」
「全部ですよ。トンさんが知ってる事全部」
「事の発端はギョプだよ。あいつに持ちかけられた儲け話だった」
「ギョプ?儲け話?」
もうすでに意味が分からない。
「お前と俺が地上行ってただろ?あれは全部架空の世界なんだよ」
「は?」
俺は耳を疑った。
「だから!俺たちはただ地上世界を疑似体験してただけなんだよ」
「ちょっと何言ってるか分からない」
「信じられねぇだろうけどそもそも地上なんてねぇんだよ。行けるわけねぇんだよ」
「夢でも見てたって事ですか?」
「まぁそうなるわな」
夢のような世界‥‥。
確かそう言われた気がする。
「えっ待って下さい、じゃあ儲け話って何ですか?」
「ギョプにいい儲け話があるって言われてよ、その内容は誰か試験的に体験できる人がいねぇか紹介してくれって話だった」
「えっ‥‥でもそれならトンさんが行けばよかったんじゃないんですか?」
「それには条件があってよ。それが、未婚者、モテないが頭がいい人なんだよ。もうお前しかいねぇじゃん?」
確かに条件には当てはまる。
「それで?俺を騙してたんですね」
「まぁ結果的には?」
「ちょっと情報が多すぎて整理しきれないんですけど、ギョプは奥さんいましたよね?あれも嘘ですか?」
「あぁ。ちなみに浮気で捕まったとかも全部嘘。地上では浮気するとこうなるってお前に思い込ませる為に仕組んだ」
「どこまでクズなんですか」
「どうせ俺はクズだよ」
「開き直らないで下さい」
クズな上にふてぶてしい。
それ意外にも、トンさんが自由に行き来していたのは紹介人の特権らしく自己責任だが行ったり来たり出来たらしい。
報酬もかなりの額だったらしく、俺が地上で未経験の女性を経験済みにすればボーナス、結婚すればボーナス、子供が出来ればボーナスとか。
全部トンさんやギョプの演技だったと思うと、悲しいやら腹立たしいやら、色んな感情が湧き上がってくる。
何より一番ショックだったのが、カエさんは存在していないと言う事だった。
地上という世界がない、カエさんは本当は存在しない。絶望的だった。
トンさんは一生遊んで暮らせるだけのお金を貰ったらしく、もう仕事には戻らないらしい。
本当は殴ってやりたいぐらいだった、でもそのくらいじゃあ甘ったるい。
こうしてる時間もトンさんといると思うと吐き気がしてきそうだった俺は家に帰る事にした。
「もう会う事はないです」
そう告げた。
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