第24話
んゔぅ、頭痛い‥‥。
って、ここは‥‥。
目が覚めるとそこは俺の部屋だった。
しかし、違和感と同時に懐かしさもある。
‥‥ここは地下の部屋だ。
そう、地下に戻っていたのだ。
なんで‥‥どうして‥‥。
突然の事に俺は頭が真っ白になった。
シンさんから試験が終わると聞いてから急に意識が遠のいた。
もしかして結構な時間意識を失っていたのではないかと少し不安になりつつも、しばらく放心状態が続いていた。
まずは状況を把握しないと。
そう思いトンさんに会いに行く事にした。
俺が戻って来てるって事はトンさんも戻っているはずだ。
アパートを出ると、見慣れた景色が広がっていた。
それほど長く地上にいたわけでもないのに凄く久しぶりに感じた。
現場に着くとトンさんは何事もなかったかのように作業をしている。
「トンさん」
「おー、アニー」
「何呑気に仕事してるんですか」
「仕事はしねぇとな」
「てかトンさん‥‥鏡見ました?」
「あー、見なくても体が重くて重くて」
トンさんは以前のような姿に戻っていた。
「トンさん、なんでそんなに冷静なんですか」
「まあ最初からこの暮らしだし、いい経験したと思えばいいんじゃねぇか?」
「俺はそう簡単に割り切れないですよ‥‥」
そう、俺にはカエさんがいる。
気が気ではない。放っておけない。
何故ならカエさんはまだスイッチを持っているから。これからどんな事が待っているのか不安で仕方なかった。
もし写真が更新されたら?あんなに綺麗な人みんなが放っておくはずがない。
いろんな考えが頭を巡っていた。
こんな所でトンさんと話をしている場合ではない、地上に行かないと!
「アニは地上楽しめたか?」
「トンさん、俺帰ります」
「おい、今来たばっかじゃねぇかよ」
「こんな所で油売ってる場合じゃないんですよ」
俺はトンさんにそう言うとアパートに戻り、急いでネット検索をかける。
しかし、地女に関するサイトが見つからない。
どうしよう‥‥他に行く方法はない。
俺は途方に暮れていた。
そして一旦冷静になると、俺は思った。
もしかして夢を見ていただけなのか?
長い夢?
いや、でもトンさんもいたし、さっきいい経験をしたって言ってたから夢はないな。
でもこうしてる今も夢を見ていたとしたら?だんだんこれが夢なのか現実なのかが分からなくなっていた。
しかし夢だと解釈すれば今までの出来事もあり得なくはない。
本当に夢だったのか?
こんな非現実的な事起こり得る事自体あり得ない。
しかし、カエさんの温もりや唇の感覚は鮮明に覚えている。もちろんあの笑顔も。
俺はもう一度カエさんに会って確かめるまで絶対諦めないと心に誓った。
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