第26話
あれから結構歩いた。
体感で3時間は歩いている気分だ。
そう思っているといきなり出口に出た。
わぁ!
ふわぁ〜っと風が俺を包み込み目の前に眩しい光が差し込む。
地上だ。本当に来れた。夢じゃないよな。
俺はほわほわした感覚に襲われた。
このままここで昼寝がしたい気分だ。
って、呑気な事考えてる場合じゃない、カエさんに会わないと!
俺はとにかくカエさんを探す事に。
しかし俺はうっかりしていた。
カエさんの家を知らない。
そうだ、いつも俺がスイッチで呼ぶばかりでこっちが行く事なんてなかった。
今更後悔していた。
一先ずアパートに行ってみよう、もしかしたらスイッチがあるかもしれない。
俺はアパートに向かう。
しかしアパートがあった場所はなんと空き地になっていた。
どうゆう事だ?それならと思い現場に向かうも、そこには違う建物が立っていた。
なんで違うんだ?俺は頭が混乱していた。
そうか、試験が終わってるから、もう地下と地上はリンクしてないのか。
でも今の俺の目的はただ一つ、カエさんに会う事。地下に戻るつもりもない俺はひたすら街中を探していた。
そしてある事を思い出した。
そういえばカエさん洋菓子店で働いてるって言ってたな。
俺は洋菓子店だけをしらみ潰しに行ってみる事に。
数軒目を回った時。
「いらっしゃいま‥‥アニさん?」
「カ、カエさん!」
カエさんが目の前に飛び込んできた時俺は嬉しさのあまりカウンターの向こう側にズケズケと入っていき力強く抱きしめた。
「アニ‥‥さん?どうしたの?」
「カエさん‥‥会いたかった。もう会えないかと思った」
「ついこの前会ったばかりだよ?今日のアニさんなんか変」
そうか、カエさんは俺が地下に戻った事など知る由もないのか。
「ごめん、つい取り乱してしまった」
「ふふっ。おかしいのはいつもの事だよね?」
そんなに久しぶりってわけでもないのにカエさんの笑顔が俺の心に染み渡っていくのを感じていた。
「そうだ、仕事何時まで?」
「もう終わるけど?」
「待っててもいい?」
「もちろん!すぐ着替えて来るね!」
俺はカエさんが出てくるまで店の外で待っていた。
10分ほどするとカエさんが出てきた。
「お待たせ!アニさんから会いに来てくれるなんて嬉しいな!でも店教えてなかったよね?」
「う、うん。たまたま通りかかったらカエさんが見えたから」
ここはとりあえずそう言っておこう。
「へぇ〜」
何やら悪い顔をしてこちらをじーっと見てくるカエさん。
「ほ、本当だよ?」
「まぁ、いいんだけどね!そうだ、今日は私の家来る?」
「そうだね、おじゃましようかな」
今の俺は家がない。
カエさんに説明しないとな。
カエさんが横にいる。
夢じゃないよな、カエさんには見えない方のほっぺをつねる。
痛い、夢じゃない、本当に地上に、カエさんに会ってるんだ。
「アニさん何ニヤニヤしてるの?」
「なんでもないよ!」
店からカエさんの住むアパートまではそれほど遠くなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます